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(情報掲載日:2016年2月10日)

人材マネジメントライブラリ

部下の育児に理解ある「イクボス」を育成する!

VOL.49


仕事をしながらの育児をする場合、上司からの理解や協力が得られると働きやすくなります。そこで今企業で注目されているのが、部下の家庭生活や出産、育児に理解があり、そのキャリアと人生を応援してくれる上司=「イクボス」です。イクボスが求められる理由、イクボスの育成方法などについて解説します。

今イクボスが求められる理由

●イクボスとは何か

イクボスとは、職場で共に働く部下のワーク・ライフ・バランス(WLB、仕事と生活の調和)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)のことをいいます。イクボスが増えることで、仕事の効率化や残業削減、ダイバーシティの推進につながり、それによって人材の定着や育成、確保によい効果が生まれることが期待されています。

この言葉が生まれたきっかけは、2010年に厚生労働省が「イクメンプロジェクト」を開始し、育児に積極的に関わる男性を指す言葉である「イクメン」が定着したことです。そこで「イクメン」や育児をする女性など、部下の育児を支援する上司を指す言葉として「イクボス」が生まれました。2014年以降、各地の県知事や市長がイクボスを宣言。また、2014年12月には企業ネットワーク「イクボス企業同盟」(大手企業46社が参加)、2015年7月には「イクボス中小企業同盟」も生まれ、人事担当者による情報交換やノウハウ共有が行われています。

●出産後の就業継続増で注目が集まる

育児休業制度のある企業での、正規雇用者の出産後の就業継続率(※1)を見ると、1998年以前は60.7%でしたが、1999年〜2004年は67.4%、2005年以降は79.6%と大きく増加しています。また、育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度の導入状況(※2)を見ると、短時間勤務制度57.9%、所定外労働の制限54.6%など、育児に配慮した労働時間の短縮措置が広く導入されています。出産後も退職せずに、時短勤務などの制度を利用しながら育児をする女性が増えたことで、これまで以上にイクボスに注目が集まるようになりました。

「育児休業制度のある企業における正規雇用者」における第1子妊娠・出産期の退職率と育児休業取得割合
(労働政策研究・研修機構「出産・育児期の就業継続 2005年以降の動向に着目して」P27図1-4-4より

育児のための所定労働時間の短縮措置等の制度の導入状況(2014年度、複数回答)
(厚生労働省「平成26 年度雇用均等基本調査」P15 図4より)

ただ、男女別の育児休業取得率の推移(※3)を見ると、近年80%以上を保っている女性に対し、男性の取得率は数%ほどしかありません。政府は2020年度に男性の育児休業取得率13%を目指していますが、ほど遠い状況です。子どもに関わる時間をつくったり、女性の育児負担を減らすためにも、男性も女性と同条件で育児休業制度や所定労働時間の短縮制度が使えるような職場環境を整え、積極的に育児に参加できるようにしなければなりません。そのため、企業におけるイクボスの育成に期待が集まっています。


男女の育児休業取得率の推移
(厚生労働省「平成26 年度雇用均等基本調査」より)

●女性支援のために、男性の育児休業取得を増やす

育児に関して、企業はさまざまな制度で社員と家族を支援していますが、現実的には女性側に多くの負担がかかっている状況があります。配偶者である男性の育児休業取得を増やすことで女性の負担を減らすこともできるでしょう。これまで育児休業を取得したことのある男性に「育児休業を取得できた理由」を聞いたデータ(※4)によれば、上位は「日頃から休暇を取りやすい職場だったから」「職場が育児休業制度を取得しやすい雰囲気だったから」「制度について十分知っていたから」でした。この結果からは、職場の上司が普段から部下の育休取得に向けた万全なフォロー体制を整えておき、そのうえで育児休業が取りやすい雰囲気をつくる必要性が見えてきます。

男性が育児休業を取得できた理由
(厚生労働省「平成25年度育児休業制度等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」より)

※1:労働政策研究・研修機構「出産・育児期の就業継続〜2005年以降の動向に着目して」
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2011/documents/0136.pdf

※2、3:厚生労働省「平成26 年度雇用均等基本調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-26r-07.pdf

※4:厚生労働省「平成25年度育児休業制度等に関する実態把握のための調査研究事業報告書」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/zentaiban.pdf

イクボス育成に必要な考え方とは

●イクボス10ヶ条にみる「考え方」の指針

職場にイクボスを育成する際はどのような考え方が必要なのでしょうか。そのヒントとなるのが「イクボス10ヶ条」です。制定したファザーリング・ジャパンは「Fathering(父親であることを楽しもう)」の理解・浸透を目的に、2007年に設立されたNPO法人で、世の中にイクボスを増やす活動を行っています。イクボス10ヶ条でイクボスに期待される基本は「部下のライフ(育児)を尊重、充実させ、それを仕事へとつないで成果を出すこと」といえます。

イクボス10ヶ条
(NPO法人ファザーリング・ジャパン『新しいパパの働き方』学研教育出版より)

●求められるマネジメント行動

育児休暇や短時間勤務などを利用しながら子育てを行う部下には、より効率のよい業務支援と育児前後におけるスムーズなキャリア継続支援が必要です。ここでイクボスに求められるマネジメント行動には以下の3点が挙げられます。そこでは企業の制度改革も含めて、より残業を排した働き方を推奨し、制度を利用しない社員と差異なくキャリアアップが図れるよう配慮することが求められます。長期的な視野でこれらに取り組む姿勢が大切です。

イクボスに求められるマネジメント行動
(佐藤博樹・武石恵美子『ワーク・ライフ・バランス支援の課題』東京大学出版会より)

社内でイクボスを育てる方法

●人事によるイクボス育成のポイント

人事がイクボスを育成するには、「企業の支援制度の充実」「部下の支援制度への理解」「制度活用に向けた上司のマネジメント」「利用する部下への啓発」の4点に力を入れることが必要です。経営者、管理職に育児支援制度を十分に理解させ、それをいかに活用するかといったノウハウを提供することが大切だといえます。

具体的にイクボスに求められる行動には、以下のようなものがあります。
・部下が大切にしていること(仕事、家族、趣味など)を知る
・部下それぞれの多様な価値観を認める
・起きうる可能性を想像し、対処法を想定する
・上司自身が仕事と私生活を楽しむ
・チームで成果を上げるための業務調整を行う

これらの行動をいかに支援するかを、人事は考えなければなりません。例えば、ある飲料メーカーでは、育児取得対象となる部下とその上司が一緒に育児セミナーを受講し、互いに育児への理解を深めるといった活動を行っています。上司と部下がいかに同じ思いを持てるようにするか。それに向けた情報共有や話し合いのノウハウを提供することも人事の役割として重要です。

●部下のプライベートに接することへのノウハウの提供

部下の育児といったプライベートな事柄を上手く把握し、それに対応するには、イクボスにも細かなヒアリング力やアドバイス力が求められます。人事ではそれらのノウハウを収集し、イクボスとなる上司に提供することも求められます。例えば、上司も部下に仕事以外の趣味、家族のことなどを話すことで、部下も上司にプライベートな話をしやすい雰囲気をつくることができるでしょう。また、育休前や職場復帰時の面談では部下の不安に配慮した対応が求められます。

また、イクボスは育児に関する制度利用でのトラブルへの対応も考えなければなりません。制度を利用する部下へのフォローが必要な場合、周りの社員に負担がかかり、その社員が不満をいだくことがあります。問題はどこにあり、解決はどのようにすべきか。人事がもつノウハウをイクボスに伝え、状況によっては、イクボスに任せるだけでなく人事が介入することでトラブルを回避する必要もあるでしょう。

●普段から、育児の障害となる長時間労働を排除

また、男女ともに働きながらの育児で大きな障害となるのが長時間労働です。勤務時間内で終わる職場なら、男女ともに育児をする時間が取れて、育児参加も促進されます。その意味でも人事は管理職に対し、育児を行う部下の有無に関わらず、長時間労働の原因を部署と一緒に探すなど望ましい組織作りができるサポートをしなければなりません。

具体的な施策としては、以下のようなものがあります。
・業務の棚卸を行い、やらなくてよい仕事をやめる
・時間外労働に上限を設定する
・ノー残業デーを設置する
・一部業務の朝型へのシフトを行う
・有給休暇の取得率に目標値を定め、上司が管理する
・仕事のプロセスを見直し、IT化・マニュアル化・定型化を進める
・在宅勤務を導入する
・会議の回数、時間を減らす

加えて、仕事の効率を上げるノウハウを共有することも重要です。人事は以下のような施策をイクボスに提供し、実践するよう指導します。
・個々の仕事の範囲を明確にする
・仕事の進捗状況を可視化する
・仕事ごとにサブ担当の割当を行っておく
・急な休みとなったときの対処法を決めておく
・普段から生産性が高い社員を評価する

「イクボス企業同盟」の設立や自治体長のイクボス宣言に見られるように、これからは企業や組織が、積極的に育児支援をうたう世の中になっていくでしょう。その中では、イクボスという存在が本当の意味で企業に浸透し、当たり前の存在になる必要性があるといえます。それには、企業や組織におけるイクボスの支援やイクボスへのノウハウの提供が不可欠です。企業や組織にはそれら情報の収集役、橋渡し役としての役割が期待されています。

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