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(情報掲載日:2014年8月11日)

人材マネジメントライブラリ

長期休暇のメリットとは

VOL.31

欧米先進国では2週間以上の長期休暇が当たり前になっており、併せてキャリアの節目に取得する数ヶ月〜1年以上の長期休暇であるサバティカル休暇も広がっています。日本企業の中にも、欧米の例にならって長期休暇を採り入れる例が出てきました。長期休暇を導入するメリットと、日本における長期休暇の導入状況についてご紹介します。

欧米先進諸国における長期休暇の実態

●ILO132号条約では「休暇は2週間以上まとめてとる」

日本人は働き過ぎだと言われますが、その理由は2つあり、1つは「長時間労働」、もう1つは「休まないこと」です。欧米先進国の価値観からすると、長期間のまとまった休暇を取らないことが奇異に映るようです。欧米先進国の多くが批准する休暇についての国際条約であるILO132号条約で「休暇は原則として継続したものでなければならないが、事情により分割を認めることもできる。ただし、その場合でも分割された一部は連続2労働週を下らないものとされる」と定めているため、この条約を批准している国々は「有給休暇は連続して2週間取得しなければならない」といった法律を設けています。ところが、日本ではこの条約に批准していません。休むことに対する価値観が欧米とは異なり、長期休暇は日本企業の実態にそぐわないと考えられているようです。

●フランスでは年間5週間の有休取得を義務づける

休暇先進国といわれるフランスでは、既に1930年代に全ての労働者が毎年連続2週間の有給休暇を付与される、通称「バカンス法(正式名称:マティニョン法)」と呼ばれる法律が定められていました(※1)。 それ以後、有給休暇の付与日数は時代を追うごとに増え、1982年に現在の水準である年5週間の有給休暇が付与されるよう定められました。
5月1日から10月31日の間を有給休暇の法定取得期間と定め、労働者はこの期間内に4週間、残りの半年の期間に1週間の有給休暇を消化しなければなりません。また、法定取得期間に取得する4週間の有給休暇のうち、2週間は連続した休暇である必要があります。もしも使用者が、法定取得期間内に従業員に4週間の休暇を取得させることができなければ、法定取得期間外に取得した休暇の日数に応じて、追加の有給休暇を与えることになっています。

●ドイツには「労働時間貯蓄制度」がある

ドイツには「労働時間貯蓄制度」というユニークな制度があり、労働時間をあたかも銀行預金のように口座に積み立て、労働者は後日休暇等のためにこれを利用できる仕組みです。積み立てた労働時間は1日や2日といった短期間の休暇のために使われることもありますが、労働時間口座のある企業の63%で長期的な休暇に使われています(※2)。また、貯蓄した労働時間を使って早期引退を可能にする制度を設けている企業もあります。企業にとっては残業や残業手当の発生を回避し、従業員にとってはワーク・ライフ・バランスを実現しやすく、労使双方にメリットの制度として定着しています。

※1 内閣府 メールマガジン カエルジャパン通信 第10号「フランスと日本の休暇制度」
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/e-mailmagazine/backnumber/010/index.html

※2 独立行政法人労働政策研究・研修機構 ドイツの「労働時間貯蓄制度」-新たなモデルの行方
http://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2008_7/german_01.htm

長期休暇導入のメリットとは

●休むだけでなく、好きなことに没頭できる

長期休暇のメリットとして欧米の人たちがよく言うのは、「最初の1週間の休養で仕事を忘れることができ、2週目から趣味など本当に好きなことに没頭でき、休暇を満喫できる」というものです。海外旅行に行った先で、「日本人はよく1週間程度の短い休みで満足できますね」と驚かれた人もいるかもしれません。仕事以外の人生時間も充実させるというワーク・ライフ・バランスの見地からすると、働く人にとって長期休暇には大きなメリットがあると考えられます。

●交代で長期休暇を取れば不正防止につながる

企業の視点からすると、長期休暇にはリスク管理、生産性向上といった経営上のメリットのほか、人材育成上のメリット、そして離職防止といった人事管理上でのメリットがあります。
第1に企業のリスク管理のメリットとして、長期休暇が労働者の不正防止につながるという考え方があります。日本でも外資系企業の中には、連続2週間の長期休暇の取得を義務づける例があり、その主な目的は不正防止です。休暇中の労働者が扱っていた業務を部署内の他のメンバーが代わって行うことにより、仕事の進め方に不正がないかどうかが自ずと明らかになる仕組みです。ただ、必要最低限の人数で運営している場合は、長期休暇で1人欠けたまま補充が行われないと過重労働になり、他の部員が疲弊するリスクがあるため、この方法を採用するには年間の業務計画の作成と、誰がいつ長期休暇を取得するかについての情報をあらかじめ共有する必要があります。

●感性を磨き、発想力を養う

長期休暇がもたらす第2の経営上のメリットとして、休暇により労働者が多様な経験をすることで感性が磨かれ、発想力が養われた結果、事業の生産効率と収益力の向上がもたらさせるという考え方があります。
ある企業では公休を年間140日に設定し、年末年始の20連休、ゴールデン・ウィークの10連休、夏季の10連休を全員に取得させています。さらに火曜や木曜が祝日の場合は月曜や金曜を休みにし、土日と併せて4連休を創出しています。
その目的は、長期休暇中に養われた発想力から新しい製品の開発につなげることです。同社では「常に考える」を社是として、就業中に数多くの提案を出すことを奨励し、その数は従業員800名弱で年間1万件以上にのぼりました。その中から業務改善や新商品開発につながるものが生まれ、結果として少ない労働時間でも高い収益を生み出す仕組みが作られています。

●部下のスキルアップを図る

人材育成上のメリットとしては、長期休暇で誰かがいなくなった「穴」を残された者が埋めようとすることにより、必然的にスキルアップがもたらされるという考え方があります。ある企業ではあえて課長職以上の管理職に連続9日間の長期有給休暇を取得させ、部下のスキルアップを図っています。部長が休暇のときは課長が、課長が休暇のときは部下が業務を代行しますが、部長は課長に、課長は部下に必要最小限度のことしか教えません。そのため、自分で何とかしなければと必死になって頑張り、その結果、部下のスキルアップがもたらされます。
この制度には副次的効果があり、長期有給休暇のメリットを体感した上司は、部下に交代でまとまった休みを取らせるという前提で年間業務計画を作成し、休みを取ろうとしない部下には個人的に働きかけるなどして、未取得分の消化に取り組むようになったとのことです。

●介護離職や病気離職を防げる

人事管理上のメリットとして離職の防止、とくに介護や病気を理由とした離職を防げるということが挙げられます。医療技術の進歩により、最近では以前に比べて短期間の入院で治療が終わる例が多くなっています。また、介護については、病院から退院して在宅介護に切り換える場合や、転倒によるケガで入院治療が必要になった際など、スポット的にまとまった休暇を必要とすることがあります。その際に長期休暇を取得することができれば、離職するリスクを低減できるでしょう。また、仕事と介護の両立が長期にわたる場合、レスパイトといって介護者自身がまとまった休暇を定期的に取らないと、介護疲れから病気を発症して離職に追い込まれるリスクが高まると考えられます。

日本における長期休暇の導入状況とは

●最長3ヶ月のサバティカル休暇が話題に

日本における最近の長期休暇の導入事例としては、サバティカル休暇が注目を集めています。サバティカル休暇を導入しているある企業では、勤続10年以上の正社員を対象に、最短2ヶ月から最長3ヶ月の長期休暇を取得可能としています。その目的は、「一定のキャリアを積んだ社員が、自らのキャリアや経験、働き方を見つめなおし、考える機会をつくることで、本人のさらなる成長につなげてもらう」というものです。同社では休暇支援金として基準給与1ヶ月分が支給され、なおかつ有給休暇を充てることもできるため、経済的な不安なく休める仕組みとなっています。
サバティカルは欧米でキャリアの節目に取得する長期休暇として定着しています。日本でも以前から大学で研究者向けにサバティカル休暇制度を設ける例はあり、期間は長くて1年間に及び、海外視察、研究調査、論文執筆、あるいは休息する充電期間として用いられています。サバティカルの語源は6日間働いた後、7日目は安息日とする旧約聖書のラテン語 "sabbaticus" (安息日)に由来し、これにちなんで入職7年目以降の勤続者に与えられる特権とされる場合もあります。
ちなみにフランスには法律に基づくサバティカル制度があり、勤務する企業における勤務年数が3年以上であり、かつ通算の勤務年数が6年以上であること、また過去6年間に当該企業において同制度を利用していないことを条件に、6〜11ヶ月の長期休暇を取得することができます(※1)。

●日本企業の「リフレッシュ休暇」は最高で1回6.2日

サバティカルという言葉は多くの日本企業にとって耳新しいものですが、同じように一定の勤続年数を経た社員を対象に長期間の休みを与えるものとしてリフレッシュ休暇制度があります。厚生労働省の調査によるとリフレッシュ休暇制度が「ある」と回答した企業は全体で11.1%、従業員1,000人以上の大企業では40.4%となっています(※3)。1回あたりの最高付与日数は平均6.2日、従業員1,000人以上の大企業では平均7.7日となっています。休暇中の賃金支給状況については、全額負担が83.6%(従業員1,000人以上の大企業は92.2%)、一部負担が2.6%(同0.8%)、無給が13.7%(同7.0%)で、全額負担の事例が大半を占めています。ちなみにリフレッシュ休暇を含めた特別休暇制度の導入状況は下表のとおりです。

特別休暇制度の導入状況
厚生労働省 平成25年就労条件総合調査(※3)をもとに作成
厚生労働省 平成25年就労条件総合調査(※3)をもとに作成

●有給休暇の平均取得日数は8.6日

日本では誰でも連続して取得できる長期休暇として定着してきたのは夏季休暇ぐらいですが、その最高付与日数は平均4.3日となっており、前後の土・日を合わせて9日間としても、欧米先進国並みの連続2週間には届きません。他方、勤続年数に応じて付与日数が増える有給休暇は、法律上は勤続6年6ヶ月以上で上限の20日間付与されます。土日や夏季休暇と合わせれば2週間以上の長期の休みを取ることも難しくないように見えますが、平成25年の有給休暇平均取得日数は8.6日、取得率は47.1%で、大半の人が取り残している実態が見て取れます(※3)。
有休を取り残す理由としては、病気や急な用事のために残しておく、同僚の迷惑になるので取りづらい、仕事量が多すぎて取れない、休暇中に仕事を引き継いでくれる人がいない、他の人が取らないので取りづらいといった職場要因が多く、いつでも好きなときに自分のリフレッシュを目的にまとめて休むわけにはいかない実態があります。

※3 厚生労働省 平成25年就労条件総合調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou01.html

定年退職の時期を迎えるまでは、これまで多くの日本人は仕事中心の生活が当たり前だと思ってきました。しかし、価値観が多様化し、ワーク・ライフ・バランスの考え方が常識として採り入れられるようになってきてからは仕事以外の個人生活及び家庭生活も充実させたいと願う人が増えてきています。長期休暇の導入が広がれば、働く人のQOWL(クォリテイ・オブ・ワーキング・ライフ)の向上へとつながっていくでしょう。

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