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(情報掲載日:2020年6月15日)


パワーハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)が2020年6月1日に施行となりました。これにより企業はパワーハラスメントに対し、防止策を取ることが義務付けられます。今後企業にどのような対応が求められるのか、その内容について解説します。

●パワーハラスメント防止法とは何か

パワーハラスメント防止法が2020年6月1日に施行となり、大企業はパワーハラスメントに対し、防止策を取ることが義務付けられました。当面、中小企業は努力義務で2022年4月1日から義務化されます。今回の法改正は「労働施策総合推進法」(「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)という法律の中に、新たにパワーハラスメントに関する条文が追加されたものです。

追加された条文の1つは、第30条の2(雇用管理上の措置等)で、事業主にパワーハラスメントに関する雇用管理上の措置を義務付け、さらにパワーハラスメント等の相談者に不利益取り扱いをすることを禁止しました。そして、それらを適切かつ有効に実施するため「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下、指針)(※1)が定められています。内容は「1.パワーハラスメントの定義」「2.事業主等の責務」「3.雇用管理措置の内容」で構成され、具体的に法律の内容を示しています。また、第30条の3(国、事業主及び労働者の責務)が追加されており、ここでは事業主および労働者に、パワーハラスメントの理解を深め、注意を払うように努力義務を課しています。

法律で規定された職場におけるパワーハラスメントは、職場において行われる「@優越的な関係を背景とした言動であって、A業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、B労働者の就業環境が害されるもの」であり、@〜Bまでの要素を全て満たすものをいいます。「@優越的な関係を背景とした言動」には、「職務上の地位が上位の者による言動」だけでなく「同僚または部下による言動」「同僚または部下からの集団による行為」も含まれており、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、豊富な経験などさまざまな優位性を対象にしている点に注意が必要です。

●施行された背景

パワーハラスメント防止法が施行された背景にあるのは、企業におけるパワーハラスメントの増加です。都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加し、2012年度には相談内容の中でトップとなり、引き続き増加傾向にあります。また、民事上の個別労働紛争に占める「いじめ・嫌がらせ」の割合も年々増えています。

都道府県労働局等への相談件数および、民事上の個別労働紛争に占める「いじめ・嫌がらせ」の割合
(厚生労働省「ハラスメント基本情報」データで見るハラスメントより作成 ※2)

それに対し、企業も対応策を打ち出しています。パワーハラスメントの予防・解決に向けた取組を実施している企業は52.2%でした。予防に向けて実施している具体的な取組は、上位から「相談窓口を設置した」82.9%、「管理職を対象にパワーハラスメントについての講演や研修会を実施した」63.4%、就業規則などの社内規定に盛り込んだ」61.1%となっています。


パワーハラスメントの予防に向けて実施している取組
(対象:パワーハラスメントの予防・解決のための取組を実施している企業、複数回答)

(厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」2016年度より作成 ※3)

※1:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf
※2:厚生労働省「ハラスメント基本情報」データで見るハラスメント
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/statistics/
※3:厚生労働省「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(2016年度)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11208000-Roudoukijunkyoku-Kinroushaseikatsuka/0000164173.pdf


●企業に課される責務は主に3点

パワーハラスメント防止法において企業に課される責務は主に3点です。「パワーハラスメントを防ぐための研修の実施など、必要な配慮を行う」「パワーハラスメントの相談に応じて、適切に対応する体制を整備する」「相談者に対して、不利益な扱いをしない」ことです。パワーハラスメントが発生する以前に予防策を講じることが求められており、どのようなケースがパワーハラスメントに当たるのかを社員に周知させることが防止の第一歩になるといえます。



●パワーハラスメントの判断基準

パワーハラスメントであるかどうかの判断について、指針では「平均的な労働者の感じ方」とされており、「社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうか」を基準としています。以下の表は、代表的な言動の類型と、類型ごとの典型的な職場におけるパワーハラスメントに該当、または該当しないと考えられる例を示したものです。この例は優越的な関係を背景に行われたものであることが前提となっています。個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、挙げている例に限定するものではないことに十分留意して、職場におけるパワーハラスメントに該当するか微妙なものも含め広く、被害を受けた労働者やその周辺の労働者からの相談に対応するなど、適切な対応を行うことが必要です。




●企業が行うべき対応

今回、企業に求められる行動は、「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」「職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」です。企業はパワーハラスメントに対し、予防と再発防止を重視した取組を行い、小さな芽の段階から摘み取っていくことが求められます。具体的には、研修の実施や相談窓口の設置、社内規定の作成などに取り組み、それと同時にパワーハラスメントの実態を明らかにすることです。パワーハラスメントは被害の当事者ではない第三者が関わることで早期の発見および事実確認が可能となり、早期の解決につながります。社内アンケートなどを行って早期に「見える化」し、それを相談窓口につないで、迅速な対応により支援していくことが大事になります。相談窓口の設置においては、「パワーハラスメントの対応範囲の確認」「相手から話を聞く場所の確保」「ヒアリングの基本フォーマットの準備」「対応の手順、関連部署との連携方法の確認」などを行っておく必要があるでしょう。

●社員(個人)が行うべき対応


社員(個人)が行うべき対応には、パワーハラスメントを加害者として行わないことはもちろん、自分が被害者にならないように配慮する必要があります。そのためにはパワーハラスメントを無視したり、受け流したりしているだけでは状況は改善されません。嫌なことは「嫌だ」と相手に対してはっきりと伝えることが大切です。口頭で言いにくい場合にはメールや手紙で伝える方法もあります。自分ひとりで我慢せずに身近な人や相談窓口などに相談するようにしましょう。

また、社員(個人)は指針にもあるように「パワーハラスメント問題に関する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に注意を払うこと」が求められます。「他の労働者」には、取引先等の他の事業主が雇用する労働者や求職者も含まれています。パワーハラスメントは当事者だけでは解決が難しい場合が多いため、そこに第三者が入ることで、認識や問題解決のスピードが上がり、企業の対応もスムーズになります。ただし、それがパワーハラスメントに該当するのかといった認識を優先してしまうと、対応が遅れて当事者の苦しみが継続してしまいます。まずは当事者が苦しみから抜け出すことを優先して考えることが重要です。相談窓口や外部のホットラインなどの相談先を積極的に利用しましょう。

企業におけるパワーハラスメントは、誰か一人の力で解決できる問題ではありません。職場の全員が当事者意識を持って関わっていくことで、パワーハラスメントの実態を明らかにし、解決策を全員で考えることで個々の認識が明らかとなります。問題が起きてもそれをよい機会と捉え、誰もが仕事にやりがいを持て、お互いを尊重し合える企業風土へと変えていくきっかけにしましょう。

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