(情報掲載日:2018年6月11日)


ホラクラシーとは、従来の中央集権型・階層型のヒエラルキー型組織とは異なり、階級や上司・部下などの関係が一切存在しないフラットな組織管理体制です。個人は組織管理にしばられない自由な活動が可能になり、意思決定もトップダウンではなく組織全体に権限が分散された形の中で進められます。その特徴およびメリット、違い、事例などについて解説します。

●ホラクラシーは「役割が基準となる組織」

ホラクラシー(Holacracy)は2007年に米国の起業家であるブライアン・J・ロバートソン氏が提唱した考えおよび手法であり、肩書や職種、上下関係による組織化ではなく、仕事から派生する個人の「役割」を個人が担い、その役割同士をつないだ形で管理していく体制を指します。ホラクラシーの目的は人を組織することではなく、仕事を体系化することにあります。営業を例に挙げると、ホラクラシーには営業という「組織」はなく、そこには営業という「役割」があり、例えば営業をサポートする「役割」の人とは仕事を通じてつながる形になります。

ホラクラシーという言葉はアーサー・ケストラー著『機械の中の幽霊』で提唱されたホラーキー(holarchy)から来ており、ギリシャ語の「holos」(Whole、全体)に由来する造語です。一人ひとりが担う「役割」の中にはより細かな役割が詰まっており、その関係性が全体の姿とも相似しているという、「部分」でありながら「全体」でもあるという考えから「holos」と表現されています。その意味では、個人の意思決定が自然と全体の意思へとつながっていく形が目指すべき理想形といえるでしょう。


●なぜホラクラシーが生まれたのか

現在、多くの企業は階層構造であるヒエラルキー型組織であり、権限のより強いポジションが上部にあり、そこから下へと組織が縦割りで構成され、指示命令系統も上から下へのトップダウンとなっています。そこには機能や責任、指揮命令系統が明確というメリットがありますが、反面、組織が硬直化しやすく、社員は閉じた範囲でしか物事を考えられないセクショナリズムに侵されやすいという欠点があります。その結果、判断が遅れたり、個人のチャレンジ意欲が減衰し、自由な発想での新規事業も生まれにくいなど、組織の不活性化を招く原因となっています。そこで個人が一つの役割を担い、その役割に徹する形で自由に活動できるように組織の運営を変えると、企業は全体が一つの機能となって、より効率的に活動できるようになります。役割として人をつなぐことで、より高い効率化を目指す組織運営がホラクラシーです。





●「仕事・組織・事業面」のメリット

ホラクラシー導入でどのようなメリットが得られるでしょうか。ホラクラシーによって組織的な業務から解放され、社員は仕事に対する自由度が増すことから、これまで以上に自身の役割に集中できるようになり、仕事現場、組織活動、事業推進において多くのメリットが生まれると考えられます。組織には自主自律的な風土が芽生えて活性化し、個人には意思決定が委ねられ、仕事に対する責任感や主体性が高まり、ビジネスパーソンとしての成長が期待できます。



ホラクラシー導入で期待されるメリット



●ホラクラシーは複数のサークルの集合体

ホラクラシーではさまざまな形態が考えられますが、ここではブライアン・J・ロバートソン氏の書籍『HOLACRACY ――役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』で解説されている基本的な形態を紹介します。

ホラクラシーの大きな特徴の一つは、人で組織化するのではなく、人に持たせた役割で組織化する点です。個人には一つの役割が与えられ、同時に責任も負うことになります。一人では担えないような大きな役割の場合は、その役割を複数に分割して、複数の人が担う「サークル」がつくられます。以下の図のように、そのもっとも大きなものが企業という「スーパーサークル」です。内部には企業としての活動を行う役割の集合体である「サブサークル」が存在します。サークル内は個人も役割でつながっており、そこに上下関係はありません。

ホラクラシー型組織の例(メーカー)
(ブライアン・J・ロバートソン『HOLACRACY ――役職をなくし生産性を上げるまったく新しい組織マネジメント』PHP研究所を参考に作成)

個人のサブサークルには「リードリンク」と「レプリンク」というポジションが設けられます。「リードリンク」はスーパーサークル側から指名され、サークルの目的が遂行される場を確保し、そのサークルの目的ではない事柄はブロックする役目があります。「レプリンク」はサブサークル内のメンバーにより選出され、サブサークルに加えてスーパーサークルにも籍を置き、スーパーサークルの活動を自身のサブサークルにとって活動しやすい環境にしていくことが役目となります。「リードリンク」と「レプリンク」が外部のサークルと連携を図ることで、サークル同士がより連携しやすくなります。

また、ホラクラシー型組織では、社員個人が託された役割に応じた責任を負っており、その責任において独自に判断していくことが求められます。そのため、企業や事業についての情報公開は必須となります。誰もが同じ情報によって判断していくことで、全体としての方向性も明確になっていきます。

●必要となる導入条件

ホラクラシーは社員を管理せず、自由を与える点に特徴がありますが、その環境をうまく活用できないと、「マネジメント放棄による組織活動の停滞」「パフォーマンス低下」「リーダー不在によるトラブルなど個別対応の不全」「情報漏えいの危険性」といった大きなデメリットを被ることになります。これを避けるには、社員個人に「与えられた役割に対し自発的・能動的に課題を見つける主体性」「周囲の監視がなくとも自律して動けるセルフマネジメント力」「自身の利益に走らない倫理観」といった能力があることが、ホラクラシーの導入条件となります。社員個人の意思が反映された組織の事業目的に対し、個人は組織に対してそれを受け入れ、目的に向けて自主的に行動することが求められます。

●宿泊マッチング事業会社(海外)

社員からのアイデアを、スピード感をもって実践できる組織にするため、マネジャーやチーム制を最低限残したうえでホラクラシーを導入。マネジャーは「指示役」ではなく「業務の補助役」となり、社員の業務遂行における障害を取り除く役割を果たす。社員の昇進はマネジャーにならずとも同程度の給与を得られる枠を設け、社員は自身のニーズに合った職が選択できる。社員の働き方を階層で縛らず、働き方の選択権を与えることで業務に対して当事者意識を持ち続けられるように配慮。事業は順調に推移し、収益を伸ばしている。


●不動産関連サービス会社(国内)

経営者が以前立ち上げた会社は組織管理に重きをおいたことにより1年で倒産。次に興した企業では当初から自由度の高いホラクラシー型経営を採用。「自分の給料は自分で決める」「肩書きは自分で決める」「財務情報は全部オープン」「働く時間、場所、休みは自分で決める」「代表、役員は選挙と合議で決める」「経費の清算は個人の裁量」などの手法を実践。現在、経営面は順調で、社員も前向きに業務にあたれている。


●ITサービス会社(国内)

以前は赤字も経験するなど業務効率が悪かったが、組織運営において役職を廃止し、すべてプロジェクト単位に変更したことで業績が安定した。きっかけはあるエンジニア部門の部長が急遽グループ会社の支援で半年不在となることになり、トライアルで若手にリーダー役を抜擢。ホラクラシー的な組織運営を行ったところ、大幅に業績を伸ばした。部長が戻る期限が近づき、経営陣が合宿による会議を行い、全社で役職やヒエラルキーをなくすオペレーションの導入を決めた。

ホラクラシーを学ぶことは、多くの人が現状所属しているヒエラルキー型組織の問題点について学ぶことにつながります。変化が激しく、イノベーションが求められる現代において、個人に役割と権限を与えて自由度を高めるホラクラシーは、組織を活性化させ、自由な発想をもたらす新たな手法となるでしょう。ホラクラシーのエッセンスを、普段の仕事や組織運営に活かしてみてはいかがでしょうか。

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