(情報掲載日:2018年2月13日)


ビジネスリーダーの成功者の共通点として、「やり抜く力」が注目を集めています。この力があれば、モチベーションが持続し、逆境も前向きに捉え、粘り強く努力し続けるようになります。どうすれば「やり抜く力」を育てられるのか。社員の「やり抜く力」を育てる方法や、目標達成に向けモチベーションを維持する方法について解説します。

●成功者に共通していた「やり抜く力」

米国の心理学者、アンジェラ・ダックワース氏が提唱した「やり抜く力(GRIT)」が今注目されています。同氏はビジネスリーダー、学者、スポーツ選手などの成功者の共通点は、才能でもIQでも学歴でもなく、「やり抜く力」だったと述べています。「やり抜く力」とは、目標に対して情熱を持って取り組み、困難や挫折を味わってもあきらめずに努力し続ける粘り強さです。「今」だけでなく、いかに「将来」にこだわれるかということです。

日本にも「やり抜く力」を持たせようと選手を鼓舞するコーチがいます。シンクロナイズドスイミングのコーチとして幾度もオリンピックでのメダル獲得を実現させている井村雅代コーチは常に「もっとムリをしなさい。あなたはもっとできる。」と言い続け、あきらめさせないことを信条としています。また、米国のIT企業ではプログラマー採用時に、IQやプログラミングスキルの高さではなく、粘り強く黙々と問題に取り組み、最後までやり遂げた人を採用し成功しています。


●「やり抜く力」を測るグリット・スケール

ダックワース氏は米国陸軍士官学校での研究用に、「やり抜く力」を測るグリット・スケールを考案しています。10の項目に対し、該当する傾向を5段階で回答し、点数を合計して10で割った数値がグリッド・スコアです。同氏が米国の成人で調査したところでは3.8が平均値となっています。

「やり抜く力」を測るグリット・スケール


(アンジェラ・ダックワース『やり抜く力』ダイヤモンド社を参考に作成)

ダックワース氏の調査によれば、「やり抜く力」が強い人ほど幸福感も高く、健康であるという結果が出ています。また、年齢が上がるほどに「やり抜く力」が強まるというデータも出ており、企業が人材教育時に「やり抜く力」を意識することのメリットは大きいものがあると思われます。「やり抜く力」を社員各々の中に育てることで、個々が粘り強く頑張れるだけでなく、その姿が互いを刺激し合い、より高度な目標達成を実現できる組織へと変わることが可能になります。

●「やり抜く力」を伸ばす4つのステップ

ではどのようにすれば「やり抜く力」を伸ばせるのでしょうか。ダックワース氏は成功者が共通して持っていた「やり抜く力」を伸ばすステップに、「興味 → 練習 → 目的 → 希望」の4点をあげています。自分の興味を絞り込み、実際に仕事に臨む中で練習を繰り返し、目的によってモチベーションを補強し、希望によって粘り強さを獲得することができます。

「やり抜く力」を伸ばすための4ステップ

(アンジェラ・ダックワース『やり抜く力』ダイヤモンド社を参考に作成)

また、ダックワース氏は「やり抜く力」を身に付けるために必要なポイントとして、「ハードなことに挑戦する。そのハードなことは自分で選ぶ」「最低でも2年間はひとつのことを続ける」の2点があげられます。「やり抜く」ことを目指すだけに道は平たんでなく、選んだことにはあくまでも前向きに取り組み、最低限の成果が見えるまで努力することが要求されます。

●自分にとって最も重要な目標は何か

「やり抜く力」は誰もが持ちたいと思うものですが、現実には力を持てる人と持てない人に分かれてしまいます。その背景にある決定的な違いは「モチベーションの持続性」です。なぜそのような違いが生まれるのか。「やり抜く力」を持てない理由には、「最上位の目標が存在しない」ことがあげられます。最上位の目標とは、それ自体が目指すべき目的となる究極の目標です。それに対し、中位や下位の目標は、より上位の目標を実現するために目標達成を支える手段となるものです。最上位の目標が確立されていないと、中位や下位の目標のピラミッドが乱立することとなり、やる気を保つことができません。

ダックワース氏は自分にとって最上位となる目標を絞り込む手法として、米国の投資家であるウォーレン・バフェット氏の方法論を紹介しています。自身が目指す方向について冷静に考えて絞り込み、最後に「共通の目的にどれくらい貢献するか」と意識することで、よりひとつの方向へと集約させることができます。

ウォーレン・バフェット氏の目標の絞り込みステップ

1.仕事の目標を25個、紙に書き出す。
2.自分にとって何が重要かを考え、もっとも重要な5個にマルを付ける。
3.マルを付けなかった20個の目標を目に焼きつける。
そしてそれらの目標には今後絶対に関わらないようにする。
4.「これらの目標は、共通の目的にどれくらい貢献するか」と考える(ダックワース氏による提案)


●モチベーション維持のポイントとは

日本企業もこれまで「やり抜く力」に取り組んでこなかったわけではありません。目標管理におけるモチベーション維持では、現場でさまざまな工夫が行われています。個々が目標達成に向け集中できる環境とは何かを考え、その整備を事前に行うことが目標に向かう気持ちを高め、それがモチベーション維持へとつながります。モチベーションを維持するためのポイントをまとめると下表のようになります。


目標達成に向けたモチベーション維持のポイント


●目標そのものをモチベーションに転換する

目標そのものがモチベーションとなれば、業務に対しスムーズに取り組むことができます。その意味では業務目標は「必達目標」と定義することが重要です。ただし、目標達成度による評価のウエイトを高くしすぎると、目標の影響力が高くなりすぎるため、単純に達成できたかどうかをみて、達成者については皆で賞賛するといったやり方を行うのがよいでしょう。また、業務目標とは別に、個々で強化したい点を「チャレンジ目標」として設定することも有効です。企業が求める人材像や、こうありたいと思う自分の姿に近づくために必要な行動レベルでの目標を立てます。

「やり抜く力」があったとしても、挫折や困難は必ず経験するでしょう。そのような場面で、前向きに再度挑戦しようと思えるかどうかが、成功者になれるかどうかの分かれ道となります。そこであきらめずに、自身の道を突き詰められるのか。そういった姿勢は、結果として「どんな生き方をしたいのか」といった人生の問題に自ずと関わってきます。社員に対し「やり抜く力」を身に付けさせることは、企業が社員の人生を支援することにもつながるのです。

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