(情報掲載日:2018年4月10日)


目標やビジョンを立て、綿密なプランに沿って行動することは大切です。いっぽう、プランから外れたところで偶然浮かんだ一見関係のない気づきの中に、意味のあるアイデアやブレークスルーのきっかけが見つかるケースは少なくありません。実際に、そうして生まれた大発見や発明は過去にいくつも見られます。理論や理屈だけを拠りどころとしない、セレンディピティという可能性を秘めた力についてご紹介します。

●童話に由来する言葉

社会情勢や技術革新の変化が激しさを増す昨今は、未来の予測が困難な時代だと言われています。従来であれば通用していた合理的・論理的なアプローチだけでは、適応しきれない局面が少なくありません。むしろ、非現実的になったり可能性を狭めてしまうケースすら生じています。そんな今、注目したいのがセレンディピティという力です。

セレンディピティ(serendipity)は、ペルシャの童話「セレンディップの3人の王子」に由来します。18世紀半ばにイギリスの小説家によって紹介され、広く知られるようになりました。セレンディップという王国の3人の王子が旅をしながら探し求めているものを偶然と察知によって発見していき、故郷へ帰った後に3人は国王になったという物語から生まれた言葉で、「探しているものとは違う、別の価値あるものを思いがけず見つける能力・才能」「偶然の事象の中に意味を察知する力」を意味します。単に偶然に気づくだけには終わらず、そこからひらめきを得て成功や幸運をつかみ取る能力を指します。


●セレンディピティによる発見

セレンディピティは、偉人の伝記やサクセスストーリーの中でもよく語られています。思いがけない出来事を機に成功した、ふとした発想がチャンスを呼び込んだ、という類の話です。この力によってもたらされた科学的大発見やイノベーションの例は、数多くあります。

代表的なエピソードとしてよく知られているのは、イギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミングによるペニシリンの発見です。研究中に偶然混入してしまった青カビの周囲にだけ菌が増殖してない現象に気づいたことから、この抗生物質は生まれました。
何度も貼って剥がせる便利なポストイットは、強力な接着剤を開発している過程で思わずできた失敗作がもととなって誕生しました。簡単に剥がれてしまうというデメリットを逆転の発想から見つめて生まれた文具です。
電子レンジが作られたきっかけは、調理機器とは全く関係のないマイクロ波を発する機器の開発最中に、研究者のポケットの中のお菓子が溶けたことです。この変化が着目され、調理機器への活用を考えて生まれた家電です。

他にも、マジックテープ、カッターナイフ、コーンフレーク、ポテトチップ、チョコチップクッキーなど、身近にあるたくさんのものがセレンディピティによって誕生しています。

●新たな可能性への広がり

セレンディピティを意識すると偶然や思わぬ事象にも何かの意味があると捉えるため、予定していたプランに絶対的にこだわる必要はないと、心にゆとりを持って考えられるようになります。たとえ想定外の出来事に直面しても、大らかに向き合えるようになるのです。失敗に対しても意味のあるハプニングだと考えて前向きに臨めるため、逆境にも強くなるといえます。

セレンディピティでは、偶然や思わぬ事象が成功を導く可能性があると捉えるため、ゴールを絞って決め込む必要はなくなります。将来に向けて道を歩む際、自分のゴールや道のりを定め、意思を貫こうと構えるのは素晴らしいことですが、他の可能性を狭めてしまうようなケースも否定できません。ゆったり構えると広い視野が持てるようになり、自分に潜んでいる未知の才能やスキルが開花する可能性が高まります。

また、身の回りのさまざまな事象に新たな気づきや発想の素が潜んでいると考えるため、周囲の出来事や会話にも自然に敏感になります。すると、洞察力、観察力、創造力、連想する力などが自然に磨かれていく効果もあります。


●キャリアデザイン上の考え方

キャリアデザインにおいてもセレンディピティは重要な意味を持つと考えられています。キャリア論に関して、「計画的偶発性理論」というスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授らが20世紀末に提唱した学説があります。アメリカの社会的成功を収めた数百人のビジネスパーソンのキャリア分析調査をふまえたもので、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的な事象によって決定される。その偶然を計画的に設計し自分のキャリアを良いものにしていこう」と説いています。

つまり、キャリアの中には、避けることのできない偶然が8割もあることをあらかじめ認識しておき、その偶然を前向きに捉えてステップアップのチャンスとなるよう行動していこう、という考え方です。
例えば、自分の希望しない仕事を任されたり職場の異動があったとしても、そこに何かしらの意味があると意識して日々取り組んでいけば、結果的に貴重なキャリアとなるということです。偶然の場で得られる人との出会いや出来事は、次のキャリアを後押ししてくれる経験になります。

●未来より今に向き合う

偶然訪れるチャンスが目的や夢に直結しないものであっても、そのうちに突然結びつく、いつか間接的に結びつく、というのがセレンディピティの持つ力の大きな特徴です。目的や夢に向かって歩む姿勢は尊いものですが、遠くの一点だけを見つめるのではなく、目の前にふと訪れた偶然のチャンスをつかみ取ることにも意味があるのです。今を大切にしようという考え方です。

そのためにも、偶然のチャンスを見逃さずに、いつでも活用できるようにしておくことは大事です。まずは今、自分の身の回りで偶然起こっていること、目に留まったこと、聞いたことに「何か意味があるかもしれない」と意識するよう心がけます。それらをプラスに理解してみたり、チャンスと捉えて行動に移していきます。自分のアンテナを積極的に張り、何かを感じようとする姿勢が肝心です。

●5つのポイント

セレンディピティを高めるためのポイントは、次の通りです。これら5つはセレンディピティの起こりやすい人の行動特性でもあります。

セレンディピティを高めるポイント


5つのポイントを強く意識するためには、これまでに自分が経験したり、成功や幸福を感じた出来事を振り返ることが役に立ちます。例えば、「その出来事にどんな偶然が影響していたか」「その偶然が起こった時に自分はどう捉えて行動しどんな変化が生じたか」と、過去の経験を思い出します。
すると、セレンディピティが何かしら生かされていた経験に気づけます。それを手がかりにすれば、「あの時こう考えてこう行動したからいい結果が得られた。これからもそうしよう」と、5つのポイントを意識しやすくなり、セレンディピティを高めることができます。

5つのポイントと共に、自分が身を置く環境を意識することも大切です。偶然が起こる確率は、一人で過ごす空間よりも他の人と交流できる空間の方が高いためです。積極的に新しい出会いのある場に顔を出す、人を紹介する、といった行動をとるようにしてみてください。

セレンディピティを高めて、たくさんの偶然の事象や出会いから発想や気づきを察知できるようになれば、変化の激しい時代にも上手に適応し、より豊かで新しい仕事や人生のステージを切り開いていくことができます。セレンディピティの可能性を実感してみませんか。

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