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(情報掲載日:2015年5月11日)

いまを勝ち抜く人間力

香りをさりげなく日常にとりこむ

VOL.40

風薫る5月、新緑や花の香が漂ってくる心地よいシーズンが到来しました。風が運ぶ自然の香りを楽しむだけでなく、最近は、部屋を香りで満たすディフューザー、アロマキャンドル、香り機能付きの空気清浄機も登場し、日常的な「香り」に対する意識が次第に高まってきています。蒸し暑い季節になると気になる臭い対策用に、消臭スプレーや消臭石けんが店頭に並べられるほどです。
今や「香り」は、オフィス空間やビジネスにも活用されるまでの存在感を見せるようになっています。そこで、日本古来の教養として受け継がれて来たお香文化も含め、「香り」の歴史、効果、取り入れ方をご紹介します。

香りの歴史

●クレオパトラやナポレオンも愛用

香りを表す英語「perfume」の語源はラテン語にあり、原語は「煙によって」を意味します。これは、香りが煙から拡散されることに基づくものです。「天へ」と立ち上る煙から香ることから、西洋においても東洋においても、香りにはそもそも宗教的な意味合いがありました。現在も、儀礼の際や寺院などの中に香りが漂っていることは、周知の通りです。
また、香りは、入浴が日常的でない時代の臭い消しや、食料品の防腐・防臭・香り付けとして、希少価値のある香りは権威を表す手段としても、使われてきました。他にも幅広い効能が知られていたことは、「クレオパトラは、バラの香りの力も借りて時の権力者たちの心を動かした」「ハンガリー王妃は、ローズマリーの香水によって病気を治し若返った」「ナポレオンは、士気を高めるために兵士たちにもコロンを配った」などの言い伝えからも、想像に難くありません。


●平安貴族の教養・たしなみとして

日本に香りが伝わったのは飛鳥時代、浜辺に流れ着いた香木がきっかけだと言われています。香木は日本では自生していないため、貴重な輸入品となりました。その後、平安貴族たちは、香りを着物や部屋に焚き付けて消臭する実用だけに飽き足らなくなり、自分好みに調合した香りを作り始めます。やがて、香りは和歌や雅楽や文字と並び、知性や感性を表現する教養やたしなみへと位置付けられるようになりました。家伝の秘法により香りを調合し披露して優劣を競う「薫物(たきもの)合わせ」も生まれ、「源氏物語」にもその記述は見られます。
香りの効用については、平安時代にまとめられた日本現存最古の医学書の他、「一休さん」の愛称でも知られる僧、一休宗純が記した「香十徳」によっても伝えられています。「香十徳」には、香りは感覚を研ぎ澄ませてくれる、心身を清らかにし汚れを除いてくれる、良い目覚めを与えてくれる、などと記されており、単なる香りに留まらない価値が認められていたことが分かります。


●武士文化がつくりあげた「香道」

平安貴族たちによる「薫物合わせ」が原型となり、室町時代には文化として「香道」が生まれ、武士たちも香りを楽しむようになりました。戦国乱世に入ると、武士は戦の際に衣服や鎧、兜にまで香を焚き込み出陣したと言われています。これは、嗜好としての香りではなく、精神統一を図ったり士気を鼓舞する効果を求めたためと考えられます。また、首を奪われたのち敵将に差し出された時に不快感を与えないように、という武士の美学も込められているようです。
茶道と共に「香道」は武家の間で盛んになり、香木は収集されるようにもなりました。その最たるものが東大寺の正倉院の宝物に保存されている香木です。約1.5mの木片には足利義満、足利義政、織田信長などによって削り取られた跡が残っています。名香木の木片は、権威を示す象徴と捉えられていたためです。徳川家康も熱心な香木の収集家であったことが知られています。

生活の中に取り入れたい香り

●五感の中で一番速く伝わる「嗅覚」

人間の感覚には、嗅覚、視覚、聴覚、触覚、味覚の五感があります。嗅覚以外の感覚は、いったん脳の表面にある大脳皮質を経由しますが、嗅覚だけは大脳辺縁系に直行します。このため、嗅覚が情報として脳に伝わる時間は一番速いと言えます。また、大脳辺縁系は本能的・原始的な反応を司っているため、嗅覚は、記憶や情動などに強い影響を及ぼすと考えられています。ある香りを嗅ぐと思い出が蘇ったり、料理の匂いがすると急に食欲が湧くのはそのせいなのです。
香りの成分は、鼻から伝わるだけではありません。皮膚や肺からも身体に入り込み、体内に吸収・分解されて血液を巡り、さまざま器官や組織に対して働きかけます。そうした作用を活かした治療法は、中国やインドの医学などで長年継承されてきています。日本でも知られるようになったアロマテラピーは、西洋で伝承されてきた植物の芳香成分による療法です。


●精神的な効果、身体的な効果

「ラベンダー」や「ペパーミント」などの植物から抽出された香り成分から作られるアロマグッズや香水には、リフレッシュ、不安や緊張感の緩和、鎮静、リラックスの他、成分ごとに細かな効果が伝えられています。また、「伽羅(きゃら)」や「白檀(びゃくだん)」などの香木を組み合わせて作られるお香には、リラクゼーションの効果があることが、実験によって示されています。
お香にも漢方と同じような薬効があると言われており、鎮静作用や血行促進作用などが期待できるそうです。アロマや香水も、血行促進、消化不調改善、老廃物の排出促進、疲労回復など、さまざまな効果を持つと言われています。

香り効果の一例(※効果には個人差があり、絶対的なものではありません)

●香りとの付き合い方

基本的には、自分自身が心地よく感じる香りがよいとされており、選ぶ際のルールは特にありません。逆に、心地よさより効果を優先して探せば、新たな香りに出会える可能性もあります。取り入れ方は、香水をつけたり部屋にお香を漂わせるだけに限りません。ハーブティー、入浴剤、ヘアケア・スキンケア用品、洗濯用の柔軟剤など、さまざまな使い方と使い分けが楽しめます。また、男性向きの香り付き製品も昨今増えており、女性に限らず男性も香りを楽しめるようになりました。
ただし、身に付ける香りにはTPOの配慮が大切です。料理や飲み物の香りを楽しむ飲食店や、法事など厳かな場、病院では控えるべきでしょう。また、「スメルハラスメント」「香害」も考えて、大勢の人が集まる場や長時間閉じこもる場では、刺激の強い香りや個性的な香りは、避けることが賢明です。

仕事にも活用したい香り

●企業でも進む香りの研究

嗅覚は5つの感覚の中で、一番研究の遅れている分野です。2004年にノーベル医学生理学賞を受賞したアメリカ人研究者による「嗅覚の仕組みの解明」は、鼻の中にある臭いを識別する受容体タンパク質の実態を明らかにし、受容体から情報がどのように脳に送られるかを突きとめました。そのため、最も謎に包まれた人間の感覚の理解を高め、大きなブレークスルーになると評価されました。これを機に、嗅覚の研究は、心理学から料理まで幅広く進展していくと期待されています。
国内の各企業においても香りをテーマにした研究は進んでいます。例えば、柔軟剤の香りが人物の印象形成に及ぼす影響、香りが部屋に与える印象、香料の心理評価、香りにおける心理学の「単純接触効果」、加齢臭ケア技術、肌の状態を良好に保つ香り、皮下脂肪細胞の脂肪合成を抑え中性脂肪の蓄積を防ぐ香り、暮らしの中の空気の質改善、大気汚染低減、抗酸化機能、森林浴の香り分析などがあります。「香り」への注目は企業の中でも高まっているのです。


●対人コミュニケーションでの影響

対面する人間の心理や思考、行動に影響を与える香りの研究も進んでいます。ある調査によると、香りは第一印象を大きく左右しているという結果が出たそうです。香りの情報は、五感に占める情報量が圧倒的に大きいと言われている視覚情報を覆すほどの効果を持ち、さらに、強い記憶をも残すのです。また、嗅覚は、思考や判断などの高度な脳領域をコントロールすることも分かっています。
こういった香りの作用や、香水を身だしなみとして習慣的に使っている外国人ビジネスマンとのコミュニケーションが増えてきていることからも、コミュニケーションに上手く活用できるアイテムとして、香りを意識的に取り入れてみてもよいのではないでしょうか。
手始めに、ソフトでナチュラルな香りを選び、鼻から遠い足首や膝の裏側につけてみてはいかがでしょう。香りは下から立ち上りますから、ほのかに薫る程度からまずは始めることをおすすめします。


●職場やビジネスシーンへの活用

香りを会議室や受付に漂わせたり、ブランディングやマーケティングに香りを取り入れている企業も既に見られます。特に、ホテルや流通、サービス業においては、空間演出としてロビーやサロン、パウダールームでの活用が増えてきました。海外で実施されたある調査には、香りによって集客や売上が伸びたデータもあり、ビジネスにおける実績も認められています。
個人が仕事の場面で使える香りとしては、香水の他に、名刺にかすかな香りを付ける名刺入れ用のお香、墨や香水の香りのするインク、手紙に添えるお香などがあります。残り香によるさりげない余韻について徒然草に「追風用意」という記載があるように、これらのグッズを使った品位ある心遣いは、リレーション作りにも一役買ってくれるかもしれません。

香道においては、香りを「嗅ぐ」のではなく「聞く」という、日本独特の表現を使い続けています。嗅覚そのものだけではなく他の四感を覚醒させることで五感を研ぎ澄ませ、香りを通じて心で感じるというニュアンスが、「聞く」には込められているのです。このような奥深さと広がりを持つ香りを、日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

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