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(情報掲載日:2020年3月10日)


春を迎えると毎年、桜の開花が話題にのぼるように、桜は日本人の誰もが親しみを感じる代表的な花と言えます。お花見を庶民が楽しむようになったのは江戸時代からと伝えられていますが、今年は桜にまつわる知識を増やして、お花見をより満喫してみませんか。

●昔のお花見は梅

お花見の原点と考えられているものは、古くから行われていた田んぼの神さまをもてなす儀式です。豊作を祈り、桜の周りで行われていました。もう一つ、奈良時代に中国から伝来した、梅を鑑賞する貴族の行事も起源だと言われています。このため、当時の日本の貴族のお花見の対象は梅だったのですが、遣唐使が廃止され国風文化が育つにつれて、梅よりも桜を鑑賞するスタイルへと変わり、満開の桜のもとで和歌を詠む文化が根づきました。

鎌倉時代には、武士の間でも桜を鑑賞する文化が浸透していきます。のちに、天下を取った豊臣秀吉は「醍醐の花見」「吉野の花見」を開催したことでも知られています。今となっては世界文化遺産に登録されている京都の醍醐寺に700本もの桜を植えさせたり、諸大名を大勢招いて何日間も宴を行うなど盛大だったため、庶民の間にも徐々にお花見が伝わっていきます。
お花見が庶民の行楽として広まったのは江戸時代で、桜餅が作られるようになったのもこの頃です。8代将軍の徳川吉宗は、今の時代も花見客で賑わう隅田川沿いや飛鳥山など江戸の各地に桜を植樹させて、お花見を奨励しました。人々が桜の木のもとに集まることで地盤が踏み固められるという護岸の効果を狙ったものでもあったと伝わっています。
明治時代には、アメリカへ友好の印に桜が寄贈されました。首都ワシントンDCの中心部を流れるポトマック川の岸に約2000本の桜が植えられています。ここで開かれる全米桜祭りは、毎年大勢が訪れる人気のイベントになっています。

●和歌など文学にも登場

日本人が桜を愛おしむ感覚は、お花見だけではなく文学上からも伺えます。平安時代に生まれた「源氏物語」では、主人公の光源氏が生涯最も愛した正妻・紫の上の美しさが、桜に例えられて表現されています。「花の宴」の巻では、宮廷で開かれた花見の会についての描写があります。
さまざまな和歌にも、桜は詠まれています。奈良時代に編纂された日本最古の歌集・万葉集では桜を詠んだ和歌は約40首でしたが、平安時代に編纂された古今和歌集では約70首、鎌倉時代に編纂された新古今和歌集では約130首と、時代が進むにつれて桜の和歌が大きく増えていきました。
江戸時代に生まれた俳句には、季語を入れるルールがあります。「桜」は春の季語ですが、「花」という季語も桜を指し、秋の「月」、冬の「雪」と共に、雪月花と呼ばれる三大季語の一つとなっています。例えば、次のような桜を詠んだ和歌が知られています。

●「花の雲 鐘は上野か 浅草か」 松尾芭蕉
※解釈:桜が一面に咲いている。鐘の音は上野の寛永寺か、または浅草の浅草寺から聞こえてくるのだろうか。

●「咲き満ちて こぼるる花も なかりけり」 高浜虚子
※解釈:今はまさに桜が満開に咲き誇っており、散りこぼれてしまうような花も見あたらない。

●「散る桜 残る桜も 散る桜」 良寛
※解釈:今はどんなに美しく枝に咲いている桜でも、いつかは必ず散る運命にある。

●バラ科に属する花

桜は、バラ科サクラ亜科サクラ属に属し、山野に自生している野生種と、鑑賞を目的に品種改良された園芸品種に大きく分類されます。野生種のヤマザクラ、園芸種のソメイヨシノを筆頭に、国内には600種もの品種が存在していると言われています。
桜の木には、傷をつけるとそこから腐りやすいという性質があるため「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」ということわざが伝えられています。また、桜の葉は植物の生育を阻む成分を含んでおり、雨や風によって葉が地面に落ちることで、周囲に雑草が茂るのを防ぐという働きを持っています。

日本に咲く桜の約8割を占めているのが、ソメイヨシノです。江戸末期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木職人が「花は大きく、葉は開花の後に開くように」と園芸用に開発した品種と言われています。ソメイヨシノは、種では繁殖できないために、接ぎ木や挿し木で増やされてきました。明治時代には、公園や川沿い、学校などに次々と植えられるようになり、全国へと広がりました。

●桜という言葉と多彩な表現

桜という言葉の語源には、古事記や日本書紀に登場する桜の霊でもあるとされる木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)という姫の名前の「サクヤ」が「サクラ」に変化したという説、「咲く」という言葉に複数を意味する「ら」を加えたものという説など、諸説があります。
桜の旧字は「櫻」です。漢字のつくり(右側)を分解すると、2つの「貝」と「女」となり、貝は貝殻でできた装飾品を表すことから、女性が付ける首飾りのような美しい花や実のつく木を意味しています。
桜の花言葉は、種類によっても細かく分かれていますが、純潔、優美、高尚、美麗などが主なものです。

桜に関連した言葉遣いは豊富にあります。例えば、満開の桜を「花盛り」、花びらが散り舞うさまを「桜吹雪」と言いますが、他にも次のような表現が使われています。



●鑑賞に適した時期

桜前線とは、ソメイヨシノを主な対象として、開花予想日が同じ日に当たる地点を結んだラインです。天気図の前線に似ているところから名付けられました。桜前線が北上していく速度は気象条件により変化しますが、人が歩くスピード、平地で1日あたり30キロ前後、などとも言われています。開花が最も早いのは沖縄の寒緋桜(カンヒザクラ)で例年1月上旬、最も遅いのは北海道の千島桜(チシマザクラ)で例年5月中旬です。

気象庁は毎年、各地の桜の標本木を観測しており、東京の標本木は靖国神社境内に植えられている特定のソメイヨシノです。つぼみが5、6輪ほころびると各地で開花が発表され、いわゆる開花宣言としてニュースでもよく取り上げられています。さらに、8割以上のつぼみが開くと満開が発表されます。
開花期間は地域により異なりますが、一般的にはソメイヨシノやヤマザクラは満開から5∼7日間ほどです。咲いた後に気温が下がる「花冷え」が起こると長く開花して、満開を迎えた後に「桜雨」が降ると早く散ってしまいます。

●三大桜など各地の名所

大正時代に国の天然記念物に指定された、日本五大桜と呼ばれる名木があります。中でも、次の表の上の三つは「三大桜」と呼ばれており、いずれも樹齢千年を超える老木です。


写真:三大桜の一つである三春滝(みはるたき)桜


桜の開花は春を象徴し、気分を新たにさせたり、さまざまな感情を湧き起こしてくれる眺めと言えます。日本人になじみが深く、多くの人に共通した話題や関心の的になる桜を愛でに、出かけてみませんか。

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