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(情報掲載日:2013年8月20日)

いまを勝ち抜く人間力

話し上手よりも聞き上手がうまくいく

VOL.20

一般的には、ハードなネゴシエーションができる人間が競争社会を勝ち残れるイメージがありますが、本当でしょうか。最近では、交渉力以上に傾聴力が重要だと言われます。その理由と、傾聴力を身につける方法について考えてみましょう。

口下手ならば聞き上手を目指そう

●口下手な人の共通点は?

「話し上手」と「聞き上手」、あなたはどちらですかと尋ねると、「私は両方とも上手ではない」という人か、「私は話し上手じゃないので、消去法で聞き上手」という人が多いようです。
考えてみれば、「口下手だ」とか「話し下手だ」という言い方はするけれども、「耳下手」とか「聞き下手だ」という言い方は、普通はしません。なぜでしょうか。
多くの人は、「話は上手なほうがいい」と思っているけれども、自分の聞き方が上手かどうかはあまり気にしていないのではないでしょうか。
確かに、日常生活の中では口下手で損をした気分になったり、周囲の人に気まずい思いをさせてしまうことが多いかもしれません。たとえば、口下手な人は次のようなことに思い当たるのではないでしょうか。

「口ベタ」な人の共通点

1) 途中で話題が尽きてしまい、会話が途切れてしまう
2) 自分が話し出すと、何となくその場が白けた雰囲気になってしまう
3) 場を盛り上げようと思って話しても、上手くいかない
4) 自分が夢中になって話すと、相手に退かれてしまう気がする
5) うまく表現できなくて、誤解されてしまう気がする

以上の5項目をひと言でまとめるとしたら、「会話の中で最初にボールを投げるピッチャーとしては下手だ」ということではないでしょうか。会話はキャッチボールのようなものだと言われます。投げては受け、受けては投げの繰り返しです。もしも最初に投げる役が苦手だったら、最初はキャッチャー役に回ることを考えてみてはどうでしょうか。

●口下手な人ほど販売成績がいいというのは本当か?

営業の現場では「口下手な人ほど販売成績がいい」とも言われます。それどころか、「口が上手い人は信用できない」とさえ言われます。なぜでしょうか。
「口が上手い」というのは、ともすると、口先だけでものを言う、誠実さがない、一方的だ、下心がある……そんな否定的なイメージが先行します。そのため、相手はだまされるのではないか、丸め込まれるのではないかといった、警戒心を持ってしまうようです。
実際、トップセールスになった営業職の人に話を聞いてみると、「実は私は人見知りで口下手だった」という人が少なくありません。だからといって、努力して口下手を克服し、口が上手くなったからトップセールスになれたというわけでもないようです。
最初にボールを投げるピッチャー役として優れているというよりも、ボールを受けるキャッチャー役として優れているような人が実は多いのではないでしょうか。
口下手だった人がトップセールスになれた理由を聞いてみると、次のようなことを挙げる人が多く見られます。

1)あいさつをする
日ごろから誰に対しても分け隔てなく気持ちの良いあいさつをする習慣を徹底させた

2)メモをとる
相手の話を聞くときは、ただ耳で聞くだけでなく、ノートを常に携帯し、メモを取る習慣をつけるようにした

3)質問をする
わかったふりをしないで、とくに成功事例などの良い話を聞いたときには「なぜそうなるのだろう」という関心をもち、わからないことは質問するようにした

4)話は最後まで聞く
相手の言葉を最後までよく聴き、その「本意」を知ろうとする習慣をつけた。早合点したり、自己流の解釈をしないように心がけた

トップセールスと聞くと、エネルギッシュに攻めるタイプのように思いがちですが、実はこのように「相手に合わせるタイプ」のほうが多いとも言われます。

●相手の要望を聞き出すほうが効果的

一方的な「攻め」の営業には限界があるのではないでしょうか。多くの場合、攻めようとすればするほど顧客から退かれてしまいます。消費者契約法では、相手に圧迫感を与えるようなやり方は違法であり、販売契約を取り消すことができるとされています。
このように、ビジネス上のコミュニケーションにおいては、一方的に自分の言いたいことを話すやり方だけでは通用しづらいのです。それよりも、相手の要望を聞き出し、明確化し、それを具体的なサービスや商品に結びつけて提案し、相手に選んでもらうようなやり方のほうが、結果として成約に結びつきやすくなってきています。
無理に話し上手になろうとするよりも、順番としては聞き上手になることが先決で、そのほうがコミュニケーションはうまくいくと考えたほうが良いでしょう。

プロに学ぶ聞き上手の心得

●聞き上手は「聞く」と「聴く」をうまく使う

では、どうすれば「聞き上手」になることができるでしょうか。日本語では、「聞く」と「聴く」で、それぞれに意味が異なります。英語でもこの2つは使い分けて用いられています。

2つの「きく」の違い
2つの「きく」の違い

上記のように、「聞く」は質問することと、聞いて知ること、「聴く」は耳を傾けて熱心に聴くことという使い分けがされています。また、「聞く」は主に左脳を使う認知のはたらきであり、「聴く」は主に右脳を使う感覚や感情の働きであるというちがいがあります。
「聞き上手」というときには一般に「聞く」を使いますが、その中味としては、「聞く」と「聴く」の両方が上手に使えることであると考えられます。つまり、早合点や思い込みをすることなく、わからないことは質問する、幅広く情報収集をして知識として聞き知る、相手の話に熱心に耳を傾けて本意を聴き取る。このすべてができたときに、本当の意味で「聞き上手」であると言えるのではないでしょうか。

●傾聴は、誠実さ、受容、共感的理解が決め手

「聞き上手」になるためのコツは、傾聴のプロであるカウンセラーから学ぶことができます。カウンセリングにはさまざまな療法がありますが、最も基本となるのはカール・ロジャーズが提唱した来談者中心療法であり、これは、助言や指示といった「プッシュ型」の技法が中心であった従来のカウンセリングに対する批判から生まれました。
来談者中心療法は相手から引き出す「プル型」の技法であり、そのときのカウンセラーの態度としては次の3つが重要であるとされています。

傾聴するときの3つの心構え
傾聴するときの3つの心構え

一般社団法人日本産業カウンセラー協会『産業カウンセラー養成講座テキスト』より作成

日常生活においては、つい、上記の3原則の逆をしてしまいがちです。下表のような、不適切な聞き方をしないように心がけたいものです。

×自己一致しない聞き方
不誠実な聞き方では、相手の心をつかむことは難しいでしょう

×受容しない聞き方
自分の価値観や準拠枠で批判的に聞いてしまうと、相手の本当のニーズや言いたいことが見えてきません

×共感しない聞き方
相手の内的世界に共感するような聞き方をしないと、うわべだけの表面的な理解にとどまってしまいます。相手を真に満足させる提案をすることは難しいでしょう

●苦情応対にも傾聴のスキルが役立つ

苦情応対の場合にも、カウンセラー的な聴き方が適していると言われています。
早く解決しよう、丸く収めようといった不誠実な態度では、かえって相手の反感を大きくしてしまいます。しかし、相手がどのような問題に対してどのような不満を持っているのか、その内容を共感的に聴き取ることにより、相手の怒り、不満、失望といったネガティブな感情を癒やすことができるでしょう。
なぜなら、人はもともと、「分かってもらいたい」という気持ちを持っているからです。理解されないことや、無視されることがいちばんつらいのです。
もちろん、苦情の原因になった問題を解決するには、単に聴くだけでは不十分です。まずは、担当者に事実関係を確認し、善後策を提案してみる、二度と同じような事態を起こさないように組織全体で対策を立て、そのことを報告するといったプロセスが必要です。しかし、最初の聴き取りがうまくいかないと、次のステップへ進むことはできないでしょう。

聞き上手は引き出し上手である

●応答力と質問力がカギになる

では、「傾聴」を実践するときには、どのようなスキルが必要でしょうか。カウンセラーの養成訓練では、聞き手と話し手の役割に分かれて模擬面接を行い、そのときに聞き方が良かったのか悪かったのかを観察者や指導者が観察して聞き手にフィードバックする方法が一般的です。
評価のポイントは、話し手の満足感です。聞き手の技能が優れていれば、話し手は「よく聴いてもらえた」「話すうちに整理ができた」「気づきが得られた」「問題解決の糸口が見つかった」といった満足感を味わうことができます。
そのような満足感をもたらすためのスキルとしては、応答力と質問力がカギになります。

●相手の気づきを促す3つの応答技法

応答には、うなずき、相槌などの単純応答や、相手の話に出てきたキーワードを捉えて反復する応答技法があります。応答技法は、@事柄への応答、A感情への応答、B意味への応答の3つに分けられます。
うなずき、相槌などの単純応答は必要不可欠ですが、ただそれだけでは、「私の言ったことを本当に理解してくれているだろうか」という疑問を相手に抱かせてしまいます。
そこで、相手の話が一段落した合間を見計らい、それまでの内容を要約するようなかたちで、重要なキーワードを捉え反復することによって、「私はあなたの言いたいことを深く理解しています」と示すことができ、また、最も重要なテーマを浮き彫りにすることができます。

カウンセラーが用いる3つの応答技法
カウンセラーが用いる3つの応答技法

●「深める質問」で課題を明確化する

ただし、応答だけでは先へ進まないケースもあります。相手の話があいまいである場合は、早合点をせずに「深める質問」をして明確化することが必要です。
カウンセラーが最もよく使う質問は、「…と、おっしゃいますと?」という言葉です。なぜ、この質問が有効かというと、第1に短いフレーズなので相手の「話したい」という気持ちや流れを妨げないから、第2に相手の漠然とした思いを明確化するから、第3にその明確化の過程で新たな気づきが得られるからです。
注意したい点としては、事柄の因果関係を問う質問にこだわるのではなく、「なぜ、そう感じたのか」といった、相手の感情の動きを重視し、尊重することです。事柄にこだわりすぎると、相手の気持ちから離れていってしまいます。事柄そのものよりも、事柄の背景にある相手の考え方、感情、価値基準などを明らかにすることによって、お互いの理解を深めることができ、相手にとっては「よく聴いてもらえた」とか「親身になって一緒に解決策を考えてもらえた」という満足感につながるでしょう。

以上のように、日常生活はもちろん、ビジネスの場面でも、話し上手であるよりは、聞き上手であるほうがコミュニケーションはスムーズに運ぶことが多いともいえます。話し下手だと苦手意識を持っている場合、まずは、相手の話をじっくり聞くことから始めてみてはいかがでしょうか。

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