配信申込

(情報掲載日:2018年8月9日)


人事部には人事考課、研修データ、従業員満足度調査など多くのデータがありますが、これまでは個々の目的での活用だけで、広く課題解決に活かすことは行われてきませんでした。施策を行った後にさまざまな人事データの変化を確認すれば、人事でもPDCAサイクルが回すことで課題の原因の発見や改善が可能になります。人事データの活用の必要性、その活用法などについて解説します。

●拡大しつつある人事データ

人事データとは、人に関するすべてのデータが対象であり、「これまでどのようなことを行ってきたか(実績)」「どのような特徴や能力を持っているか(個性)」「どのような考えを持っているか(思考)」といった3分野が中心となります。具体的なデータの種類をあげると下表のようになります。近年は、人事給与システムの普及により、データの一元管理化の動きが進んでいます。また、ITをデータ分析に活かすHR Techも注目され、タレントマネジメントでの活用やウエアラブルセンサーを使った行動分析など、人事部が扱うデータの種類は年々増えつつあります。


人事データの種類


●なぜ今、人事データの活用が必要なのか

今、人事データが注目される理由は何でしょうか。『日本の人事を科学する』などの著書である、早稲田大学政治経済学術院教授の大湾秀雄氏は、人事データが注目される理由として次のような点をあげています。その方向性にみられるのは「情報の活用による社員への公平な対応」と「個別対応での適切な人材育成」です。人事データの活用で、より行き届いた対応が可能になります。

人事データの活用が必要となる理由


●人事部門以外も活用する人事データへ

人事データは社内でも機密性が高い情報であり、多くの企業ではこれまで人事部門だけが見る情報となっていました。しかし、現場重視の組織運営とダイバーシティの進展により、職場の上司による人材マネジメントや人材育成の推進、社員に対する人事データの透明性の確保といった必要性が生まれ、人事データは社内のさまざまな関係者が使用できるようになりつつあります。情報が開かれることでより活用の場面が広がり、インプット情報も増えるといった好循環をつくることができます。

役割ごとの人事データの活用例


●さまざまな角度で人事データを分析

これまで人事は経験や勘に基づく業務と言われていましたが、施策を行った後にさまざまな人事データの変化を確認すれば、人事においてもPDCAサイクルを回せるようになります。課題に対してどんな分析手法が適切なのかを考えながら、分析を行う必要があります。

人事データの分析手法


●データ活用を進める際の運用面での注意点

人事データを活用するうえで、運用面で気を付けるべき点は何でしょうか。前述の大湾秀雄教授は3つのポイントをあげています。1つめはデータの一元管理化を推し進めることです。データが分散していると集計までに多くの労力や時間を費やし、実効性のあるスピーディな分析ができません。2つめは経営陣のサポートです。データ活用の効果はすぐに現れるわけではなく、運用は長期戦になります。運用体制を維持するためにも、経営陣には長期的な視点で効果が出るのを待つ姿勢が必要です。3つめは統計スキルのある人材の人事部門への配置です。人事領域の専門分析者としての育成が求められます。

●採用における間違いをデータ活用でなくす

人事には多くの業務がありますが、その中でも人事データの活用を推進すべき分野は何か。大湾秀雄教授は採用における活用をあげています。これまで採用では改善に向けた評価の視点が抜けており、データ活用がされてこなかったと指摘しています。採用における間違いには下表のように2つの種類があります。第1種の間違いは「会社に貢献しない人材を採用してしまったケース」。この場合は人事にクレームが入り、見える化されることから、データ活用でケースの最小化を目指す必要があります。

第2種の間違いは「会社に貢献する人材を採用しなかったケース」であり、このケースは現時点で見える化されていません。採用難の時代において、このケースにおける優秀な人材の取りこぼしは今後大きな損失となります。特に創造力やリーダーシップを持つ人材への需要が高まっており、優秀な人材の取りこぼしを避けるためにも、自社に今必要な人材、自社に合う人材についての具体的なデータ分析が求められます。

採用で起こる2つの間違い


●グループ間で教育内容を変え、自社に合う手法を探す

人事データを育成に用いる際に、ウェブにおけるABテストといった手法を用いることも可能になります。ABテストとは、デザインや機能などを実際に2パターンつくり、ユーザーの動向に基づいて効果を測定するテストです。例えば、対象者を二つのグループに分け、教育内容や手法に違いを持たせ、結果、売上や業績、営業成績、多面評価などへの影響を確認します。成果の違いをデータで確認できるようになることで、より高い効果が望める教育手法の選択が可能になります。

●人事データへのAI活用が期待されるポイント

人事データへのAI活用も、今後増えていくと予想されます。実際に、採用における書類選考でAIのサポートを活用する企業も現れています。人事データのAI活用のポイントをまとめると以下のようになります。その方向性にあるのは、「作業の効率化」および「人材活用の最適化」です。AIによって人材の最適な配置や効率的な働き方などが提案できることで、職場環境をよりよい方向に導くことが可能になります。

人事データへのAI活用が期待されるポイント


●企業経営を向上させるうえで把握するべきデータ

人事データにはさまざまなものがありますが、今後経営に影響を与えるデータにはどのようなものがあるでしょうか。林明文・古川拓馬・佐藤文著『経営力を鍛える人事データ分析30』では、注目すべきデータの種類を紹介しています。例をあげると、平均勤続年数、平均年齢、適正人員数、雇用区分比率、人員構成ギャップ(本来経営が必要とする人員数との差)、管理職比率、自己都合退職率、労働分配率、労働生産性、再雇用率などです。本書では自社に適した定量的な指標を持つことの大切さが指摘されており、人事が企業の成長に寄与するにはその根拠となるデータの把握が欠かせないといえます。

時代が進み、人事データの多くの領域でAI活用が進んだとしても、課題を設定することができるのは人だけです。ある人がそのポジションに入ることで、なぜ組織の業績が上がるのかといったことは、AIは説明できません。企業活動において「このようになった原因は何か」「そのときにどんな反応が起こったのか」などと、普段から物事の因果関係について考察することが、課題設定力の向上につながっていきます。

配信申込

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ