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(情報掲載日:2014年12月10日)

人材マネジメントライブラリ

「売り手市場」の中での内定者対応

VOL.35


男女雇用機会均等法施行規則のセクハラ指針が改正され、職場におけるセクハラには同性に対するものも含まれることが明示されました。「まだ結婚しないの?」といった同性からの言葉も、状況によってはセクハラと見なされるため、注意が必要です。会社が講ずべき予防策をご紹介します。

●セクハラは異性間のものという思い込みをなくす

セクハラ対策を規定している男女雇用機会均等法施行規則が改正になり、2014年7月1日に施行されました(※1)。これに伴い、いわゆるセクハラ指針(事業主が適切に対処するための指針)の本文中に「職場におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれる」と明示されることになりました。改正前も同性間のセクハラは規制の対象でしたが、あらためて明文化することでセクハラは異性間のものであるという思い込みをなくし、注意喚起することがねらいのようです。この改正により、事業主は同性間にもセクハラはあり得ることを従業員に啓発し、予防策と対応策を講じることが求められます。


●同性間のセクハラが裁判になった事例もある

都道府県労働局雇用均等室は、採用や処遇における男女差別などの男女雇用機会均等法に関するさまざまな相談を受ける窓口ですが、実際には相談件数の過半数が職場におけるセクハラの相談となっています。平成25年度の統計では、セクハラに関する相談が6,183件で全体の55.9%を占めました(※2)。
セクハラが法規制の対象となったのは1997年の男女雇用機会均等法改正からで、企業は女性への性的嫌がらせについて雇用管理上の配慮を求められることになりました。その後、2007年には女性から男性へのセクハラも対象になりました。セクハラは異性間のものという印象が強くなっていますが、全国の労働局雇用均等室に寄せられる相談で、同性間のセクハラ被害を訴えるケースが増えているという担当者の談話が新聞等で報じられ、また、同性間のセクハラが裁判になった例もあります。そのような背景もあり、今回改正されたセクハラ指針の中には、職場におけるセクハラには同性に対するものも含まれることが明示され、警鐘が鳴らされることになりました。

※1 厚生労働省「男女雇用機会均等法施行規則を改正する省令等を公布しました」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000033232.html

※2 平成25年度 都道府県労働局雇用均等室「相談者別相談内容の内訳」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11904000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Tanjikanzaitakuroudouka/0000047138.pdf

同性間セクハラに該当する言動とは

●同性間でも相手に不快感を与える性的言動はNG

同性同士の気安さで、プライバシーにかかわる話題が出ることもありますが、相手の気持ちを傷つけるような言動は、セクハラと見なされる場合があります。また、勤務時間内だけでなく、宴会などの実質上職務の延長と考えられる「職場」での言動が対象となります。
例えば、以下のような言動がセクハラに該当する可能性があります。

セクハラに該当する可能性のある言動の例

  • 過去の交際歴をしつこく聞く
  • 夫婦生活について尋ねる
  • 結婚しない理由について立ち入って尋ねる
  • 異性関係などについてうわさを流す
  • 服装の趣味を性的からかいの材料にする
  • 体の一部を茶化したあだ名で呼ぶ
  • 風俗店に行くことを強要する
  • 宴会で部下に下品な芸を強要する

具体的には、下記のような事例が同性間のセクハラであるとみなされます。

同性間セクハラ事例1 女性上司の女性部下に対する言動

女性上司が同性の部下に対して過去の交際歴のことを仕事中にしつこく尋ねた。部下は腹立たしく思ったが、「やめて下さい」とは言えなかった。契約社員という立場であった部下は、直属の上司の機嫌を損ねたら契約を切られると思ったからである。職場では平静を装ったが、帰宅すると涙が止まらず、なかなか寝付けなかった。そのうちに体調を崩し、これ以上耐えられないと思い、3ヶ月で会社を辞めた。

同性間セクハラ事例2 男性上司の男性部下に対する言動

男性上司は同性部下を飲み会に誘い、酔った勢いで部下に対して「これから風俗に行け」と命令した。部下が拒むと、「男のくせに弱虫だ!」などと暴言を吐き、部下はひどく嫌な気持ちを味わい、その後1ヶ月は勤務を続けたが、耐えられなくなって会社を辞めた。


●男らしさ、女らしさの強要はセクハラに当たる

また、今回改正されたセクハラ指針には、「性的役割分担意識に基づく言動がセクハラの発生の原因や背景となり得ることを労働者に周知・啓発すること」が盛り込まれています。この「性的役割分担意識に基づく言動」の例としては、「男のくせに育休を取るのか!」とか「女なのに子どもを産まないの?」といった発言や、女性だけにお茶くみや宴会でのお酌を強要する例などが該当します。


●性的少数者への配慮も求められる

指針を改定する際の議論では、同性愛者や性同一性障害などの性的少数者も指針の対象となるという見解を、厚生労働省が初めて示しました。性的少数者は、そうであることをなかなか打ち明けられないために、とくに同性間の何気ない一言に、苦痛を感じることがあるようです。例えば見た目は女性であっても、性的なアイデンティティが女性ではない人が「あなたは結婚しないの?」「なぜスカートを履かないの?」などと言われた場合、苦痛を感じることでしょう。「うちの職場にはそのような人はいないだろう」と思う人が大半かもしれませんが、性的少数者の支援団体では「当事者が職場に“いない”のではなく“言えない”ことを知って欲しい」と訴え、企業の事業主・法務・人事向けの啓発資料を発行しています(※3)。

※3 NPO法人虹色ダイバーシティ
http://www.nijiirodiversity.jp/

会社が講ずべき予防策と対応策とは

●セクハラに「ノー」と言えるスキルを養う

今回の改正を受けて、同性間のセクハラを予防するためにNGワードをリストアップし、言わないように指導するという対応だけでは必ずしも十分ではないようです。なぜなら、NGワード以外でも、そのときの状況や人間関係、あるいは受け取る側によってはセクハラであると感じられる場合があるためです。言った、言わないではなく、言ったことにより、相手がどれだけ傷ついたかがポイントになります。
セクハラは被害者の心の傷として残る場合があり、傷を癒やすことは簡単ではありません。まずはセクハラが起こらないような予防策が重要です。態度やマインドも含め、セクハラになりにくいコミュニケーションのあり方について気づかせ、実践させる教育が予防策となると考えられます。
セクハラ予防教育のポイントは2点あり、1つはセクハラを受けた人の心の中で起きていることを共感しようとする演習です。シナリオとセリフを用意したロールプレイングを行い、そのときに感じたことをお互い伝え合うことで、セクハラを受けたときの相手の気持ちがわかるようになるでしょう。
もう1つは「そのような言い方をされると、私は不愉快に感じることをわかってください」などと、はっきりとした意思表示ができるようにするトレーニングです。こちらについても、断る役、断られる役に分かれてロールプレイングを行うと効果的でしょう。


●それぞれの違いに気づき、尊重する感性を養う

ある企業では、自分にとってはどのような発言がセクハラだと感じられるのか、そのときにどんな気持ちを味わうのかについて、お互いに腹を割って話し合う機会を設けています。そうすることによって、それぞれの経験や価値観の違いに気づき、違いを尊重する感性をお互いに磨いていこうというものです。このような話し合いは、同性間のほうが進めやすいかもしれません。多くても20人程度のグループで、安心して話せる空間に椅子を円形に配置して座り、時間は長くても1回2時間程度とします。全員が発言できるようにファシリテーターが促し、万一、誰かが不快な気持ちになりそうな場合は介入するといった手法もあります。ファシリテーター役は、カウンセリングの専門教育を受けた人が望ましいでしょう。


●同質性の高い集団の中で起こりやすい「いじめ」を予防する

女性が多数、男性が多数といった同質性の高い集団の中では、いじめが起こりやすい側面もあるようです。他の人と少しでも違う部分があると、いじめのターゲットにされる傾向が見られます。こうした傾向を抑制するために、ある女子校では毎年クラス替えを行うだけでなく、席順も頻繁に替えて、仲良しグループの「派閥」ができることを予防しています。その結果、いじめがなくなっただけではなく、生徒の成績の向上が見られ、有名大学への合格率が著しく上がったそうです。
職場でも、例えば異動の少ない事務職の女性が大半を占める部署では、ベテランを中心とした「派閥」ができやすく、異動で配属された営業職や中途入社者を居づらい雰囲気にさせているといった事例が散見されます。こうした環境の中で、性や性的役割分担に関する話題に話が及ぶと、受け取る側にとってはセクハラと感じられる場合があるかもしれません。


●セクハラ被害によるメンタルヘルス不調に対応する

セクハラを受けると、震災や大事故を体験した人に多いPTSD(心的外傷後ストレス障害)に似た症状が起き、海外ではPTED(Post Traumatic Embitterment Disorder)という診断名が下される場合があります。例えば、セクハラ発言を繰り返す上司が嫌でたまらず、遠くから聞こえてくる靴音で上司の気配を感じとり、恐怖感や嫌悪感に襲われるといった症状が起こります。
このようなメンタルヘルス不調を防ぎ、起きてしまった場合は早期治療に結びつけるために、職場の中に臨床心理士や精神保健福祉士などの専門家による相談対応窓口を設ける必要があります。今回改正されたセクハラ指針の中にも、被害者に対する事後対応の措置の例として、管理監督者または事業場内の産業保健スタッフなどによる被害者のメンタルヘルス不調への相談対応が追加されています。
社内に産業保健スタッフを配置できない場合や十分な対応ができない場合は、外部の地域産業保健推進センターやメンタルヘルスケアを行う民間のEAP機関を利用するとよいでしょう。産業保健スタッフは、相談対応をするだけでなく、メンタルヘルスの見地から職場のセクハラを予防するための研修を企画・実施するなど、予防活動にも携わることが望まれます。


●身近なメンターが相談に乗る体制をつくる

同性間セクハラの問題は、異性には理解しにくい面もあるため、同性の支援者が身近にいることによって、早期に対応することができるでしょう。新入社員の早期離職を防止するために多くの企業で導入しているメンター制度を活用し、メンターとセクハラなどの問題を話せるような関係をつないでいければ理想的です。メンター制度は、仕事のスキルや、社会人としての基本姿勢をマン・ツー・マンで指導することに主眼が置かれていますが、セクハラのようなメンタルの問題についても扱えるように、メンターとなる社員にセクハラ対応の知識や傾聴のスキルを指導することが必要になります。

価値観や生活習慣が多様化する中で、何をハラスメントと受け取るかは人それぞれであり、だれもがセクハラの加害者にも被害者にもなり得る可能性があります。意識改革とコミュニケーションスキルのトレーニングを行うことにより、自分の発言が相手にどのように伝わるか、自然に気づかうことができるようになり、セクハラ防止はもちろん、働きやすい職場環境の実現へつながっていくと期待できるでしょう。

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