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(情報掲載日:2019年11月11日)


福祉国家として知られている北欧の国で生まれた「ヒュッゲ」が、近年欧米を中心に注目されています。物質的、経済的な価値よりも精神的な幸福度に軸を置いた概念で、働き方や生き方を見つめ直す際の参考にもなります。日本でも広がりつつあるヒュッゲという言葉についてご紹介します。

●デンマークの言葉

ヒュッゲ(Hygee)とは、デンマーク人がとても大切にしている、時間の過ごし方や心の持ち方を表すデンマーク特有の考え方を表したデンマーク語です。誰にも気を遣うことなくくつろげる、居心地のよい時間や空間、そこから生まれる幸福感や充実感、そんな暮らしを楽しむ姿勢や心の持ちよう、を意味します。何百年以上にもわたってデンマーク人の精神の中で受け継がれてきた伝統的なもので、この国のアイデンティティーを形成している言葉とも言われています。
例えば、パーティに招かれた後に「ヒュッゲな時間をありがとう」「あなたの家はとてもヒュッゲリだ(ヒュッゲリはヒュッゲの形容詞Hyggelig)」と挨拶をしたり、会話の中に「それはヒュッゲリだ」「ヒュッゲしない?」という言い方があるほど、デンマーク人にとっては身近です。

デンマークでの、寒い日の典型的なヒュッゲのシーンは、パチパチと音を立てる暖炉やロウソクの炎を囲みながら、好みの色や肌触りの良い服に身を包んで、親しい友達や家族と一緒にゆったりと過ごすといったものです。このために、特別な物を準備したり、かしこまったりしないことが大事な特徴です。花を眺めていたり、自転車で街を走るなど、一人で過ごすことも含めて、日常の中にある、何気ない出来事にヒュッゲはあります。

●デンマークの幸福度

150以上の国や地域を対象にした「世界幸福度調査」が2012年から国連によって行われており、毎年ランキングが発表されています。幸せの実感値のほか、人口あたりのGDP、健康寿命、寛大さ、社会的支援、人生選択の自由度などの要素を元に計られるものです。2019年のランキングでは、デンマークは2位、日本は58位でした(※1)。デンマークは2012年以来上位3位の常連となっており、幸福度の高さにはヒュッゲが大きく影響していると言われています。

公益財団法人日本生産性本部によるレポート「労働生産性の国際比較 2018」によると、OECD加盟諸国の時間当たり労働生産性(36か国が対象)は、デンマークは5位。日本は20位です(※2)。デンマークの労働生産性の高さの一要因にもヒュッゲが挙げられます。働く環境の快適さ、仲間とのコミュニケーション、リラックスした状態をヒュッゲは大切にするためにストレスを軽減させる上、ヒュッゲのあるオフタイムの充実感は仕事に好影響を与えると考えられるからです。
また、デンマークは、テクノロジーや効率性に関するイノベーションよりも、生活や自然に軸足をおいた精神的な豊かさを志向するイノベーションが得意だと評されています。この背景にもヒュッゲという概念が大きく作用しています。

※1:内閣府 政策統括官「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書
https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf

※2:公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2018」
https://www.jpc-net.jp/intl_comparison/intl_comparison_2018_press.pdf

●デンマーク人の考え方

デンマークの気候は冬が長く夜が長いため、家で家族と一緒に過ごす、友達と語らう、本や映画を楽しむ、といった時間を自然に大切にするようになり、ヒュッゲは根づいてきたと考えられています。
こういった時間を「怠惰に過ごしてしまった」「他にするべきことがあったのに」と気にせずに満喫する姿勢は、日常生活の中に落ち着く場所を作ることになり、ストレスを生じにくくさせます。自分の日常生活の質を向上させる方向へと力を注ぐため、意識が他者との比較よりも自分自身へと向かっていき、「ここが足りない」「もっとこうしなければ」と不安になったり無理をすることもありません。
また、富と幸せは決して比例するわけではなく別の次元にあると考え、目に見える物よりも人や自然との新しい関わりを求めるというデンマーク人の傾向も、ヒュッゲに通じています。

ある程度の便利な暮らしを過ごせているという生活レベルと、ある程度の物質的な豊かさが得られているという基本的なニーズが満たされると、必ずしもお金は幸福度を高める要因にはならないと、一般的には考えられています。代わりに、主観で感じる「暮らしの質」「豊かさの質」が幸福度を高める要因となって、それらを自分自身で感じ取ることのできる精神的な成長が求められるようになります。
ある程度の便利さと豊かさが手に入るようになった現在に、ヒュッゲはまさに調和した概念です。今後も続くと言われている変化の大きな時代の中で自分を見失わず、心の豊かさを大切にして生きていくための一つのヒントになります。

●注目されるキーワード

欧米諸国ではここ数年、ヒュッゲにならって快適な時間を過ごそうという機運が高まり、ライフスタイルとして積極的に取り入れて行くブームが新たに起きています。日本でもヒュッゲをテーマにしたインテリア用品、洋服、自然志向の料理が紹介されるなど、さまざまな影響が見られています。くつろぎのスペースやカフェコーナーといった形でヒュッゲが実現されているオフィス環境のほか、店舗やマンションの空間づくりのコンセプトにも使われるようになりました。

数年前には、イギリスで最も話題になった単語トップ10にヒュッゲが選出されたり、オックスフォード辞典に「ヒュッゲ」が単語として追加されました。デンマークの言葉が英語圏でも定着したと言えます。さらに、ヒュッゲに関する100冊以上もの本が発行されて、中にはベストセラーになったものもあり、欧米の出版界をにぎわせています。日本でも、翻訳されたものも含めて何十冊ものヒュッゲに関した本が出版されています。SNS上においても、話題を探しやすくするためにハッシュタグ付きで投稿されるほど、ヒュッゲはポピュラーなキーワードとして広く認知されるようになりました。

●日頃からのヒント

ヒュッゲを日常の中に取り入れるにあたっては、次の4つのポイントを意識するとコツがつかみやすくなります。



仕事の中に取り入れる時に特に意識したいことは、「自分らしさ」と「スピードダウン」です。 「自分らしさ」とは、周囲の評価や見栄えよりも、自分が良い・好ましい・心地いいと感じるものを重視することを指します。他人と比較して自分のまだ持っていないものをどうしようかと考えるよりも、自分がすでにもっているものをどう活かすか、どう伸ばすかについて考えるようにします。
そのために、自分が好きなことや大切にしていること、それに対する思いや感情を文字にして書き出してみると、より意識しやすくなります。逆に、自分らしくないことをしていないかを振り返ってみて、自分らしくない行動があれば別の手段を考えていく方法も効果的です。

「スピードダウン」とは、自分の行動やコミュニケーションを丁寧にしてみることを指します。速度を緩めることはマイナスではなく、必ず新しい気づきや再発見があるとゆったり構えるようにします。
そのために、効率を高める・スケジュールを埋めるということを少し弱めてみると、急がなくていいもの、あまり急ぐ必要のないものが見えてきて、スピードダウンの大切さも感じやすくなります。忙しさの原因に気づくことができ、それを解決する方法を思いつく気持ちのゆとりも生まれます。

●見つめ直し

ヒュッゲに重要な、自分にとっての心地よさについてあらためて考えてみると、ヒュッゲの状態を作りやすくなります。自分自身に問いかけて見つめ直したいテーマは、次の二つです。



一人ひとりにとっての心地よさを大切にすることは、相手にとっての心地よさを大切にすることに伝播するという相乗効果があります。

世界的に幸福度の高いデンマーク人の間で伝わってきたヒュッゲという概念から学ぶことは多くあります。ちょっとした考え方や毎日の過ごし方を変化させることから、ヒュッゲをライフスタイルの中に取り入れてみませんか。

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