(情報掲載日:2018年3月12日)


グローバル化が進むにつれて、国籍、ジェンダー、世代、人種、文化、宗教など、さまざまな違いに配慮した考え方や言動が重要視されるようになりました。ダイバーシティという言葉は、新聞やメディアでも使われ、広く知られていますが、仕事上も生活上も大切にしたい姿勢です。改めて、その意味や向き合い方について考えてみませんか。

●ダイバーシティの意味と考え方

ダイバーシティ(Diversity)は日本語では「多様性」「相違」と訳され、「いろいろな種類や傾向のものがあること、変化に富んだ状態」を意味します。さまざまな人々が共存、共生できる社会を創造していくための理念として、一般的に使われるようになりました。

ダイバーシティが指す対象は、性別、年齢、学歴、出身地、障がい、家族構成など判別しやすいものだけにはとどまりません。性格、嗜好、価値観、生き方、宗教といった内面的で曖昧なものも含みます。また、さまざまな勤務形態や雇用形態、スキル、キャリアといったビジネスパーソンとしての経歴や状態についても含みます。

これらのような多様性を、画一化させたり平均値でまとめたりせず、人それぞれに相違があることをまずはお互いに受け入れ、それが各個人の能力や価値として活かせる雰囲気、風土を作り上げていけば、全体としてのプラスが生み出される。社会や組織などの文脈のなかでダイバーシティを語る際にベースとなる考え方です。


●米国で生まれた概念

ダイバーシティという概念は、1960年代に繰り広げられた米国での公民権運動をきっかけに生まれました。女性や有色人種に対する差別の撤廃や人権を尊重するためです。雇用格差の是正を義務付ける法が整備されたこともあり、労働者による訴訟などのリスク回避を主な目的として、企業はダイバーシティを受け止めていました。

その後、ダイバーシティはCSR(企業の社会的責任)としての目的の一つにも位置付けられるようになります。やがて、米国の人口構成が大きく変化するという予測が発表されたのを機に、企業の考え方は強く変化し始めました。移民の人口比率の高まりは、労働者と消費者の比率にもそのまま反映されるため、企業成長において無視できない現象だと受け止めた結果です。経営戦略の目的の中でもダイバーシティを掲げるようになり、女性管理職の比率を高めたり移民を含めたさまざまな人材の積極的な登用を進めたところ事業の成功に結びつくケースが増え、重要な戦略の一つと見なされ今日に至っています。

日本では米国よりも遅れて、ダイバーシティへの意識が芽生えました。グローバル化が進むにつれ、海外企業のダイバーシティに対する姿勢から影響を受けたためです。男女雇用機会均等法が施行されたのは1980年代半ばです。障がい者や高齢者の雇用に関する法も次第に整備されてきましたが、ダイバーシティという言葉自体が広まったのは2000年代半ばと言われています。
2012年に、経済産業省は「多様性によるイノベーションの創出(ダイバーシティ・マネジメント)」「円滑な労働移動(多様な人材の能力最大限発揮)」を、人を活かす社会ビジョンの方向性として提示しています。同年に「ダイバーシティ経営企業100選」という取り組みもスタートさせました。これは、ダイバーシティの推進を経営成果に結び付けている企業の取り組み事例を広く紹介し、活動を広げることを目指したものです。当初の4 年間で174 社が選定され、引き続き実施されています(※)。

ダイバーシティは、人権尊重や法令遵守やCSRという観点にとどまることなく、企業が競争力を高めていくため、社会が成長していくために必要かつ有効な戦略として、今後も浸透が進んでいくと考えられます。

※:経済産業省「新・ダイバーシティ経営企業100 選」
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/diversity/kigyo100sen/

●企業内での変化

国籍を越えたビジネスが盛んな昨今、業界やグループがもともと持っているそれぞれの文化や風土といった多様性を受容、理解し、それを活かした戦略を立てる必要性は明白です。ダイバーシティを掲げた米国企業などによる経営戦略が成功し、グローバル化に適応できている実態から、ダイバーシティ・マネジメントが注目されています。ダイバーシティ・マネジメントとは、多様な人材を活かし、その能力が最大限に発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営を意味します。

ダイバーシティ・マネジメントのメリットとしては、新事業や革新を起こす力の源となること、マーケットでの優位性を向上させることのほか、優秀な人材の確保や従業員のモチベーションアップが考えられています。大学やコンサルといった各種研究機関からも、新たなプロジェクトの誕生と成果、利益への貢献、従業員満足度や顧客満足度の上昇などが見られると報告されています。

企業の具体的な取り組み例としては、ダイバーシティに対する意識を醸成するための教育や研修の導入、KPI(重要業績評価指標)への追加、推進チームの発足、雇用・管理職の男女比率目標の設定などが実施されています。 少子高齢化による労働力人口の減少という将来を見据えても、ダイバーシティ推進による女性・高齢者・障がい者・外国人など幅広い人材に富んだ組織づくりは、企業の持続的な発展のために重要なテーマだといえます。

●社会的な変化

ダイバーシティに対する意識の変化は、一般社会の中でも見られます。例えば、衣料洗剤や乳児用製品などのコマーシャルの出演者は以前は女性が中心でしたが、最近では男性も登場するようになりました。上司やリーダー役を女性が演じるドラマも増えています。男性は外で働き女性は家を守るといったような、昔ながらのステレオタイプ的な価値観に囚われない表現を求める社会風潮が強まってきたためです。
町を見渡せば、階段の横に坂道が作られたり、案内板に外国語の表示がいくつか並べられたり、信号機の点灯に連動して音が鳴ったり、といった整備が進んできました。高齢者、障がい者、外国人などの視点に立った配慮の表れです。

家族構成や働き方にさまざまな形が生まれ、LGBTも含めたジェンダーに対する情報が広がり、外国人観光客や日本で暮らす外国人が増えて、日常生活の中で接する人たちの属性が多種多様化していることは明らかです。そういった身近な生活の光景を反映して、テレビや雑誌などのメディア表現や公共空間も変化してきています。

●コミュニケーション上のポイント

ダイバーシティをコミュニケーションのなかでも実践するために、ビジネス上でも日常生活上でも中心となる姿勢は、どんな意見や考え方にも価値があると捉えることです。これを前提にして、心がけたいポイントは次の4つです。

1つ目は、どんな少数派の声にも耳を傾け理解に努めることです。全体の意見を取りまとめる際や決議が必要な際には多数派を尊重すべきでしょうが、最終決定の前に、少数派の意図や理由も聞いておきます。多数派の意見をより行き届いたものに改善・補完できるような内容を含むケースがあるためです。
2つ目は、少数派と多数派の間で生じた摩擦や対立を避けようとして、曖昧にしたり穏便なところでまとめようとしないことです。摩擦や対立の原因や背景に、イノベーションのヒントやアイデアが潜んでいるといえます。
3つ目は、会議への参加者やチームを構成するメンバーの編成にあたっては、できるだけ性別や年齢やキャリアなどの属性が偏らないように選考することです。似たような思考や背景を持つグループの中では発想も均一になりがちで、創造的な発展は起こりにくいためです。
4つ目は、個々の持つスキルの得意不得意よりも、組織力やチーム力といった全体力・総合力の発揮へと目を向けることです。ある人の弱みはほかの人の強みで補い、その代わりにある人の強みでほかの人の弱みをカバーすれば、それぞれの持つ特性が活かせるうえ、弱みに対するストレスも緩和できます。一人一人の持つ強みを重視して、全体として機能するような役割分担を考えます。

また、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)があると知っておくことは、コミュニケーション上の大切な視点になります。無意識の偏見というものは、誰しもが持っているものです。例えば、「最近の若者には忍耐力がない」「女性はきめ細かな仕事に向いている」「シニア層はITが不得意」といった思い込みなどを指します。生まれ育った文化や環境の影響を受けるのは仕方ないことで、知らず知らず悪意のない偏見を人は持ってしまうものなのです。寛大に受け止める姿勢も肝心です。

●新たな自分の可能性

ダイバーシティは自分自身にも好影響をもたらします。既成ルールや前例から解放されて柔軟性が高まり、新しい価値観の受容によって感性がより豊かになり、相手に対する寛容さや謙虚さが育まれます。
ダイバーシティの浸透した環境や組織のなかにいると、さらに好影響がもたらされます。お互いの個性を尊重し合う文化、お互いを認め合う風土は、個々のモチベーションや前向きな気持ちを高め、ポテンシャルを引き出します。ひいては、個人のスキルや業績の向上にもつながっていくのです。

グローバル化の進む社会においては、ダイバーシティは欠かせない理念です。人としてもビジネスパーソンとしても、成長を促す大きな原動力になるといえるダイバーシティに、改めて向き合ってみませんか。

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