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(情報掲載日:2013年9月20日)

いまを勝ち抜く人間力

「フロー状態」を活用してビジネスで成果を上げる

VOL.21

フロー状態とは、楽しさのあまり、その対象に没入して時間や空間の感覚を失ってしまう状態のことです。それは極度に集中力を高めたときに起きる現象で、非常に生産性が高く、しかも充実感を味わえる至福の体験と言われています。このフロー状態をビジネスや日常生活に応用する方法をさぐります。

フロー状態に入ると時間感覚を超越できる

●スポーツ選手がしばしば体験する特異な時間感覚とは

勝ち負けの結果がシビアに問われるスポーツの場面では、時間が止まったように感じられたという話をよく聞きます。
たとえば、初優勝がかかった高校野球の決勝戦で、いよいよ9回の裏、1点差で負けているチームが2アウトに追い込まれ、最後のバッターがなんとか出塁しようとピッチャーの投げるボールを待ち構えると、目の前でボールの動きが止まったように見え、そこに吸い付けられるようにバットが自然と動いた。そして、打球は高く舞い上がり、外野席へ。見事な同点ホームラン……。
スポーツニュースではそういった瞬間の映像をスローモーションにして、極度の緊張感をドラマチックに表現しようとしますが、当事者であるバッターは本当にそのような時間を超えた感覚を味わうというのです。
高い集中力をもって目標に向かって挑み、それをストレスに感じるというよりもむしろ楽しんでいるときに人間が体験する特異な感覚のことをフロー状態と呼びます。なぜ、「フロー(流れ)」という言葉を用いたのか、命名者であるハンガリー出身のアメリカ人心理学者・チクセントミハイは次のように著書(※1)の中で触れています。
「さまざまな年齢、性別、職業の人々に対し、趣味やスポーツなどの何かに取り組んで最高に楽しさを味わっているときの感覚について尋ねたところ、その多くの人が"外部の力で運ばれていったり、エネルギーの流れで努力せずに流されていくというような感覚"と述べていたそうです。」
フロー状態とは、時間と空間を超えて、よい結果へと導かれていくときの至福の感覚と言えるでしょう。


●無我夢中で没入したときの充実感がフロー状態

スポーツのような厳しい勝負の世界以外でも、フロー状態に入ることができます。だれでも体験できるのは、映画を見たり本を読んだりしているときに、我を忘れるほど物語に没頭することです。
たとえば、映画を見た後に主人公の気持ちに入り込んでいる自分に気づいたことはないでしょうか。
このような没入感や充実感を仕事や勉強の場面で味わうことができれば、高い成果を上げることができるかもしれません。それは「寝食を忘れて取り組む」状態であり、途中で投げ出したくなるような感じは全く無く、仕事や勉強をしているプロセスそのものが楽しく、充実しているので、知らず知らずのうちに良い結果へ導かれていくような精神状態です。
では、どのようにすれば、いつでも望むときにそのような精神状態に入ることができるのでしょうか。

※1  M.チクセントミハイ著『フロー体験とグッドビジネス』(世界思想社)

フロー状態に入る条件とプロセス

●内発的動機で行動するときにフロー状態に入れる

フロー状態に入るときの条件およびフロー状態に入るプロセスについて、チクセントミハイは次の8つのキーワードを用いて説明しています。

(1) 目標が明確である
(2) 途中経過について迅速なフィードバックが得られる
(3) チャレンジと自分のスキルがともに高いレベルで釣り合っている
(4) 集中力が深化し、無我夢中の状態になり、至福感が味わえている
(5) 現在取り組んでいることに集中し、過去の後悔や未来への不安が全く思い浮かばない
(6) 自分自身の感情や行動のコントロールができている
(7) 時間感覚が変化する
(8) 自我を喪失する

まず、フロー状態に入る大前提として明確な目標をもつことが必要です。その目標とは、お金や名誉、地位を与えてもらうための取引のような「外発的動機」に基づくものではなく、本当に好きなこと、やりたいこと、意味を感じて取り組むことといった自主的・自律的な「内発的動機」であることが条件です。
ただ、何が何でも目標達成のためにがんばるということとは違います。フロー状態に入ると、もはや目標にとらわれなくなります。つまり、目標を達成しないと困ったことになるとか、罰せられるという恐れや不安は全くなく、深い集中状態になります。これは遊びやゲームに夢中になっているときに似ています。遊びは何らの成果を得るためというより、好きだからやるものでしょう。もちろん、仕事は遊びではありませんが、フロー状態とは「遊んでいるかのように仕事を楽しんでいる状態」と言えるかもしれません。このことは、オリンピックや国際試合で活躍するアスリートの多くが、「試合を楽しめました」と語ることからもわかります。

2番目のフィードバックについては、一手ごとに効果が分かるチェスや将棋のようなゲームを想像すると分かりやすいでしょう。仕事の場面では、チームの仲間や顧客の反応がそのつどわかる状態にあることや、売上数字などの数値結果が目に見える状態であることがあてはまります。個人作業の場面では、考えたことを文章や図表などにアウトプットしてから客観的に眺めたときに「この調子だ!」と思える感覚、手応えのようなものです。


●チャレンジとスキルが釣り合う状態とは

3番目の「チャレンジと自分のスキルがともに高いレベルで釣り合っている」について、チャレンジとスキルの釣り合いの状態を表したのが下の図です。

チャレンジとスキルのバランスによる心理状態の変化
チャレンジとスキルのバランスによる心理状態の変化

図の縦軸は「チャレンジ」の高低を表し、横軸は「スキル」の高低を表しています。それぞれについて、低・中・高の3レベルに分けると全部で8つの組み合わせができます。
横軸について見ていくと、「チャレンジ」「スキル」ともに最低レベルのときは、何もできないし、やろうとしない言わば「無気力」の状態です。そこから「スキル」が中レベルに伸びたときに「チャレンジ」が依然として低レベルであれば「退屈」を感じるでしょう。さらに「スキル」が伸びて高レベルになったときは、いつでも「チャレンジ」の度合いを高くしようと思えばできるのに、それをしないのは、ゆとりと余裕のある「くつろぎ」の状態と解釈できます。
「くつろぎ」の状態から少し「チャレンジ」のレベルを高くして、自分の「スキル」のレベルからすると「ほどほど」であれば、無理せず、かといってサボってもいない、「コントロール」の状態と言えるでしょう。さらに「チャレンジ」のレベルを高くして、自分の「スキル」を超えるレベルにすると、高度な集中力が必要になりますが、だからといって苦しい状態ではなく、全力を尽くしきっているような充実感、至福感がある状態が「フロー状態」であるとチクセントミハイは説明しています。
これは世界記録にチャレンジしているアスリートの心境、あるいは、失敗のリスクがゼロではない難関の手術に挑むベテラン外科医の心境ともいえるかもしれません。
多くの人は無理をせず、リスクを避けて「コントロール」のレベルにとどまろうとします。しかし、その域を超えて一歩踏み出したときに「フロー状態」が訪れると考えられます。


●集中力が深化し、無我夢中の状態になる

チャレンジとスキルが釣り合った状態で仕事や趣味などの好きなことに一定時間以上取り組んでいると、徐々に集中力が深化します。やがては無我夢中の状態になり、至福感が味わえます。これがフローに入る条件の第4番目です。
無我夢中になっていると、もはや過去の後悔や未来への不安が全く思い浮かばなくなってきます。つまり、できなかったことを思い悩んだり、やる前から失敗を恐れたりしているようでは、フロー状態に入っていけないでしょう。現在、取り組んでいることに集中するというのが、フローに入る条件の第5番目です。


●次になすべきことが直観的にわかり、自然と身体が動く

フローに入る第6番目の条件「自分自身の感情や行動のコントロールができている」ということについて、チクセントミハイはロッククライマーの体験を用いて説明しています。急峻な崖を這い登るロッククライマーは、次の一挙手一投足に命がかかっています。しかし、「あの岩をつかんだときに崩れて落ちる危険性は○%」などとそのつどリスクを計算しているわけではなく、直観的に次につかむ部分がわかるといいます。フロー状態に入ると、次になすべきことが直観的にわかり、自然と身体が動くということを表しています。


●時間感覚が変化し、自我を喪失する

フロー状態がさらに深まると、時間感覚が変化します。これが条件の第7番目で、時間が止まって感じられたり、その逆に一瞬のことに感じられたりします。
また、第8の条件にあるように、自我を喪失するような感じを味わいます。ロッククライマーの体験では、「自分と岩が一体化して、境界がわからなくなるような境地」を感じられるそうです。
この2つの条件は、心理学でいう「変性意識状態」であると考えられます。このような意識状態にあるとき、人は自分の能力やそれまでの人生経験を超えたことを成し遂げられるのかもしれません。

仕事でフロー状態を生み出すには

●仕事でフローが起こらない理由

上記の8つの条件を満たすのが、フロー状態です。しかし、現実には次のような障害があり、会社などの組織の中でフロー状態に入ることを難しくしているようです。

フロー状態に入れない理由

(1) 仕事に明確な目標と意味づけがほとんどない
(2) 適切なフィードバックがなされない
(3) 自分のスキルと与えられる仕事がうまく適合していない
(4) 時間管理は外部のルールによって決められる


●フロー状態に入りやすくするために

上記のような障害を克服することができれば、仕事上でフロー状態に入りやすくなると考えられます。
まずは1日の始めに「今日の仕事の目的と意味づけ」を明確化する時間をもち、そして1日の終わりに「全身全霊で仕事に打ち込み、時間を忘れて没頭し、心から楽しめた瞬間があっただろうか」とふりかえる時間を持つことから始めてみると、「フロー状態」に入る自分なりのヒントが得られるかもしれません。
仕事のフィードバックを得るには、つねに自分の仕事ぶりを見守り、良い点を認めて、潜在能力を伸ばしてくれる名コーチのような上司が必要でしょう。顧客の反応や売上数値などの数値指標もフィードバックになりますが、コーチがいれば、つねに自分の仕事ぶりを見守り、良い点を認めて、潜在能力を伸ばしてもらうことができます。そして、自分のスキルをみた上で、フロー状態に入るに適したレベルの仕事を与えてもらうことが可能になります。優れたアスリートがフロー状態を経験できる最大の秘けつは、名コーチの存在かもしれません。
仕事の時間管理については、管理職がフロー状態のメリットを理解し、フロー状態に入りやすい環境づくりを進めていくことが必要でしょう。実際、フロー状態をテーマにした教育・研修をまずは管理職向けに実施し、次に現場の担当者向けというように段階的に導入を図る企業が見られます。制度面では、フレックスタイム制、裁量労働制、在宅勤務制など、自己管理に委ねる部分が大きい制度のほうが、そうでない管理方法よりもフロー状態をより実現しやすいでしょう。
ひとことでまとめると、セルフ・マネジメントのできる自律的な人間で、何か熱中できる好きなことを持っていて、その分野についてつねにスキルのレベルを高めていける人が、フロー状態に入る可能性の高い人であると言えそうです。

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