(情報掲載日:2018年7月9日)


アスリートは、スポーツメンタルトレーニングを取り入れて成績の向上を図っています。これは試合に臨む際、自分の心をコントロールし強化する手法であり、ビジネスのさまざまな場面においても応用できるものです。スポーツメンタルトレーニングの概要、手法について解説します。

●スポーツとビジネスにおける「個人の心理や思考」には共通点がある

スポーツメンタルトレーニングとは、緊張やプレッシャーに負けずに自分の心をコントロールし、本来の自分の実力を発揮するために心を整え、鍛えるトレーニングです。自身の思考のクセを知り、ネガティブな思考を排除してプラス思考になることで、より高い成果を得ることができます。スポーツで個人の心理や思考が影響する要素には、以下のようなものがあります。これらはビジネスにおける営業やプレゼンテーション、施策の決定といった場面にも共通する要素です。その意味で、スポーツメンタルトレーニングはビジネスでも活用できるものといえます。



スポーツで個人の心理や思考が影響する要素


メンタルトレーニングの始まりは、旧ソ連の宇宙飛行士の訓練といわれています。その後、スポーツでは旧ソ連や東欧諸国が導入。ロサンゼルス五輪(1984年)を前に米国とカナダが導入し多くのメダルを獲得。日本でも1980年代からメンタルトレーニングの導入が始まっています。

●ネガティブ思考になる5つのパターン

個人の心理や思考による行動への影響で問題になるのは、否定的、消極的、悲観的といった物事を悪い方向に考えるネガティブ思考です。そこには5つのパターンがあります。ネガティブ思考も緊張感を持つためにある程度は必要ですが、思い込みが強過ぎると行動に悪影響を与えます。人によってネガティブ思考には偏りがあるため、自身の思考のクセを知ることが大事です。例えば、自分のこれまでのベストプレーとワーストプレーを比較し、そのようになった原因を考えてみると、自身の思考のクセの傾向が見えてきます。

ネガティブ思考の5つのパターン

(笠原 彰『誰でもできる最新スポーツメンタルトレーニング』学研パブリッシングを参考に作成)

勝負がかかる場面でよく「平常心でいこう」と言いますが、この言葉の本当の目的は、自身の中にネガティブな思考があることを認識し、その事実を冷静に認めることにあります。もし焦りがあれば、その焦りをすべて抑え込もうとするのではなく、気持ちを切り替えるなどの行動を挟んで、焦りを「少なくする」と考えると、いつもの実力を出しやすくなります。

●重要な場面に向かうときの「よい心の状態」とは

重要な場面に向かうときには、どのような心の状態がよいとされるのでしょうか。スポーツにおいてはピークパフォーマンス、ゾーン、フローといった心の状態がよいとされます。このような状態にあるときには「気分がいい」「身体が軽い」「自信に満ちている」「最後まであきらめない」といった気持ちが生まれます。

よい心の状態を指す概念

(高見和至・編集『スポーツ・運動・パフォーマンスの心理学』化学同人を参考に作成)

●トレーニングの流れ

トレーニングの基本的な流れは、鍛えるべき対象部分を把握し、まず気持ちの落ち着いた状態をつくり、自身の行動をイメージしてからさまざまな技法を実施します。その後、実施前との心の状態の違いを確認しながら、自分に合ったプログラムをつくっていきます。人によって表れる効果は異なるので、行ってみて効果を確認し、トレーニングに調整を加えるといった流れになります。ビジネス場面への応用では、具体的なケースとそこで自身が陥りがちな精神状態を想定し、アタマの中で予行演習を行ったり、仲間の協力を得てロールプレイングを行うなど疑似的なトライアルを繰り返します。

スポーツメンタルトレーニングの基本的な流れ

(高見和至・編集『スポーツ・運動・パフォーマンスの心理学』化学同人を参考に作成)


思考の傾向がわかれば、具体的なトレーニングや、心掛けを行うことで、メンタルを強化することができます。これらの強化法はビジネス場面でも応用できるものばかりです。実際に試しながら、自分に合う方法を見つけてください。

●イメージトレーニング

実際に体を動かすことなく、自分のアタマの中でプレーを再現したり、理想のプレーをつくり出したりしながら行うトレーニングです。イメージには自分自身がプレーする内的イメージと、外からの自分を見る外的イメージがあります。例えば、得意なプレー、苦手なプレー、理想のプレー、ゲームの進行状況、感情をコントロールしている場面、祝福を受けている場面などを思い浮かべ、そこで自分がどのように対処すべきかを考えていきます。

イメージの種類

(笠原 彰『誰でもできる最新スポーツメンタルトレーニング』学研パブリッシングを参考に作成)

●ルーティン

ある一定の思考や行動を、決めた順序やリズムで遂行し、集中力を高める手法です。ピンチやチャンスの場面ではつい普段と違ったことをしてしまいがちになりますが、ルーティンがあることで気持ちが落ち着き、安定したパフォーマンスが発揮できます。ルーティンを行うタイミングには練習時、試合開始直前、プレー前、プレー後、移動時などがあります。成功のコツはこれからの行動に対して、理に適った思考や行動を行うこと(例:職場に着いたらデスクを拭く、朝にその日の計画を確認する、夕方にその日の仕事を振り返るなど)。また、動作を一定にするために時間を測ったり、事前にルーティンの習慣化を図る集中練習をしておくことです。また、常に同じである必要はなく、気分次第で変えることも可能です。

●セルフトーク(言い聞かせ)

自分への言葉がけで思考と行動をコントロールする手法です。成功のコツは短いフレーズで声に出すこと。内容は具体的に、自分をワクワクさせる決まり文句を考えます。表情や姿勢を鏡で確認することも大事。声に出してジャンプするなど、言葉と行動をセットすることも有効です。

●集中動作

集中動作には、相手と向き合ってプレーをしている外的な集中と、自分で作戦を考える内的な集中があります。最初はゆっくりと以下の4つの動作を行いながら一つひとつを体で覚え、慣れてきたらほぼ同時に行うようにします。

物事における集中動作の種類

(笠原 彰『誰でもできる最新スポーツメンタルトレーニング』学研パブリッシングを参考に作成)

●気持ちの切り替え

気持ちを信号に例えるなど、客観視して落ち着かせる手法です。今が信号で黄色の状態と思えば、深呼吸する、声を出す、肩を回す、笑うなど事前に決めた行動を行います。行ったあとは上を向く、周囲を見回すなど、自分で視野を広げる動作を行い、気持ちを落ち着かせます。

●自信の回復

自信を持てないときは、以前にうまくいったときと同じ状況をつくってみるのもよい方法です。勝ったときの状況を分析して、似た環境をつくり、同じように行動します。そのために成功時の状況をメモしておくとよいでしょう。また、個々ができることに目を向けるために、仲間同士で褒め合う習慣を持つことも有効です。

メンタルもフィジカルと同様に鍛えたり、コントロールすることができます。そのうえで苦しい場面を乗り越えたり、厳しい経験を経ることで人は成長できます。ビジネスの厳しい場面でも自身の気持ちをコントロールできれば、仕事の成果やその後の人間関係も変わっていきます。自身を常に前向きな状態に保ち、成長させるためにも、普段からメンタルトレーニングを意識して実践することが大切です。

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ