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(情報掲載日:2021年4月12日)


近年、従業員の副業・兼業を推進する企業や、外部の副業・兼業人材を受け入れる企業が増えています。副業・兼業を行うことは「従業員の自主的な思考の育成」「新たな知識・顧客・経営資源の獲得」「イノベーションの推進」「優秀人材の流出防止」など、多くのメリットがあります。企業における副業・兼業の現状、副業・兼業を推進するうえで注意すべき点などについて解説します。

●政府の後押しもあり、企業で副業・兼業が解禁

近年、政府の後押しもあり、企業で副業・兼業が解禁されています。政府は成長戦略や働き方改革の一環として副業・兼業の促進を打ち出し、2018年1月に従来の副業・兼業禁止を規定した厚生労働省の「モデル就業規則」を改定しました。その中で「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」とし、副業・兼業を容認しています。成長戦略実行計画によれば、政府はそのメリットとして「所得の増加」「他社での就労経験を積むことでスキルや経験の獲得が可能」「人生100年時代において個人が働き続ける準備が可能」を挙げています。2020年以降、企業が続々と副業・兼業を解禁。コロナ禍で副業・兼業人材のニーズは一層高まっており、受け入れの動きも加速しています。また、個人が副業・兼業を行いたいという希望も、働き方改革以降高まっています。

●企業・従業員における副業・兼業のメリット・デメリット

副業・兼業を行うことは、企業および従業員にとって、どんなメリット・デメリットがあるでしょうか。「自社人材を外部へ副業・兼業推進する企業」「外部より副業・兼業人材を受け入れる企業」「副業・兼業を行う従業員自身」ごとにまとめると次のようになります。企業には人材育成、モチベーションの向上、イノベーションといった効果があり、従業員にも所得の増加、能力・スキルの向上、キャリアの選択肢の拡大といったメリットがあります。その反面、副業・兼業を行う従業員は就業時間の調整やタスク管理などが必要となるため、企業は従業員の健康への配慮、情報漏洩のリスク管理といったデメリットを負うことになります。

企業・従業員における副業・兼業のメリット・デメリット


●副業・兼業を行う目的は収入増が多いが、自身を向上させる目的も目立つ

では副業・兼業は世の中でどれくらい行われているでしょうか。厚生労働省が2020年7月に副業・兼業に関する実態調査を発表しています。現在、副業を行っている人は全体の9.7%。就業形態別では「自由業・フリーランス(独立)・個人請負」が29.8%ともっとも高く、「正社員」は5.9%でまだ少数です。副業・兼業を行う理由では「収入を増やしたい」56.6%、「1つの仕事では収入が少なすぎて、生活自体ができないから」39.7%が上位となっていますが、「自分で活躍できる場を広げたいから」19.8%、「さまざまな分野の人とつながりができるから」13.6%、「現在の仕事で必要な能力を活用・向上させるため」9.5%など、自身を向上させる目的を挙げる人も多数見受けられています。

就業形態別 副業を行っている人の割合

(厚生労働省「副業・兼業に関する労働者調査」2020年 ※1)

副業をしている理由(複数回答)

(厚生労働省「副業・兼業に関する労働者調査」2020年 ※1)

では、副業・兼業を行う人はどれくらいの時間を働いているでしょうか。副業・兼業を行う人の1週間あたりの副業・兼業の総実労働時間をみると、「10時間以上20時間未満」25.6%、「5時間以上10時間未満」24.3%、「5時間未満」23.0%であり、20時間未満が全体の約7割を占めていることがわかります。

1週間あたりの副業・兼業の総実労働時間

※副業・兼業を複数行っている方については最も収入の多い副業について回答
(厚生労働省「副業・兼業に関する労働者調査」2020年 ※1)

●社外だけでなく、社内の人材を活用する社内副業も活発化

また、社外の人材ではなく、社内の別部署の人材を活用する社内副業を導入する企業も現れています。社内副業とは、従業員が所属する部署に籍を置きながら、別の事業部や部署の業務に携わることです。社内副業には「能力開発や育成に役立つ」「業務改善の活性化につながる」「社外の人材ではないため情報漏洩のリスクがない」といったメリットがあります。企業事例をみると、副業を行う時間および期間を限定するところが多くなっています。個人の業務量が増えるため、企業は個人のスケジュールをうまく調整し、業務効率を低下させない工夫が求められます。

社内副業の企業事例

※1:厚生労働省「副業・兼業に関する労働者調査」2020年
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000660780.pdf新しいウィンドウが開きます



●2020年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改定

副業・兼業を希望する労働者については、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要になります。厚生労働省は2020年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(※2)を改定しました。改定では労働者が長時間労働にならないように、特に労働時間管理、健康管理についてルールが明確化されています。詳しくはガイドラインの概要および詳細を確認ください。

副業・兼業の促進に関するガイドラインの概要(一部を掲載)

〇企業の対応
(1)基本的な考え方
・副業・兼業を進めるに当たっては、労働者と企業の双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と労働者との間で十分にコミュニケーションをとることが重要である 。
・使用者及び労働者は、①安全配慮義務、②秘密保持義務、③競業避止義務、④誠実義務に留意する必要がある。
・就業規則において、原則として労働者は副業・兼業を行うことができること、例外的に上記①〜④に支障がある場合には副業・兼業を禁止又は制限できることとしておくことが考えられる。
(2)労働時間管理
労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合には、労働基準法第38 条第1項に基づき、労働時間を通算して管理することが必要である。(①労働時間の通算が必要となる場合 ②副業・兼業の確認 ③労働時間の通算 ④時間外労働の割増賃金の取扱い ⑤簡便な労働時間管理の方法:「管理モデル」)
(3)健康管理
・使用者は、労働安全衛生法に基づき、健康診断、長時間労働者に対する面接指導、ストレスチェックやこれらの結果に基づく事後措置等を実施しなければならない。など

〇労働者の対応
・労働者は、自社の副業・兼業に関するルールを確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある。
・労働者は、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、自ら業務量や進捗状況 、時間や健康状態を管理する必要がある。
・他社の業務量、自らの健康の状況等について報告することは、企業による健康確保措置を実効あるものとする観点から有効である。


(厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン<概要>」を参考に作成 ※2)

●企業が従業員の副業・兼業に対応する際のポイント

企業は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考に、「副業・兼業は原則として労働者の自由」と認識し、「申告、許可制度などの制度整備」「情報漏洩リスクへの対応」について副業・兼業に対応する社内整備を行う必要があります。また、社内で副業・兼業を解禁する際には、従業員に「副業・兼業の解禁にどんな意図があるか」「副業への挑戦でどんな効果を期待しているか」を伝えることも重要です。隠れ副業・兼業などが行われると、情報漏洩や過重労働などのリスクが高まる危険性があり、できるだけ早く制度を整備し、広報する必要があります。

企業が副業・兼業に対応する際のポイント

〇副業・兼業は原則として労働者の自由と認識する
過去の裁判例においては原則として副業・兼業を禁止又は制限することはできないとされています。例外的に、これを禁止又は制限することができるのは、「副業・兼業により労務提供上の支障が生じる場合」「業務上の秘密が漏洩する場合」「競業により自社の利益が害される場合」「自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合」に限られます。

〇申告、許可制度などの制度整備を行う
副業・兼業を禁止または制限できないという前提で、事前に就業規則などの準備をしましょう。決定すべきことは副業・兼業の申告、許可をどのように行うかです。「自社ではどのような副業を認めるのか」「労働時間の把握などをどこまで行うのか」などを検討します。例外的な場合に該当しないかを確認するために、「他の使用者の事業内容」「他の使用者の下で従事する業務内容」「労働時間の通算の対象となるか否かの確認」といった事項をあらかじめ申告させる必要があります。

〇情報漏洩リスクへの対応を整備する
副業・兼業は企業情報が漏洩するリスクがあります。業務上の秘密の漏洩の可能性がある場合には副業・兼業を禁止または制限しうる旨の規定を設け、必要な場合は許可を取り消せるようにしておきます。事前に業務上の秘密の範囲を明確にしておき、情報漏洩しないよう従業員に注意喚起しましょう。


●副業・兼業の人材を受け入れる際に注意すること

副業・兼業の人材を活用するためには、まずは自社で何をしてもらうのかをしっかりと決めておく必要があります。自社の課題を明確化し、「兼業・副業で確保する人材イメージを具体的に持つ」「業務の切り分け・整理を行い、依頼できる業務を整備する」ことが重要になります。また、労務管理も重要です。労働時間の通算や労災保険・社会保険の適用などに留意しなければなりません。

※2:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン<概要>」
https://jsite.mhlw.go.jp/chiba-roudoukyoku/content/contents/000707547.pdf新しいウィンドウが開きます
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf新しいウィンドウが開きます


●人材育成、キャリア開発、新事業開発、イノベーションなど成果は多数

実際に副業・兼業を導入し、成果や効果を得ている企業が多数あります。人材面では人材育成、キャリア開発、シニア人材の活性化など、事業面では新規事業開発、イノベーション、コラボレーションなど、多方面での成果や効果が得られています。企業が副業・兼業を導入するメリットは想像する以上に幅広いといえるでしょう。

企業事例にみる副業・兼業の成果および効果
以前は多くの企業で副業・兼業は禁止されていましたが、今や従業員の当然の権利となりつつあります。個人の「副業・兼業を行いたい」という希望は、働き方改革以降増えており、コロナ禍で一層ニーズは高まっています。企業は早急に、副業・兼業に対する意識を変える必要があるでしょう。新たな人材の交流となる副業・兼業の導入は、企業にとって現状を変える突破口となりうるものです。前向きに取り組み、自社流の副業・兼業の成果を見つけてください。

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