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(情報掲載日:2013年8月20日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

いま注目されるギャップイヤーの可能性と課題

VOL.20


ギャップイヤーとは、大学卒業までの間に休学期間を設け、社会体験や留学をするイギリス発祥の制度です。若者の人間形成上、有益な方法であるとして、世界的に注目を集めています。わが国におけるギャップイヤーの動向について、ご紹介します。

ギャップイヤーが世界中で注目される理由とは

●大学卒業までの間に「ギャップ」を設けて人生修行する

日本では大学に進学したら4年間で卒業し、「新卒一括採用」の仕組みに乗って4月に企業に入社するケースが一般的ですが、欧米では必ずしもそうではありません。高校までの学校教育では教わらなかったことを主体的・体験的に学ぶため、大学卒業までの間に休学期間を設け、語学留学をしたり、親元を離れた場所で就労体験やボランティア活動に取り組む人もいます。
これはギャップイヤーと呼ばれるもので、日本語に訳すとしたら、人生の「寄り道」あるいは「すき間の日々」と言うことができるでしょう。イギリスで1960年代から盛んになった慣習で、貴族階級の子女の世界旅行が起源だという説もあります。敷かれたレールをいったん外れて、「非日常」の人生修行をすることで豊かな人間形成につなげていこうとする考え方といえるでしょう。

●欧米の企業はギャップイヤー経験を高く評価する

欧米の企業では、ギャップイヤーを経験した若者を高く評価する傾向があるようです。その理由としては、学業以外のボランティア活動や、海外での異文化体験を積むことにより、幅広い視野が培われ、自立性や協調性が高まるということのようです。
日本経済団体連合会の調査(※1)によると、イギリスでは下表のように企業がギャップイヤーの体験者を高く評価しています。また、学生へ情報提供や受け入れ先への仲介などを行うNGOがあり、学生が不安なくギャップイヤーを選択できる環境が整っているそうです。

イギリスにおけるギャップイヤーの評価と支援の実態

企業の評価は高い
企業の採用面接において、ギャップイヤーを体験した学生は、していない学生よりも、一般的に幅広い視野を持ち、自立し、協調性もあるとして学位と並んで重要な評価対象となっている

NGO等がギャップイヤーを支援
安心できる受入れ機関やしっかりとした計画(Structured gap year)が必要であり、イギリスでは"Lattitude Global Volunteering"などのNGO が世界各地の受入れ団体や両親と協力し、学生の自主性を尊重しつつ彼らが有意義な体験が出来るよう支援している

国家的な表彰制度がある
「エジンバラ公賞」など、ギャップイヤー体験を評価し、社会的認知を与える表彰制度もある

日本経済団体連合会「世界を舞台に活躍できる人づくりのために−グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言−」2013年6月13日発表

このほか、「ギャップイヤーの体験者は、コミュニケーション能力が高い」という評価もあるようです。ギャップイヤー経験者は、一般的な大学生と比較すると、自分とは異なる価値観をもつ人や、異文化の背景をもつ人との出会いや交流をもつケースが多いため、そのような評価をされるようです。

※1 日本経済団体連合会「世界を舞台に活躍できる人づくりのために−グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言−」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/059_honbun.pdf

日本でもギャップイヤーに注目が集まる

●東大では特別休学制度を導入

日本でもギャップイヤーを取りやすくする制度を設ける大学が増えてきたことにより、ギャップイヤーの認知度が高まってきています。
東大では、2013年4月から欧米のギャップイヤーをモデルにして、新入生が1年間、留学やボランティアなどの体験活動に取り組むことのできる特別休学制度「FLYプログラム」が開始されました。
この東大版ギャップイヤーにおいて、学生が行うことが想定されている活動としては、@ボランティア活動、A国際交流活動(留学、国際NPO等への参加)、Bインターンシップ(企業、官公庁、自治体、NPO等)、C農林水産業、自然体験、地域体験活動等があります。
24人が応募し、面接や計画書の審査などを経て、最終的に11人の学生が参加することになったそうです。目的意識の明確な計画が多く、「復学後、他の学生にも刺激を与えてくれるのではないか」と期待されています。
また東大では将来、大学の入学時期を遅らせて全面的に秋入学にする計画を進めており、秋入学に伴い発生する高校卒業から入学までの半年の空白期間の使い方の1つとして「ギャップイヤー」を提唱し、その活動の成果や課題の検証につなげたい考えがあるようです。

●グローバル人材育成に向けて経団連がギャップイヤーを推奨

こうした大学側の動きに先んじて、経団連では早くからグローバル人材の育成とギャップイヤーを結びつけ、「日本型ギャップイヤー」の導入を模索していました。
2011年6月に発表した「グローバル人材の育成に向けた提言」(※2)の中でギャップイヤーを紹介し、「わが国でも、学生が国内外で本格的にボランティア活動等に従事できるよう、"Gap Year"を導入することも検討に値する」と明言しています。
そこで、企業側への要望としては、「そうした学生の多彩な経験を採用活動において積極的に評価する姿勢が求められる」としています。他方、大学側に対しては「ボランティア活動に対し単位を付与するなど、様々な配慮をすることが期待される」と述べています。
さらに2013年6月には「世界を舞台に活躍できる人づくりのために−グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言−」 (※1)を発表し、その中で「ギャップイヤーを利用した多様な体験活動(ボランティア、留学、インターンシップ等)も、グローバル人材に求められる素養を育む上で効果的であり、産業界としては、採用時に、これらの多様な体験を積極的に評価することが求められる」としています。

●文科省は大学生の体験活動の表彰制度を創設

大学、産業界に加え、官公庁でも動きが見られます。文部科学省が2013年から首都圏の大学生を対象に始めた試行事業「青少年体験活動奨励制度チャレンジアワード」(※3)は、前述の「エジンバラ公賞 The Duke of Edinburgh's Award(DofE)」をモデルとした表彰制度です。
表彰制度のしくみは、@自然体験活動、A運動・スポーツ、Bボランティア活動、C科学・文化・芸術活動の4つの分野の体験活動にチャレンジした実績に応じて、その達成を表彰するというものです。参加者はアドバイザーと相談し、自分に適した目標設定を行います。4つの分野をすべてクリアしなければなりません。自然体験活動は1泊2日以上行います。運動・スポーツ、ボランティア活動、科学・文化・芸術活動は、週1時間以上を6カ月(24週)以上継続して行います。体験活動の達成が評価され、目標達成が認められると実績に応じて表彰されます。
現段階ではこのアワードを取得するメリットについて、文科省は「海外留学や就職活動の際に活用できます」と説明しています。

●経産省は新興国でのインターンシップ制度を開始

一方、経済産業省はグローバル人材育成を目的として、大学生・大学院生や若手社会人を新興国に派遣し、NGOや現地企業で半年間インターンシップとして勤務させる制度を2012年から始めています。渡航費・宿泊費・日当が支給されるので、学生にとってはお金の心配がなく海外でギャップイヤーを経験できるチャンスとなっています。
経産省の報告書を見ると、ギャップイヤーを経験した大学生・大学院生は、「以前よりも自信をもって積極的に就職活動に励むことができるようになった」等、ギャップイヤーでの体験を通じて働くことについての自信を持てるようになり、将来の働き方についての明確な目的意識を形成するなどのメリットをそれぞれに語っています。
中でも注目されるのは、「将来仕事で海外に駐在することや、海外出張へ赴くことへの苦手意識が無くなった」といった声です。
多くの企業ではいま、グローバル人材の養成に取り組んでいますが、海外留学などの海外経験を持つ大学生が少なくなっているため、語学力、異文化コミュニケーション能力、異文化とのギャップに対するストレス耐性、主体的な行動力、キャリア意識等々の側面から見て、適切な人材が足りないという悩みがあるようです。
その点、ギャップイヤーを利用して海外体験を積んだ学生は、語学力はもちろん、行動力や意識の面でもグローバル人材としてふさわしい人材に成長していることが伺えます。この報告書には、受け入れ側企業のコメントも掲載されていますが、インターンシップ生に対する高い評価が寄せられています。

「METIグローバル人材育成インターンシップ派遣事業」の経験者が語るメリット(※4)
「METIグローバル人材育成インターンシップ派遣事業」の経験者が語るメリット(※4)

※2 日本経済団体連合会「グローバル人材の育成に向けた提言」
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/062/honbun.pdf

※3 文部科学省「青少年体験活動奨励制度チャレンジアワード」
http://www.challengeaward.jp/index.html

※4 経済産業省「平成24年度 インフラビジネス等展開支援人材育成事業METIグローバル人材育成インターンシップ派遣事業 長期派遣プログラムインターン生 成果事例報告」
http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130415003/20130415003-3.PDF

ギャップイヤー経験者を活用するために

●企業側の意識や採用体制を変えることが必要

注目されているギャップイヤー。ギャップイヤー経験者が、その経験を最大限に活かし、企業で活躍するためには、まず、企業がギャップイヤーに対して、一概にマイナスの評価をしないことが大切です。日本では人材を採用する際、学歴・職歴上での空白期間がある人材に対し、マイナスの印象を抱くことがあります。しかし、その空白期間にこそ、コミュニケーション能力等の能力を高めることにつながった貴重な体験があるかもしれないのです。
その空白期間をどのように過ごしたか、そして、何を得たのかといった聞き取りを面接の場などで行うことが、結果として企業が求める人材の獲得への近道になるかもしれません。
また、日本では新卒採用が一時期に集中して行われます。ギャップイヤーを経験しようとする学生が、就職活動時期を見込んだ計画を立てることももちろん不可能ではないでしょうが、新卒採用時期というものが計画に影響する可能性はあります。現在の春季一括採用のスケジュールに加え、夏季・秋季採用を追加して対応することも、優秀な人材獲得の可能性を広げることにつながるかもしれません。
そのほか、ギャップイヤー経験者を採用するという方法だけではなく、既存の社員にギャップイヤーを経験させる、という方法もあるでしょう。社員が一定期間仕事を休業し、その間に普段の生活ではできない体験をすることによって知見を広げ、その体験を通じて得た知識や能力を活かすことで結果的に仕事への還元が期待できます。休業取得者の穴埋めや人員調整、評価制度など、検討事項は多々ありますが、長い目で見れば、従業員満足度の向上や、企業の成長につながるかもしれません。

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