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(情報掲載日:2012年4月23日)

人材マネジメントライブラリ

「パワーハラスメント」増加への対応

〜「同僚間」や「部下から上司」も対象に

VOL.4

厚生労働省は平成24年1月30日、職場における「パワーハラスメント」の定義を公開しましたが、今回注目されるのはパワーハラスメントの対象として上司から部下への行為だけではなく、同僚間や部下から上司への行為も含まれることを示した点です。いったい、どのような行為がパワーハラスメントに当たるのか、またどうしたらパワーハラスメントなくすことができるのかについてご紹介します。

パワーハラスメントの現状と取り組みの必要性

●増加傾向にあるパワーハラスメント。企業にもたらす大きなダメージ

職場の「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は増加傾向にあります。厚生労働省が発表した「平成22年度個別労働相談解決制度実施状況」(※1)によると、都道府県労働局等に寄せられた「民事上の個別労働紛争相談件数」は年々増加しており、その中に占める「いじめ・嫌がらせ」の割合は平成14年には6.4%だったものが平成22年には16.0%となり、10ポイント近く増えています。
相談件数の中に占める割合の上昇とともに、平成22年においては「解雇」に次いで多い相談事項となっています。

民事上の個別労働紛争相談件数の推移

民事上の個別労働紛争相談件数の推移

厚生労働省 平成22年個別労働相談解決制度実施状況

また、厚生労働省の「労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究 平成21年度総括・分担研究報告書」(※2)によると、職場での「いじめ・嫌がらせ」の頻度について、6.0%が「職場で自分がいじめ、パワーハラスメントにあっている(セクシャルハラスメントを含む)」、15.0%が「職場でいじめ、パワーハラスメントにあっている人がいる(セクシャルハラスメントを含む)」という報告がされています。「いじめ・嫌がらせ」を含めた職場の「パワーハラスメント」は一部の限られた人の問題ではなく、働く人の誰もが関わりうる可能性があることが示されていると厚生労働省は述べています。

パワーハラスメントはそれを受けることによって人格を傷つけられたり、仕事への意欲や自信を喪失したり、さらには無視されたりすることで自分の居場所を失い、周囲とのコミュニケーションが絶たれることがあります。こうしたことは心の健康の悪化にもつながり、休職や退職に至るケースもあります。また、周囲の人たちにとってもパワーハラスメントを見聞きすることで仕事への意欲が低下し、職場全体の生産性に悪影響を与えます。
このようにパワーハラスメントが企業に及ぼす損失は計り知れないものがあります。企業はパワーハラスメントを事前に防止するとともに、パワーハラスメントが起きた場合もその解決に向けて、適切に取り組む必要があります。

※1 厚生労働省 平成22年度個別労働相談解決制度実施状況
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001clbk-att/2r9852000001clda.pdf

※2 厚生労働省 労働者のメンタルヘルス不調の第一次予防の浸透手法に関する調査研究 平成21年度総括・分担研究報告書
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/jstress/H21%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7%B7%8F%E6%8B%AC%E3%83%BB%E5%88%86%E6%8B%85%E7%A0%94%E7%A9%B6%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8p1-143r.pdf

パワーハラスメントとは何か

●厚生労働省はパワーハラスメントの定義を拡大

パワーハラスメントという言葉には法律上の定義はなく、どのような行為が該当するのか、判断が異なる現状がありました。そこで厚生労働省は、以下のように職場におけるパワーハラスメントの定義を平成24年1月30日に公開しました。
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。

これまでパワーハラスメントは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせを指して使われる場合が多かったのですが、近年では先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対して行われるケースも多くなっています。こうした行為も職場のパワーハラスメントに含める必要性があることから、厚生労働省では「職場内の優位性」について、単に上司・部下における上下関係の「職務上の地位」に限らず、さまざまな人間関係の中で優位性が起こること、例えば、IT等に関連する先端技術・専門知識の有無が仕事を遂行する上で大きな優位性を持つことなどを発表しました。

●職場におけるパワーハラスメントの6つの行為類型

厚生労働省は職場のパワーハラスメント行為を、大きく以下①〜⑥の類型に整理しました。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

それでは、今回新たに加わった「同僚間」「部下から上司」の中で想定されるパワーハラスメントとはどのような行為があるのでしょうか。厚生労働省からは行為類型が示されているだけで、具体的な例示は現時点ではありません。「上司から部下」のほか、新たに加わったパワーハラスメントと思われる行為について具体的なイメージをつかむために、幾つかの企業の見解をご紹介します。

ただし、これらはパワーハラスメントに当たる行為の全てというわけではありません。これ以外の行為は全く問題ないということでなく、過去の判例を見ても賃金等の差別、降格など、他にもパワーハラスメントに該当すると思われる行為がありますので、留意する必要があります。

パワーハラスメントの「予防策」と「解決策」

●予防策〜取り組み方針の明確化、啓発活動・研修の実施

パワーハラスメントをなくすために、以下のような予防策を行っていくことが効果的です。

●予防策〜取り組み方針の明確化、啓発活動・研修の実施

参考までに、以下にさまざまな予防例をご紹介します。

【事例】パワーハラスメントを盛り込んだ就業規則

パワーハラスメントに対する相談件数が増えてきたことに伴い、就業規則にパワーハラスメントを盛り込む企業が多くなっています。以下に就業規則の例をご紹介します。

(服務規律)

(1)パワーハラスメントを「職務上の権限や上下関係、職場における人間関係等に伴う権力を使い、業務や指導などの適切な範囲を超えて行われる強制や嫌がらせなどの迷惑行為」と定める。
(2)職務の遂行にあたり、パワーハラスメントを行い、他の従業員の働く環境を悪化させたり、雇用不安を与えないこと。

(従業員の責務)

(1)従業員はパワーハラスメントのない職場を実現するために、最大限の努力をしなくてはならない
(2)従業員を管理監督する立場にある者は、安全で良好な職場環境を確保するために日常的にパワーハラスメントを防止し、合わせてその排除に努めなくてはならない。
(3)従業員を管理監督する立場にある者は、職場でパワーハラスメントに付する問題が起きた時には、速やかにかつ適切に対処しなければならない。

(懲戒)

従業員が次の各号のいずれかに該当した行為をした時は懲戒を行うことができる。
(1)パワーハラスメントにより、他の従業員の働く環境や意欲等を悪化させた時。
(2)パワーハラスメントにより、雇用不安を与えた時。
(3)管理監督者において、自身の管理監督する職場においてパワーハラスメントがあることを把握しながら放置した時。
(4)管理監督者において、自身の管理監督する職場において管理監督が不十分であったために、従業員にパワーハラスメントを発生させた時。

【事例】パワーハラスメント防止規程

就業規則ではなく、別途パワーハラスメントに特化した規程を作成する企業も少なくありません。パワーハラスメント防止規程の例をご紹介します。

(目的)

第1条 本規程は、パワーハラスメントの防止について定めたものである。本規程によって、パワーハラスメントのない快適な職場環境を実現し、従業員が生き生きと働くことを目的とする。

(定義)

第2条 本規程において、パワーハラスメントを以下のように定める。
職場において、職務上の地位や影響力に基づき、相手の人格や尊厳を侵害する行動を行うことにより、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与えて、その就業環境を悪化させること。

(禁止事項)

第3条 従業員は次の各号に定めるパワーハラスメント行為をしてはならない。
(1)身体的な攻撃を行うこと(暴行・傷害)
(2)人格的・精神的な攻撃を行うこと(脅迫・名誉毀損・侮辱・暴言)
(3)違法行為を強要すること
(4)発言を無視する等、職場内で孤立させる行為を繰り返し、精神的な苦痛を与えること
(5)業務上の必要性のないことを強制的に行わせること
(6)合理的な理由なく、一定の期間仕事を与えないこと
(7)故意に必要な情報を与えない等の行為を繰り返し、業務の遂行を妨害すること
(8)達成不可能な職務を一方的に与えること
(9)身体的、精神的に就労が困難な場所で長期間勤務させること
(10)その他、全各号の準ずる行為を行うこと

(防止措置)

第4条 パワーハラスメントに対する相談・苦情に対応するための相談窓口を設置する。相談担当者を置き、従業員からの相談・苦情に対応することと合わせ、パワーハラスメント防止のための啓発活動を行う。
第5条 パワーハラスメントを受けた従業員は、相談窓口に対して書面(メール)・口頭にて相談することができる。
2 相談を受けた担当者は、相談者の内容や個人情報等を第三者に漏洩してはならない
3 相談を受けた担当者は、相談内容に迅速かつ適切に対応しなければならない

(懲戒)

第6条 パワーハラスメントを行った従業員に対し、就業規則第■条が定めるところにより、懲戒処分を行う。
2 懲戒処分については、懲戒委員会の下す決定による。

(不利益取り扱いの禁止)

第7条 パワーハラスメントに関する相談・苦情を行ったことにより、その従業員に不利益な取り扱いをしてはならない。

【事例】パワーハラスメント予防の研修(業種:IT関連サービス、従業員数:約5000人)

研修がパワーハラスメント防止につながった例をご紹介します。

パワーハラスメント予防のための啓発冊子を作成し、その冊子の読み合わせをするパワーハラスメント研修を全社員対象に行いました。この研修の結果、「今まではパワーハラスメントがどのようなことなのか、よく分かっていなかった。研修で具体的な例を聞いて、そういった行為はよくあることだと認識した」といった受講者の声が数多く挙がりました。また研修により相談窓口の存在が社内に広く知られ、今まで内にこもって悩んでいた人が相談するようになってきました。
その後、管理職向けにパワーハラスメント防止を目的に作成したビデオを上映し、実例をもとにしたケースについて話し合う研修を行いました。違う部門の管理職と具体的な話をすることで、さまざまパワーハラスメント行為やなぜそのような行為が起きたのかなどの背景が明らかとなり、パワーハラスメントに対する認識がより深まっていきました。この2つの研修をセットで行ったことでパワーハラスメント防止への意識が社内で高まり、1年後には相談件数が10分の1程度まで減少しました。

●解決策〜関係者に配慮したキメ細かな対応

実際にパワーハラスメントが発生した場合には、以下のような対応をすることが大切です。

以上のような対応で解決が難しいような場合には、行政の力を借りることも一つの方法です。「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」(※3)に基づいて、「解雇」「雇止め」「賃下げ」「いじめ」などに関して、以下の3つの制度が用意されています。詳しくは、都道府県労働局総務部企画室内総合労働相談コーナー(※4)までお問い合わせください。

①総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談
②都道府県労働局長による助言・指導
③紛争調整委員会によるあっせん

※3 厚生労働省 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律
人事労務管理の個別化や雇用形態の変化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(個別労働紛争)が増加している。職場慣行を踏まえた円満な解決を図るため、都道府県労働局において無料で個別労働紛争の解決援助サービスを提供し、個別労働紛争の未然防止、迅速な解決を促進することを目的として施行された。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/

※4 厚生労働省 都道府県労働局総務部企画室内総合労働相談コーナー
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/dl/leaflet_zentai.pdf

【事例】パワーハラスメントが起きた場合の対応

パワーハラスメントがあったという報告を受けた時の対応例をご紹介します。

当事者双方がいる現場に行為者の上位にあたる管理職が、ミーティングなど全員の前でパワーハラスメントに関する注意喚起を促しました。その際、この事案については触れず、パワーハラスメント全般に関する注意を行いました。まずは再発の抑制を働きかけたのです。
そして、双方の気持ちを確認するために個別面談を実施しました。いじめや嫌がらせといっても、コミュニケーションの問題や人間関係のすれ違いの問題であることが少なくなく、面談等で解消できるケースも多いからです。今まではこのような対応で解決するケースがほとんどでした。しかし、今回は被害者が納得せず、面談による解決が不調に終わったので、パワーハラスメントが起こった際の事実関係を確認するために、職場の関係者からヒアリングを行いました。
事実関係を把握した後、両者に対して異動・配置転換を行うことで決着を図りました。配置転換や異動など人事的な施策を用いて、働く環境をかえることによってパワーハラスメント行為自体が収まって来るケースがあるからです。
その後、今後パワーハラスメントが起きないよう徹底した研修と指導を行うなど、会社として取るべき対策を示していきました。
このように、ステップを順に踏んで対応していくことがパワーハラスメントを解決するための一つの方法です。

今回、厚生労働省が職場におけるパワーハラスメントの定義を公開したことで、企業におけるパワーハラスメント対策の一つの方向性が示されました。さらに平成24年3月15日には、「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ」(※5)を発表しました。
業務上の注意や指導なども、適正な範囲を超えると相手を傷つけてしまう場合があります。図らずもこうした行為はパワーハラスメントにあたり、誰もが当事者となり得ます。各企業がパワーハラスメントに対する啓発活動や研修に取り組んでいくことでパワーハラスメントが起こらない、そして従業員一人ひとりが十二分に能力を発揮できる職場環境を実現していくことが大切です。

※5 厚生労働省 職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言取りまとめ
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025370.html

【参考】
「パワーハラスメントと企業責任」
パワーハラスメントと企業に生じる責任などについて、Q&Aを紹介しています。
http://www.tempstaff.co.jp/magazine/jhqa/vol17.html

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