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(情報掲載日:2013年7月22日)

どうする?どうなる!「ニッポンの人材」

「3年育休」で女性の継続就労はどう変わるのか?

VOL.19


「経済再生に向けた成長戦略の中核は、女性の活躍である」。政府は、女性が職業的キャリアを中断させることなく、子育てと仕事を両立しやすい環境づくりに力を入れると強調し、現在は子どもが1歳半になるまで取得が可能な育児休業を3歳までに延長するように産業界に向けて提唱しました。少子高齢化に伴う労働力人口の減少に歯止めをかけることがその目的です。「育休3年」に踏み切った先進企業の事例を交えつつ、女性の継続就労に関する動向についてご紹介します。

「育休3年」構想の背景をさぐる

●労働力人口の減少に歯止めをかけるには女性の就労率アップが必要

「3年間抱っこし放題」という表現で、政府は経済界に3年間の育児休業制度の推進を求めました。いわゆるアベノミクスの「3本目の矢」として掲げる新たな成長戦略の中で、「女性が働きやすい環境を整え、社会に活力を取り戻す」と明言していますが、その具体的な支援策として「育休3年」という数値目標を設定しています。
現行の育児・介護休業法では、働く人が申し出れば最長で子どもが1歳半になるまで育児休業を取ることができます。この育児休業を3歳まで延ばそうというものです。
背景には、少子高齢化に伴う労働力人口の減少があります。減少に歯止めをかけるために、家庭にいる女性の労働参加が強く求められています。労働力人口とは15歳以上の人口のうち就業者と失業者の合計を指すもので、専業主婦は労働力人口の中に含まれません。では、労働力人口は今後、どの程度の減少が心配されているのでしょうか。

独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の推計(※1)によると、2030年の労働力人口は、今後、ゼロ成長に近い経済成長が続くとすれば、2010年の労働力人口6,632万人と比較して954万人減少すると見込まれます。
約1,000万人もの減少は、大きな打撃です。労働力人口は日本の経済力の基盤をなすものですから、これほど労働力人口が激減すれば、国際競争力の低下は避けられないでしょう。
同機構は、このような「ゼロ成長Aシナリオ」のほかに、年率でGDP実質1%程度の経済成長で若者、女性、高齢者などの労働市場への参加が「一定程度進む」ことを想定した「慎重Bシナリオ」と、年率2%程度の経済成長で若者、女性、高齢者などの労働市場への参加が「進む」ことを想定した「成長戦略Cシナリオ」も描いています。
もしも「成長戦略Cシナリオ」のとおりになれば、日本は2010年の労働力率(*)を2030年まで維持することができると見込まれます。
(*)労働力率とは、15歳以上の人口(生産人口)に占める労働力人口の比率をあらわす数値です。

労働力需給の推計

●日本女性の労働力率は先進諸国に比べて低い

総務省統計局「労働力調査」によると、女性の労働力人口は平成24年の平均で2,766万人(男性3,789万人)、労働力率は48.5%(男性70.8%)となっています。
この48.2%という数字は先進諸国と比べると低く、50%を超えることが日本では女性就労支援施策のひとつの目標となっています。ちなみに先進諸国の中でとくに女性労働力率が高いのはスウェーデンで、2010年の数値で67.3%となっています。

独立行政法人労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2012」

●欧米では育休3年は珍しくないが日本は最長1年半

労働力率の高い欧米諸国ではどのような育児休暇制度があるのでしょうか。下表は、日本および欧米諸国の育児休業・休暇またはそれに相当する制度と概要を表にまとめたものです。
休業期間については、ドイツやフランスでは、子どもが3歳に達するまでの間に最長3年間の休業が可能です。スウェーデンでは、両親合わせて最長480日の休業が可能です。一方、アメリカは日本よりも期間が短く、子どもが1歳に達するまでの12週間を上限に育児休業に使えます。ただし、育児休業単独の制度ではなく、家族休暇の一部であり、本人が療養で休んだ場合も含めて最長12週間と定められています。
休暇の取り方については、スウェーデンでは「パパクオータ」または「ママクオータ」といって、休業可能な480日のうち、父親・母親しか休業できない日数をそれぞれ60日ずつ設けることにより、父母双方の育児参加を促しています。
日本でもスウェーデン方式にならい、平成21年の育児・介護休業法改正で「パパママ育休プラス」という制度を新設しました。父親が育児参加すれば、従来よりも育児休業期間を2カ月延長可能できる仕組みで、両親が同時に取得してもいいし、片方ずつ取得することもできます。ただし、父母1人ずつが取得できる休業期間の上限は原則として1年間です。

先進諸国の育休と概要
先進諸国の育休と概要

内閣府 平成17年版「少子化社会白書」(現「子ども・子育て白書」)一部修正

スウェーデンと日本を比べると、育児休業の期間では480日と最長1年半で、それほど差があるように見えないのに、女性の労働力率で67.3%対48.5%という大きな差が開いています。
日本では育児休業制度はあっても、利用する女性がそれほど多くなく、第1子出生前に6割の女性が仕事を辞めるという実情があり、最近20年間でその割合はほとんど変化していません。
内閣府が発表した「男女共同参画白書」(平成24年度版)(※2)の中には、正規職員、パート等、自営業主等の就業形態別にみた就業継続率のデータが掲載されています。これを見ると、正規職員については、1985〜1989年当時に比べると、就業継続率が40.4%から52.9%へと伸びており、育休取得率も増えていますが、パート等については就業継続率が23.7%から18.0%へと逆に減っています。
正規職員については、育休を利用して就業継続する人が増えていますが、パート等では育休を取って就業継続する人はごくわずかであるといえます。

出産前有識者の就業継続率(就業形態別)
出産前有識者の就業継続率(就業形態別)
(備考)1.国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」より作成
(備考)2.第1子が1歳以上15歳未満の子を持つ初婚同士夫婦について集計
(備考)3.出産前後の就業経験
(備考)3.就業継続(育休利用)−妊娠判明時就業〜育児休業取得〜子ども1歳時就業
(備考)3.就業継続(育休なし)−妊娠判明時就業〜育児休業取得なし〜子ども1歳時就業

内閣府「男女共同参画白書」(平成24年版)

※1 独立行政法人労働政策研究・研修機構「労働力需給の推計」(2013年1月発表)
http://www.jil.go.jp/institute/chosa/2012/12-110.htm

※2 内閣府「男女共同参画白書」(平成24年度版)
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h24/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-04-04.html

企業の育休制度の現状

●先進企業はすでに育休3年を導入

企業の中には法律で定める最長1年半よりも育休の期間を長くし、既に育休3年を導入している例も見られます。ある地方銀行では子どもが4歳になるまでの育休を認めています。また、総合家電、化粧品、スーパー、コンビニエンスストアなどの業種で育休3年の企業事例があります。
家庭と仕事を両立しやすくする制度を手厚くすることにより、女性社員の安定就業につながるだけではなく、女性の就業希望者に好印象を与えるという効果もあるでしょう。

●育休3年を短縮した企業もある

一方で、早くから育休3年を制度化したものの、運用後に再検討して期間を短縮した企業もあります。あるメーカーでは1992年に育休3年を制度化しましたが、2006年には期間を2年に短縮しました。社内調査で、育児休業取得者の9割が1年半までに復帰していることがわかり、「3年も休むと会社も社会も環境が変わってしまい不安」との声が多かったそうです。
また、ある流通関係の企業でも、育休3年を1992年から制度化していますが、満期取得者は1割未満に過ぎないようです。休業中に養われた「子育てママ」の目線を生かして商品開発に還元させようというねらいから、休業取得後にスムーズに仕事に戻れる環境づくりに力を入れ、育休明けの女性社員を集めた専門部署をつくっていることから、育休復帰をしやすいためかもしれません。
このように、企業にとっての課題は「単に育休期間を延ばして女性の継続就労の可能性を広げる」という段階から、次の「職場復帰を支援する」という段階へ移ってきているともいえるでしょう。

育休3年以外のオプションも必要

●長期の育休よりも金銭的支援を望む母親が多い

他方、育休を利用する側の反応はどうでしょうか。
独立行政法人労働政策研究・研修機構の「第2回子育て世帯全国調査」(※3)によると、拡充してほしい公的な子育て支援策(複数回答)の1位は「金銭的支援」で、2位は「保育サービスの充実」でした。「育児休業の法定期間の延長」を望んだ回答は1割に満たない結果となりました。
育児休業期間中は、雇用保険加入者に対しては育児休業給付金として、1カ月あたり、休業開始時賃金日数×支給日数の40%(当分の間は50%)相当額が支給されることになっています。
同調査によると、子育て世帯が望む金銭的支援の内容としては、「児童(子ども)手当の増額」が最多でした。
次が「乳幼児医療費助成期間の延長」、「年少扶養控除の復活」、「職業訓練を受ける際の金銭的援助」と続いています。

●育休3年によって選択肢が増えること自体は歓迎される

育休3年は、女性の就労継続の唯一絶対な解決法ではなく、手段のひとつと考えられます。育休が「3年も取れるならば」と、離職せずに正社員にとどまることを選ぶ女性も何割かはいるでしょう。また、人によって休業の取得期間が多様化すれば、1歳児保育への過度の集中を分散でき、結果として待機児童問題の解消にも貢献できるかもしれません。
法定の育休1年で復職した女性からは、「2年くらい一緒にいたかった。期間が長くなり、また、取る時期も分割できるならば、最適な復帰時期を選べると思う」という声も聞きます。

●長期の育休で「浦島太郎化する」心配も

一方、前述のように育休が長期化すると、「社会から取り残されるような気持ちがして孤独である」とか「忙しい職場に復帰してもついていけるか不安」という声もあります。とくに日進月歩の勢いで技術革新が進む専門職の世界や、成果主義で厳しく業績を問われる職場などは、3年も離れてしまうと「浦島太郎になってしまう」という恐れがあるようです。

●育児中の短時間勤務制度が義務化された

また、休業しないまでも、育児期間中に勤務時間を短縮することで就業継続をしやすくする道もあります。育児・介護休業法の改正により、3歳までの子を養育する労働者について、短時間勤務制度を設けることと所定外労働を免除することが事業主の義務となりました。(育児・介護休業法第23条)
女性社員の戦力化に積極的な企業では法改正に先行して短時間勤務制度を導入しています。ある百貨店では短時間勤務制度の始業を9時50分とし、1日あたりの勤務時間は5時間から7時間35分までの幅で5パターンある中から選択できる弾力的な仕組みにしています。育休による制度利用者は最近3年間で1,027名にのぼりました。導入後の効果としては、育児を利用とする離職者が大幅に減ったそうです。
このような制度を導入する場合は、短時間勤務者に任せる仕事の配分と目標設定および評価、子どもの看病による欠勤の際の代替要員の確保、気兼ねなく制度を利用できる職場環境にするための社員の意識啓発等の大切になってきます。

●職場復帰支援の助成金も登場

職場復帰の際の不安を軽減するには、再教育などの支援策が不可欠でしょう。中小企業を対象に、社員が育児休業から職場復帰する際に能力アップの訓練等を行う場合に使える助成金が創設されました。訓練にかかった費用の2分の1を国が負担します。出産を機に離職する人が多い中小企業に対し、積極的な育休取得と職場復帰を促す狙いがあります。
これは「中小企業両立支援助成金」(※4)というもので、訓練費用を助成する休業中能力アップコース、代替要員確保コース、継続就業支援コース、期間雇用者継続就業支援コースなど、全部で4つのコースに分かれています。
その他に、大企業も使える助成金としては、子育て期の労働者すなわち小学校3年生修了までの子どもを養育する人に対して短時間勤務制度を導入し、利用者が初めて出た場合に事業主に支給される「子育て期短時間勤務支援助成金」があります。

中小企業両立支援助成金(平成25年度)
中小企業両立支援助成金(平成25年度)

●女性の活躍促進のための目標値を定め、公表し、当該目標値を達成した場合の加算

T代替要員確保コース、U休業中能力アップコース、W期間雇用者継続就業支援コースについては、両立支援の実効性を高めるため、女性の活躍促進について事業主が数値目標を含む内容の目標を宣言し、当該目標数値を達成した場合は、支給額に加算があります。
支給額(1企業あたり1回限り)5万円

※3 独立行政法人労働政策研究・研修機構「第2回子育て世帯全国調査」
http://www.jil.go.jp/institute/research/2013/109.htm

※4 厚生労働省・都道府県労働局「平成25年度両立支援助成金のご案内」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

各企業にはそれぞれ異なる風土や習慣があるため、女性の就業継続およびキャリアアップと育児支援の両立は、一律同様の制度でカバーすることはできないでしょう。
育休期間の延長だけではなく、復職支援、短時間勤務制度など、自社に適した制度を模索していく必要があります。

【参考】
テンプグループでは、保育関連のアウトソーシングサービスを提供しております。

活用事例: 就業者向けの託児施設を設置、企画から運営までトータルに支援
http://www.tempstaff.co.jp/client/case/0039.html

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