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(情報掲載日:2017年3月10日)

人材マネジメントライブラリ

広がりをみせる顧客ロイヤルティ指標「NPS」

VOL.62


顧客が企業やブランドに対して、どれだけの愛着を感じているかを示す指標として、NPS(Net Promoter Score)が近年注目されています。顧客に「あなたはこの商品(サービス)を他者にすすめますか?」と質問するもので、これまで広く行われてきた顧客満足度調査よりも収益との相関があると言われています。NPSの考え方やその活用法について解説します。

顧客ロイヤルティ指標「NPS」とは何か

●NPSとは何か

NPS®は「Net Promoter® Score(ネット・プロモーター・スコア)」(注1)の略です。訳すと「正味の推奨者比率」という意味であり、NPSは顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する愛着・信頼の度合い)を数値化する指標の一つです。その内容は顧客に「あなたはこの商品(サービス)を親しい友人や家族にどの程度すすめたいと思いますか?」と質問し、0〜10点のスコアで答えるものです。2003年に米国のコンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニーのフェローであるフレッド・ライクヘルド氏が『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌で発表し、その後、米国の企業などで多く採用されています。

注1:「Net Promoter®」及び「NPS®」は、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズの登録商標です。

NPSでの評価方法は、9・10点を付けた人を「推奨者」、7・8点を付けた人を「中立者」、0〜6点を付けた人を「批判者」と分類し、その比率を出します。「推奨者」の割合から「批判者」の割合を引いた数値を出して、NPSのスコアとします。仮に推奨者が20%、批判者が10%だった場合には20%−10%=10%となり、推奨者が増えるか、批判者が減るほどに数値は高くなります。


NPSの評価方法
NPSの評価方法


●NPSが収益に連動する理由

NPSが収益に連動する理由を考えるうえで、ここでは企業の売上には、顧客ロイヤルティが反映された「利益への貢献度が高い売上」と、目先の業績を追求した「利益への貢献度が低い売上」があると考えます。顧客ロイヤルティとは、企業やブランドに対する愛着・信頼の度合いです。

「利益への貢献度が高い売上」とは顧客が商品・サービスの価値を認め、価格に納得して購入した売上であり、顧客は価値に満足してリピーターとなり、その価値を他者に広めてくれると考えます。その結果、売上の増加に比例して利益も増えます。逆に「利益への貢献度が低い売上」とは顧客が商品・サービスの価値を認めておらず、価格を値引くことで購入されたものもあり、利益への貢献度が低い売上と考え、これが増えると事業は成り立たなくなってしまう可能性があります。

企業は「利益への貢献度が高い売上」を増やすことで、中長期的な業績を安定させ、競合優位に立つことができます。NPSは「利益への貢献度が高い売上」に直結するスコアと言え、このスコアを上げることは企業の支持者、ファンを増やすことにつながります。支持者は商品やサービスのリピーターとなって、よい評判の発信源となり、また、企業にとって建設的な意見を聞ける対象ともなります。そして商品やサービスの価値を認める支持者が増え、その声を社員が聞けることは社員のモチベーションアップにもつながります。これら一連の動きが企業収益に好影響を及ぼすと考えられており、NPSを将来的な利益の増加を示す指標ととらえて、活用する企業もあります。


●他の顧客ロイヤルティ指標と異なる点とは

企業はこれまでもさまざまな顧客ロイヤルティ指標を導入してきました。NPS導入以前は商品やサービスの購入者に対し「どのくらい満足したか?」を問う顧客満足度調査(CS)が広く使われてきました。顧客満足度調査は競合他社との比較を問うものではなく、それ単独での価格やサービス全般に対する評価を聞くものです。それに対し、NPSは「他者にすすめるか?」と質問することで、「自社と競合他社のどちらが本当によいのか?」を考えさせ、回答への本気度を高めている点に特徴があります。NPSでは競合他社に対する優位さが明らかになり、ひいてはそれが収益につながるため、「究極の質問」とも呼ばれています。


代表的な顧客ロイヤルティ指標
代表的な顧客ロイヤルティ指標
(遠藤直紀、武井由紀子『売上につながる「顧客ロイヤルティ戦略」入門』日本実業出版社を参考に作成)


●NPSのメリット、デメリットとは

NPSのメリットとデメリットには以下のようなものがあります。中でも大きいメリットは、質問数が少ないため、顧客に負担をかけずに回答してもらえることです。そして「他者にすすめますか?」と質問することで、現実的な行動をイメージさせられる点にあります。ただし全ての顧客に調査を行い、すべての推奨者と批判者を明らかにすることは不可能なため、顧客に偏りがあると正しいスコアデータが得られない点はデメリットと言えます。例えば、推奨者が多いと判明している集団に質問するとスコアが極端に高くなってしまいます。

また、「なぜおすすめしないのか?」をきちんと分析できないと正しい改善にはつながりません。質問する顧客対象を区分けしたり、「なぜそう思うのか?」を自由回答で聞いたりするなどの工夫が必要です。


NPSのメリット、デメリット
NPSのメリット、デメリット


NPS活用の現状

●業界ベンチマーク調査を活用する

NPSを活用するうえでメリットと言えるのは、業界のべンチマーク調査との比較によって、業界における自社のポジションが容易に分かることです。業界ベンチマーク調査はさまざまな民間企業で実施されています。以下はNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が行った業界ベンチマーク調査(※1)です。これをみて分かるのは、業界ごとに「トップ−平均−ボトム」のスコア位置が大きく異なる点です。継続的に自社スコアを調査し、属する業界スコアと比較することで自社の戦略に活かすことができます。


NPS業界ベンチマーク調査例
NPS業界ベンチマーク調査例
(NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「NPS業界ベンチマーク調査」より)


●日本でのNPSの導入状況

日本でNPSはどれくらい導入されているでしょうか。株式会社アイ・エム・ジェイが2016年に、顧客戦略または自社のマーケティングに携わる会社員を対象に、「顧客との関係性を測る指標の導入状況」(※2)について調査を行っています。この調査で「顧客との関係性強化のための指標を導入している」と回答した企業は58.4%でした。内訳をみると顧客満足度(CS)が55.6%、NPSは9.1%。そのうち両方を導入している企業が6.6%でした。NPSを導入している企業に「いつ導入したのか」を聞いたところ、2年以内が61.9%となっており、今後日本では増えていく見込みがあるといえます。

※1:NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社「NPS業界ベンチマーク調査」
http://research.nttcoms.com/database/data/001945/

※2:株式会社アイ・エム・ジェイ「顧客との関係性を測る指標の導入状況調査」
https://www.imjp.co.jp/news-seminar/release/2016/1209/

NPSを活用し業務を改善するには

●NPSに取り組む基本姿勢とは

NPSに取り組む際に企業はどのような姿勢を持つべきでしょうか。重要なポイントとして以下のような点が挙げられています。顧客にいかに本音を話してもらうか、また、そこからいかに速く課題を発見し、それに対する対策を取るかが重要です。



NPSに取り組む際の基本姿勢
NPSに取り組む際の基本姿勢
(フレッド・ライクヘルド、ロブ・マーキー『ネット・プロモーター経営』プレジデント社を参考に作成)


●NPS活用事例に学ぶ視点とは

企業では実際にどのようにNPSを業務改善に活かしているのでしょうか。二つの事例をご紹介します。
米国のITメーカーでは、店長が朝会でNPSの情報を社員と共有しています。まず、社員に寄せられた推奨者からのお礼コメントを紹介し、社員の名前を読み上げながら店舗での体験を具体的に紹介しています。次にNPS批判者からの声には、社員の名は伏せた形で顧客がなぜ不快な思いをしたのかを具体的に説明します。そして、すべてのNPS批判者には24時間以内にフォローの電話を入れています。

また、米国のクレジットカード会社では、社長の強いリーダーシップにより年2回のNPS調査を導入しました。サポート部門ではクレジットカード紛失時の対応がNPSに大きな影響を与えると判明。迅速なカード再発行の仕組みをつくりました。

このようにNPS活用における大事な視点は、いかに課題を的確に発見するかです。そして、発見したら改善目標を設定し、PDCAサイクルを回します。そのためには時系列での変化も計測することが重要です。そして、業務改善はその根本から考える必要があり、そのためには現場や最前線の人員だけでなく、会社全体で取り組むことが求められます。NPSのデータは経営戦略にも活かされており、推奨者を増やす(=リピーターを増やす)ことを経営戦略として掲げる企業もみられます。

そして、このような業務改善は結果的にさまざまな収益に結びついていきます。例えば、フィットネス業界で業務を改善しNPS を向上させることは、「サービスが改善され満足する人が増える→継続して利用する人が増える→他者への紹介が増える→会員が増える」といったサイクルが生まれ、結果的に収益を上げることにつながります。

NPSは「他者にすすめますか?」といったシンプルな質問でありながら、そのデータは製品・サービス、事業、施策、企業活動といったさまざまなものに活かされています。企業にとって顧客は、公平な目で自社と他社を比較してくれる貴重な存在です。NPSはそのことをあらためて企業に気付かせています。いかに偏りのない目で顧客と向き合えるか。ビジネスの原点ともいうべき姿勢を、企業はいま問われています。

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