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(情報掲載日:2020年8月17日)


インターネットを通じて誰でも簡単に豊富なデータを集められる時代になりましたが、そこから得た情報や知識を上手く活用することができれば、仕事の問題解決や効率化につながります。情報や知識をどのように使えばいいのか、実践に役立つ学び方がPBL(問題解決型学習)です。海外でも取り入れられており、経済産業省や文部科学省も推奨しているメソッドについてご紹介します。

●正解のない課題を解決

PBLとは「Problem-based Learning」の略で、問題解決型学習と訳されています。「Problem」だけを替えた「Project-based Learning(課題解決型学習)」とも呼ばれます。与えられた知識を暗記するという受動的な学習ではなく、問題解決に向けて、当事者の立場に立って周囲の人と協調しながら探究していくという学び方です。解く手順が決まっておらず、正解が一つとは限らない問題を解決するのに優れています。
変化が激しく、問題が発生しても過去の事例通りに解決するのが難しいような今の時代、絶対的な正解や確かな解決策は簡単には見つかりにくいと言えます。PBLはそんな状況に適した学びです。また、正しい答えを導き出すことよりも、どのように答えを導き出したのかというプロセスを重視する手法であるため、プロセスの中で必要とされるさまざまなスキルも養われます。

PBLは、哲学者・心理学者・教育学者であるアメリカ人のジョイ・デューイ氏が提唱した教育学習の一つです。もともとは、講義で得た膨大な専門知識が医療現場で活かされていないという実態を変えるために、現場実践との関連性を実感させるプログラムとして1960年代に考案されたと伝わっています。座学や暗記を中心とした学習に代わって欧米を中心に普及が進んでいき、現在では多分野にわたって教育手法に採用されています。


●技術革新の進む環境で求められる力

文部科学省は、能動的な学びへの参加を取り入れた教育方法「アクティブラーニング」を「平成29・30年改訂学習指導要領」において推進しています(※1)。これからの時代は、常識とされる知識を学ぶだけでは社会の中で通用しにくくなるという予測のもと、「主体的・協働的に問題を発見し解決する能力」を養成することが目的です。「何を学ぶか」だけでなく「どのように学ぶか」というプロセスを重視しており、PBLは「アクティブラーニング」に適した手法として注目されています。

経済産業省では、企業の実際の課題に基づくケーススタディを中心に「実践的な学びの場」を目指すPBL実証事業「AI Quest」を、2019年秋に産官学連携でスタートさせました(※2)。AIの活用ニーズが急速に高まっており、AIやデータを用いて企業の課題を解決できる人材育成を進めたいという意図によるものです。AIに関する技術や知識を単に学ぶだけではなく、実際のプロジェクトに関わりながら学んでいく形になっており、参加者は互いにアイデアを試して話し合いながら、AIやデータを活かして課題を解決する方法を身に付けていきます。この検証をふまえて今後、PBL運営メソッドの共有やPBLの場の協働運営が進んでいくと考えられます。

※1:文部科学省「平成29・30年改訂 学習指導要領、解説等」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1384661.htm新しいウィンドウが開きます
※2:経済産業省「AIQuest」
https://lp.signate.jp/ai-quest/新しいウィンドウが開きます

●従来型のSBLとの違い

従来の一般的な学びはSBL(Subject-based Learning)でした。基礎から順に応用へ進んでいくという、受動的な「科目進行型学習法」のことです。教師から与えられた知識を次々と暗記していくことが重視されており、「知識つめこみ型学習法」とも呼ばれています。能動的なPBLとは学習順序が逆です。

SBLの場合、生徒はまず基本から学び始めます。例えば、「磁石にあるN極S極のこと」「コイルに発生する磁界のこと」「回転エネルギーへの変換」などを教わった後に、扇風機に使われているモーターなどの「数々の部品」や「電気回路図」について習得し、最後に「壊れた扇風機の修理方法は?」と問題が出されます。
PBLの場合、最初に「壊れた扇風機の修理方法は?」と問題が出されます。それを受けて生徒は、修理するために「どんな情報が必要なのか」「何を調べればいいのか」「どこが壊れているのか」と自発的にいろいろな考えを巡らせて、その過程で必要な知識を求めて学んでいきます。
二つを言い換えると、生徒は、SBLでは「実世界にどう活用されているのか」がはっきりとは分からないまま道に沿って順に学ぶ、PBLでは「実世界にどう活用するか」を意識しながら道を探し出して学ぶ、ということになります。

●6つのステップと2つの方法

PBLは次の表のような6つのステップで、グループを組んで学びを進めます。


ステップ3「互いに話し合う」とステップ4「自発的に学ぶ」は、進捗状況に応じて繰り返し、情報や知識のインプットとアウトプットを活性化させることで、問題解決により近づいていきます。

また、PBLには「テュートリアル型」「実践体験型」という2つの手法があります。前者は、チューター(教師、講師)が、ステップ1「問題に出会う」では架空の課題を提示し、チューターが仮想のストーリーをもとに助言をしながらステップ2以降も進行していくという形です。後者は、ステップ1「問題に出会う」では実社会の中から課題を探り、ステップ5「問題に適用する」では実社会でアクションを起こします。
「テュートリアル型」の方が容易に実施できますが、大学が地域や企業と連携して、商店街振興や資産有効活用などの問題に取り組むという「実践体験型」も盛んです。

●PBLによる主な効果

PBLを取り入れると、主に5つの能力が伸びていくと言われています。

1つ目は「考え抜く力」です。問題に向き合って、「問題はなぜ発生したのか」「どんな原因が潜んでいるのか」と多角的な疑問を浮かべ、解決を目指して頭の中で考えをまとめていくためです。物事を鵜呑みにせずに、立ち止まって疑問を持つ習慣も付くと言われています。

2つ目は「自分を表現する力」です。話し合いの場では、自分の意見や考えを伝えたり、相手を納得させるように語るためです。仲間に不快な思いをさせないような言い方を選んだり、アイデアをうまくまとめるスキルも向上します。

3つ目は「柔軟に応用する力」です。解決策を求めて、情報や知識を探って仮説を組み立てたり、グループで意見を交わしながら進めていくためです。他の問題にも気づきやすくなる、別の手段を思いつきやすくなる、といった効果も得られます。

4つ目は「知識を定着させる力」です。能動的に探し・調べ・学んだ知識というのは、受動的に学んだ知識よりも頭に残りやすいためです。自律的に学ぶ癖、深く学ぶ癖も自然と身に付きます。

5つ目は「情報リテラシー」です。本当に正しいと判断できる内容か・信頼できる情報源によるものかといった視点を持って、問題解決を実現させる情報を、見極め収集する必要があるためです。データや調査結果を分析する力も磨かれます。

●インターンシップや研修に活用

PBLは、教育機関だけではなく、企業のインターンシップや研修にも採用されています。
インターンシップでは、学生たちに、事業内容・事業課題・社内制度などに関する簡単なレクチャーを行った後、企業の実情に即したリアルなテーマを提示します。学生たちはグループを組み、企業担当者にアドバイスを求めながら、調査やディスカッションを経てグループごとに提案をまとめ、最後にプレゼンテーションをするという流れで、期間は1か月におよぶものまでバリエーションは豊富です。
このプロセスを通じて、企業側は、学生たちの個性や姿勢を知ることができるだけでなく、学生視点の提案が得られる、刺激になるというメリットもあります。

研修では、従業員のキャリアや職種に応じて、「利益率を◯%上げる施策」「新しいソフトウェア開発」といった、戦略や商品開発などに関する課題を示します。時にファシリテーターを交えて、期限内にグループで取り組んで成果を目指します。
一般的な研修に対して、「学んだことが実務になかなか結びつかない」「せっかく学んだ知識を実践する場がない」という課題を感じる人が多いと言われていますが、それを解消するためにも有効です。

PBLは、想定外の問題や前例のない問題に対して、周囲と協力しながら解決策を生み出していくことに優れています。別の仕事や業務にも生きるような応用力など、ビジネスパーソンとしてのさまざまなスキルの鍛錬も期待できます。今後ますます導入が進んでいくと考えられるPBLに注目してみませんか。

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