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(情報掲載日:2013年6月20日)

いまを勝ち抜く人間力

アンガーマネジメントのススメ

VOL.18

人間だれしも持っている喜怒哀楽の感情の中で、一番やっかいなのが、怒りの感情です。他の感情と比べると、攻撃的な行動を伴うことが多いため、人間関係の中やビジネスの場面で問題になるわけです。ささいなことから発展し、関係修復が難しい事態になることさえあります。経済環境が激しく変化する中で、職場のイライラ感が高まっています。一見、おとなしそうな人が怒りの感情を抑え込めずに「キレる」こともあります。消したり、抑え込んだりすることが難しい怒りの感情を上手にマネジメントしながら、生き生きと元気に働く方法を探ってみましょう。

アンガーマネジメントはストレス社会を生き抜くための「心のダイエット」

●怒りの感情は攻撃的な行動につながりやすい

誰もがイライラ感を募らせているストレス社会を生き抜くには、職場以外でも怒りのコントロールが不可欠になっています。怒りは他の感情と比べると、コントロールが難しいからです。
大声を出す、机をたたくなどして物に当たる、ひどくすると人に暴力を振るうといった攻撃的な行動を伴うことが多いため、人間関係の中やビジネスの場面で問題になるわけです。
巷では、見ず知らずの人に突然、暴力を振るう人が増えています。「自分はそんなことをしない」と言い切れるでしょうか。「もう一度言ってみろ!」「何だと、バカヤロー!」などと駅や街頭で怒りを爆発させている声の主を見れば、分別盛りの中高年、ということはもはや珍しくなくなりました。
かつての日本では、お互いに気配りすることでトラブルを避けようとする「美風」がありましたが、最近では「気配りが足りない!」と突然、キレて暴力を振るったなどという事件が起きるようになりました。
暴力を振るわないまでも、最近は、大声で部下を注意すると「パワハラだ」と言われかねません。訴訟問題に発展することもあります。

●アンガーマネジメントは1970年代にアメリカで開発された

日本人よりも攻撃的で、怒りっぽい人が多いように見えるアメリカでは、1970年代以降、アンガーマネジメントと呼ばれる感情の制御法が開発され、広く普及するようになりました。
アメリカでは怒りっぽい人のことを「タイプA」と呼んでいます。Aは「アグレッシブ」の頭文字で、このタイプAの人は心筋梗塞などの心臓疾患にかかる率が他の人よりも高いことが分かっています。
アンガーマネジメントはまずビジネスマンや弁護士向けに開発され、いまでは子ども向け教材もあり、学校教育にも採り入れられています。
アメリカでは「肥満の人や喫煙者は出世できない」といわれているのと同様に「キレる人」が出世できないといわれています。自分をコントロールできない人は対人関係でトラブルを起こし、周囲に迷惑をかけるリスクが高いと判断されるからでしょう。出世しようと思ったら、怒りのコントロールは不可欠――日本でもそう遠くない未来、同じことがいわれるようになるかもしれません。

●「アンガーマネジメントはダイエットに似ている」

「アンガーマネジメントはダイエットに似ている」と、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会のホームページには書かれています。
ダイエットをしないと肥満から生活習慣病につながり、命を縮めたり障害をもたらしたりするリスクがあるのと同様に、怒りのコントロールをしないと周囲との軋轢(あつれき)を生み、職を失ったり、ひどくすると社会的生命を失うリスクさえあると考えられるからです。
アンガーマネジメントは方法論がすでに確立されているので、そのとおりに従えば、だれでも怒りの感情を上手にコントロールできるようになるそうです。

●リラクゼーションよりも即効性があり、誰でもできる

時には怒ることも必要だけれども、上手に怒らなければ相手を傷つけ、自分自身が傷つくことさえあります。怒りの感情を抑え込むというよりも、感情をうまくコントロールし、「上手に怒る技術」がアンガーマネジメントであると言ってもいいのかもしれません。
ストレスコントロールの方法としては、アロマテラピー、岩盤浴、ヨガ、瞑想など、心とからだをリラックスさせる方法が採り入れられてきましたが、その一方で、怒りのエネルギーを抑え込む方法は、まだ、一般には浸透していないようです。
アンガーマネジメントは、特別な道具を使わず、場所も選ばずにできます。ふだんからの「心の持ちよう」で自分を変えるノウハウです。

怒りの感情が発生するメカニズムを知る

●脳は怒りを抑えもするが、増幅させもする

人はなぜ、怒りを感じると攻撃的になり、時には社会的生命を失うほどの過ちを犯してしまうのでしょうか。それには、「脳」が関係しています。
人間の脳には、「古脳」と呼ばれ、人間として進化する以前からある部分が脳の内側にあります。これを大脳辺縁系といいます。大脳辺縁系で、怒りや恐怖などの原始的な感情が生み出され、敵が襲ってきたら反撃するか、逆に恐怖にかられて逃げ出すかといった単純な反応を起こします。
他方、人間が進化の過程で発達させてきた脳の外側の部分が大脳皮質です。冷静な人であれば、誰かの発言にカーッとなっても「ここでケンカになったら自分は相手に勝てない」とか、「殴ったら傷害罪に問われるのではないか」などと熟考します。
怒りを行動化させてしまったら損だということを経験上学び、怒りを抑制するのです。これが大脳皮質の働きによるもので、古脳にブレーキをかける役割を果たします。
しかし、大脳皮質がアクセルをかける場合もあります。怒りをどんどん増幅させ、根深いものにしていくのです。それが「恨み」です。あれこれ考えているうちに仕事が手に付かなくなったり、「いつか復讐してやろう」などと考えるようになることもあります。

●怒りを処理する「アプリ」が必要

このように、人間の脳には「怒りの感情にブレーキをかける作用」と、「怒りの感情にアクセルをかける作用」の両方があるわけです。いつもブレーキが効けばいいけれども、時にはアクセルがかかって、自分にとって不都合な方向へ怒りを増幅させてしまうことがあるのです。
その原因としては、親から虐待を受けた、学校でいじめられた、職場でパワハラに遭ったといった経験が未消化、未解決のままで残ってしまい、大脳皮質の働きに影響すると考えられます。
怒りに対するブレーキの効きをよくして、不適切なときにアクセルを踏ませないように脳の働きをコントロールするには、脳というハードウェアを制御する特別なソフトウェアが必要になってきます。いまふうに言えば「アプリ」です。
怒りをコントロールするのに有効な「アプリ」が心理学であり、その中のひとつの心理教育ツールがアンガーマネジメントです。

●怒りを発生させる3段階のメカニズム

では、アンガーマネジメントという「アプリ」がどのように作用するのか、見てみましょう。アンガーマネジメントの考え方では、人が怒りを感ずるメカニズムは次の3段階を踏むとされます。

◆怒りの3段階のメカニズム

(1)出来事との遭遇
(2)出来事の意味づけ
(3)怒りの発生

たとえば、職場の後輩に対して十分な時間を割いて一生懸命に指導したのに、感謝もされないし、理解もされないという出来事に遭遇したとします。このとき、イライラする、ムカッとする、カッカする、もうダメだ、分かってもらえなくて憎らしいといった感情の変化が現れてきます。このような感情を「一次感情」と呼びます。
なぜ、このような感情が起きてくるかというと、出来事に対して、人はそれぞれに意味づけをするからです。意味づけの元になる考え方を「コアビリーフ」(信念)といいます。コアビリーフは「〜べきである」という、頑固で融通の利かない思い込みです。
たとえば、本人が「私の指導は完ぺきでなければならない」「完ぺきな指導をしたら相手は必ず理解するべきだ」「後輩は先輩を敬うべきである」といったコアビリーフを持っていたとすると、自分の指導について感謝もしないし、理解が悪い後輩を見ると「なぜ」と感じて、さまざまな一次感情がわき出てきます。

●怒りの根源にコアビリーフがある

こうしてイライラやムカムカなどの一次感情が次々にわき起こっても、最初のうちはそれを心の中の器にしまい込み、表に出すことはありません。ところが器が満タンになってしまったとき、それを一気に放出させるように怒りを爆発させるというメカニズムです。
たとえば、「約束の時間の10分前に到着するべき」というコアビリーフを持つ人は、部下が5分前に到着しても怒りの感情をあらわにしたり、根に持ってあとでネチネチと非難したりするでしょう。
一方、「ギリギリでも間に合えば問題ない」と考えている人であれば、部下が3分前に到着しても腹を立てないし、根に持つこともないでしょう。
やっかいなのは、相手がどのようなコアビリーフを持っているかが、外からは見えないことです。あたかも地雷原を歩くかのような怖さがあります。
そのような怖さを部下や後輩に味わわせる上司や先輩がいる職場は、殺伐とした雰囲気になってしまうでしょう。
アンガーマネジメントの基本は、自分がもっているコアビリーフに気づき、不適切なコアビリーフを修正することで、怒りの行動化を防ぎ、自分も他人も傷つけないようにすることです。
何かとストレスの多い現代社会においては、上の立場に立つ人ほど、自分のコアビリーフを知り、それをコントロールするアンガーマネジメントの手法を身につけることが必要です。
アンガーマネジメントは、昔の日本人がだれでもできていた「気配り」に代わる方法であり、学習と訓練によって身につけることができます。「気配り」が相手に対する配慮であるのに対し、アンガーマネジメントは自分の気持ちに収まりをつける方法と言えるでしょう。

●仏教では怒りを10種類に分ける

アンガーマネジメントは、とくに怒りの感情をコントロールするために発達した専門的な心理教育であり、心のトレーニング法です。
一方、心理学よりも古くから人間の怒りの感情について洞察を深めた学問分野があり、それは仏教です。仏教では「欲・怒り・無智」を「三毒」といい、この三毒を克服する知恵が経典の中に著されています。
仏教では下の表のように怒りを10種類に分けて考えます。基本的な怒りをパーリ語で「ドーサ」と言い、もともとの意味は「穢れる」「濁る」であり、何かに対して「嫌だ」という思いを表します。
この「ドーサ」が強くなり、繰り返し現れることによって、9種類の怒りに発展し、もたらす被害が大きくなってくるという考え方です。

◆仏教が教える「10の怒り」
◆仏教が教える「10の怒り」
アルボムッレ・スマナサーラ『怒らない練習』より作成

怒りの感情が「イラつく」「むっとする」程度で収まれば被害は少ないけれども、以上のような恐ろしい感情に暴走させてしまうと被害が拡大し、修復が不可能になる場合もあるでしょう。
仏教から、実生活での怒りの対処に役立ちそうなポイントをピックアップしてみましょう。

◆仏教が教える怒りの対処法
◆仏教が教える怒りの対処法
アルボムッレ・スマナサーラ『怒らない練習』より作成

自分を「観察する」

●「怒りノート」をつけてみる

仏教と最新式のアンガーマネジメントで、共通していることが2つあります。

◆怒りをコントロールする2つのポイント

1)怒りの正体を知る
2)「自分を観察する自分」をもつ

まずは、怒りの発生源と怒りが高まってくるメカニズムを理解すること。次に、怒っている自分に気づけるように「自分を観察する自分」をもつということです。
「観察なんて面倒なことはできない」と思うなら、怒りの感情が収まるまでの間、何もしないで待ってみるだけでも違ってきます。
前述の通り、怒りの感情は脳の中の動物的な部分で発生し、それにブレーキをかけるのが大脳皮質の部分ですが、そこへ情報が伝わるまでには少々時間がかかるからです。

自分を観察したら、その結果をノートに書き込むことにより、自分の感じ方や行動の修正を行うことができます。これは、うつ病に効果があると言われる認知行動療法の一種です。
どのように記録するかというと、たとえば、次のような手順で書いてみるといいでしょう。

◆「怒りノート」の書き方と例
◆「怒りノート」の書き方と例

このようにノートに書いて整理する方法をとれば、自分で自分の怒りを鎮め、ものの見方の偏りをただすことができます。
この方法は、怒りの感情ばかりでなく、憂うつ感や、悲しみの感情にも応用できます。

多くのビジネスパーソンは、お金や時間のマネジメントは行っていても、感情のマネジメントはおざなりになっているのではないでしょうか。
しかし、お金や時間のマネジメント不足による失敗よりも、感情のマネジメント不足による失敗のほうが、ダメージが大きいのです。
ストレス対策を一歩進化させて、感情のマネジメントを行ってみませんか。自分の感情のあり方を振り返り、偏った見方や考え方のクセなどを改善すれば、周囲との軋轢を生むことなく、もっと幸せに楽しく生きることができるのではないでしょうか。

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