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(情報掲載日:2014年11月10日)

人材マネジメントライブラリ

「売り手市場」の中での内定者対応

VOL.34

景気回復を受けて新卒採用は「売り手市場」となり、学生1人平均2社内定とも言われています。そのような状況の中で内定辞退を防ぐための新たな対策や、高い効果をねらえる入社前教育のあり方についてご紹介します。

「売り手市場」の中で学生の心をつかむには

●新卒採用「売り手市場」で内定辞退者が急増

アベノミクスの影響か、企業が採用枠を拡大する中で2015年4月入社予定の大学生の就職状況が「売り手市場」となっています。例年、大学生の就職内定率を報じている調査(※1)によると、2014年8月1日時点での就職内定率は78.2%で、前年同月の72.0%に比べ6.2ポイント高くなっています。平均内定取得社数は1.97社で、2社以上の複数社内定取得者は51.7%となり、こちらも前年同月の45.8%に比べて5.9ポイント高いことがわかりました。
また、内定を辞退する学生の数は例年よりも増え、企業側からは対応に苦慮する声も挙がっています。全国の主要企業1,096社が回答した調査(※2)によると、内定辞退者について「かなり増えた」「やや増えた」が合計で38.7%にのぼり、前年度と比較して9.7ポイント上昇し急増しています。

ディスコ「2015年度・新卒採用に関する企業調査―内定動向調査」をもとに作成(※2)

●内定しても「決め手に欠ける」会社は辞退の対象に

「1社専願」で就職活動を行い、どこかに内定した時点で就職活動を終える高校生とは異なり、大学生は同時に並行して多くの会社にアプローチします。そのうちのどこかで内定を得たとしても就職活動を継続し、後からより志望度の高い企業から内定を得られれば、辞退することもあり得ます。学生にとって就職はその後の人生にかかわる重大事項ですから、複数内定した場合にどこに入社するかは非常に悩ましい問題です。A社かB社か迷ったときに学生が選択肢から外すのは、何らかの不安定要素や不満要素があるか、「この会社ならば入社したい」と思える決め手に欠ける企業のほうでしょう。もしも会社説明会から内定に至るプロセスの中で、企業側が十分な情報提供をしなかったり、相談対応をしなかったりした場合は、学生から選ばれる確率が低くなる可能性があります。

※1 リクルート「2014年8月度 内定状況について」
http://www.recruitcareer.co.jp/news/2014/08/26/20140828.pdf

※2 ディスコ「2015年度・新卒採用に関する企業調査―内定動向調査」
http://www.disc.co.jp/pressrelease/detail/2014kyoureport09-2148.htm

内定辞退や早期離職を防ぐには

●会社説明会でプラスの面ばかりを強調しない

早期離職を減らすには、会社説明会の段階から対応を始めることが必要です。会社説明会では学生に良い印象を与えたいと思うあまりに、給与や勤務時間、休日といった処遇や仕事内容について、プラスの側面を強調しがちです。たとえ制度は整っていても、本人が配属された後に、仕事との適性に問題を感じたり、職場の人間関係にストレスを感じるなど、一筋縄ではいかない現実に直面したとき、「こんなはずじゃなかった」と思って退職してしまうケースもあります。これをリアリティショックといい、早期離職の主たる原因であると考えられます。
リアリティショックを防ぐには、良い面ばかりでなく、厳しい側面についても事前に情報提供する必要があります。たとえば、先輩社員が実際に仕事上で経験した苦労話と、その苦労があってこそ成長があるといった「乗り越え体験」を紹介することによって、入社後のギャップを最小限にすることができるでしょう。


●早い時期に評価のフィードバックをする

多くの企業では、まずメールや電話で内定を知らせ、その後に内定通知書を送るという手順を踏むようですが、内定通知書を出すまでに時間がかかったり、内定式まで何もフォローがなかったりすると、「本当に内定が得られたのだろうか」という不安を生じさせてしまうかもしれません。内定通知書を出したら、なるべく早い時期に何が内定の決め手になったのか、面接の良い評価を具体的に伝えることで、学生の不安材料をなくし、納得感を与えることができます。とくに最近の若者は、他人から承認されたいという欲求を強く持っていると言われます。そのため、内定後にきめ細かいフィードバックを受けると安心でき、「自分を認めてくれたこの会社でがんばりたい」という信頼感ができてくると考えられます。
また、学生の強みが入社後どのように活かされるかについて、わかりやすく伝えることで、入社後のキャリアプランを具体的にイメージできるようにします。採用はゴールではなく、人材をいかに戦力化するかがゴールであると考え、採用チームに育成チームのメンバーを加え、採用から育成まで一気通貫に進め、入社2年目、3年目の段階で戦力化できるようにする体制をとる企業もあります。


●「オヤカク」をする

オヤカクとは「親への確認」の略で、企業が内定を出した後、親に対して子どもの入社の承諾を取っておくことを意味します。なぜこのようなことが必要かというと、本人が入社を承諾しても、親が反対するので内定を辞退するということが実際に起きているからです。学生が就職先を決定するうえでは、直接、学生と接する人事・採用担当者ばかりでなく、親や友人・知人からの情報にも強く影響されます。また、ある調査によると46.4%の企業が「保護者から直接、問い合わせや接触があった事例はあるか」という質問に「ある」と答えています(※3)。問い合わせ内容は「募集要項」「入社後の処遇」「事業内容や経営状況」などが多くなっています。
子どもの将来を心配し、就職活動に関与する親に対して、企業は丁寧な対応をしなければならない状況になっています。中には保護者向けに会社見学会を開催したり、内定者懇親会に保護者を招待したりする例が見られます。


●密に連絡をとり、内定者の不安を解消する

内定後の懇親会や内定式は多くの企業が行っていますが、それだけではなく、入社まで頻繁に連絡をとる企業も少なくないようです。ひとりっ子やきょうだいの少ない環境の中で親から丁寧に育てられた学生が多く、ケアをされないと不安になるという現代っ子ならではの心理的傾向に対処する必要があるという声がよく聞かれます。
電話やメールによる定期連絡のほか、社内報送付、内定者向けサイト(SNS)、社内や施設などの見学会を実施する例があります。SNSの活用は、学生の質問にきめ細かく応じて不安を解消するとともに、内定者同士の一体感を醸成するというメリットが得られるようです。

※3 アイデム「2015年の新卒採用に関する企業調査」2014年6月1日状況
http://apj.aidem.co.jp/upload/chousa_data_pdf/207/file.pdf

入社前教育を行う際の留意点

●通信教育では進捗度を確認するなどのケアが必要

入社前教育については、e-Learnigを含む通信教育を行う企業が多く見られます。時間やコストの面に加え、作成・運営を外部に委託できるので社内の負担を軽減できるといったメリットがあり、学生にとっても時間や場所を拘束されず、自分の都合に合わせて取り組めるという点でメリットが大きいようです。
通信教育にはさまざまな種類がありますが、企業が内定者に対して何らの通信教育を実施する場合、大きく分けると資格取得などの知識習得型の教育か、近況報告などのレポート型の教育の2つのタイプが見受けられます。


入社前の通信教育の2つのタイプとメリット、留意点
入社前の通信教育の2つのタイプとメリット、留意点

どちらも企業にとってメリットのあるものですが、学生に過度の負担感を与えないように、種類や数を絞り込み、なぜ、何のために実施するのかを学生に説明することが必要でしょう。
通信教育も実施中のケアが大切で、やり方によっては学生とのコミュニケーションを深めることができます。教育担当者が「やってみてどうだった?」「何か疑問に思ったことはない?」などと個別に学生の気持ちを受けとめながら、入社前の不安や疑問等に対応することが望ましいでしょう。


●学生の負担感に配慮する

学生は、入社前に丁寧なケアをされることを望む半面、集合型の入社前研修については、「卒論で忙しい時期に企業へ出向くのは負担である」という声もあり、拘束や過干渉を嫌う学生も少なくないようです。学生の立場に立ってみると、内定後から卒業までには卒論の作成、卒業に必要な単位修得のための試験などがあり、そのうえに入社前教育の負担感が大きくなるのは好ましいことではないでしょう。入社後に企業側の要求に応えきれないのではないかといった不安感を植え付ける材料にならないようにしたいところです。
他方、内定先でのアルバイトやインターンシップについては、現場の仕事を早く覚えられるという点から、歓迎する学生もいます。学生の所属する学部・学科等に応じて入社後に配属される可能性の高い部署などで業務を体験させ、なじませるという意味で、企業にとってもメリットが大きいでしょう。


●受講態度が悪い場合は内定を取り消せるか

面接時には積極的で進取の精神に富んでいる性格であると見受けられたので内定を出したが、入社前教育の受講態度が消極的でやる気のなさがうかがえたので、採用を取り消しにするという理由は通らないようです。
労働法上は、応募者に対する企業の採用内定の通知とこれに対する応募者の承諾により、労働契約が成立すると見なされます。そのときに交わした誓約書に記載の採用内定取消事由が発生した場合には、使用者が解約することができ、解約権留保・就労始期付労働契約と呼ばれます。ただし、誓約書に書いてあればどのような内容でも採用内定取消事由になるわけではなく、客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として認められるものに限られます。
そのため、企業側からの内定取消は相応の重大な理由がなければならず、取り消しが可能なケースとしては、入社前に違法行為を行った場合や、履歴書等に採否の決定や入社後の労働条件の決定に影響を及ぼすような重要な履歴に関して虚偽の記載があった場合などが該当します。入社前教育の受講態度が悪い場合は、なぜそうなったのか本人の気持ちを詳しく聴き、教え諭すなど、育成的な立場で臨むことがふさわしいでしょう。

早期に人材を戦力化するという見地からすると、内定はゴールではなく、経過点の1つに過ぎないと考えられます。内定後のフォローの仕方によっては、辞退もあり得、入社後の職場不適応と早期離職につながるリスクもはらみます。事業戦略に合う人材を早期に戦力化するというゴールに向かって、採用チームと育成チームが協力し、学生1人ひとりの可能性に着目して個別対応で進めていくことが求められているようです。

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