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(情報掲載日:2014年5月12日)

人材マネジメントライブラリ

新入社員のモチベーションを上げるには

VOL.28


1人で100社近く応募するなど、激化する就職活動をくぐり抜けて入社してきた新入社員がモチベーションを上げて一人前の会社員として育つためには、どのような働きかけが効果を上げるでしょうか。新入社員の就業意識に関する調査や最近のモチベーション理論、企業事例をもとに、新入社員のモチベーションを上げる施策のポイントをご紹介します。

新入社員の就業意識はどう変化したか

●2014年の新入社員は「自動ブレーキ型」

1973年の「パンダ型」(おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変という意味)から始まり、例年、その年の新入社員のタイプについて世相をからめたキーワードで表すネーミングが発表されてきました。2014年の新入社員のタイプは「自動ブレーキ型」でした(※1)。就職活動を手堅く進め、そこそこの内定を得ると、壁にぶつかる前に活動を終了し、何事も安全運転の傾向が見られるので、あたかも最近のハイテク自動車に搭載されている「自動ブレーキ」のようであるという意味です。

●最近2年間の新入社員は「安全志向」が強い

「そこそこの内定」が得られれば就職活動を終結するという「安全志向」 は、2013年入社の新入社員にも現れています。新入社員の「働くことの意識」調査(※2)によると、第1志望の会社に入社できた人の割合が最近5年間で最も低くなっています。スマートフォンが急激に普及し、インターネットで応募することが当たり前になり、1人で100社近い企業にエントリーすることが常識と言われるなど、就職活動が激化する中で、まずは内定を得ることを優先し、志望レベルを低下させる学生が多かったことを窺わせます。

「第1志望の会社に入れた」と答えた新入社員の割合の推移と就職率(いずれも4年制大学卒業者)

「第1志望の会社に入れた」と答えた新入社員の割合の推移と就職率(いずれも4年制大学卒業者)
公益財団法人日本生産性本部 新入社員の「働くことの意識」調査結果

●会社選択の理由の第1位は「能力、個性が生かせるから」

前述の調査(※2)によると、2013年入社の新入社員が会社を選んだ理由の第1位は「自分の能力、個性が生かせるから」で35.8%にのぼりました。第2位は「仕事がおもしろいから」で22.3%となっています。
下図は、全部で13項目ある会社選択理由を3つのグループに色分けしたものです。「能力、個性が生かせるから」など青色をつけた項目は内的な動機づけの要因となるものであり、「会社の将来性」など赤色をつけた項目は外的な環境要因といえます。そのどちらでもないものは緑色となっています。上位3位までが内的な動機づけの要因となっていることが分かります。

会社の選択理由(2013年入社)
会社の選択理由(2013年入社)
公益財団法人日本生産性本部 新入社員の「働くことの意識」調査結果をもとに作成

●「会社頼み」から自分の可能性を追求する志向に変化してきた

前述の調査は1971年(昭和46年)から40年以上も継続して行われています。高度成長期の末期にあたる1971年〜73年は「会社の将来性」が第1位でした。いわば外的な環境要因が優位な時代であったと考えられます。その後の安定成長期には「能力・個性を生かせる」の回答率が急増し、首位と僅差の2位の位置につきました。内的な動機づけの要因と外的な環境要因が同等に重んじられていた時代と言えるでしょう。一転してバブル崩壊後の2001年には「仕事がおもしろいから」が首位になりました。最近では「会社の将来性」を挙げる人は10%以下となっています。「不確実性の時代」と言われ、経営環境が大きく変化して会社の将来性を予測することが難しくなる中で、新入社員の会社選択は内的な動機づけの要因の優位性が徐々に高まり、会社の将来性頼みから自分の可能性を追求する志向へと、就業意識が変化してきたことが分かります。

※1  公益財団法人日本生産性本部 平成26年度 新入社員のタイプは「自動ブレーキ型」
http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity001406/attached.pdf

※2  公益財団法人日本生産性本部 平成25年度新入社員「働くことの意識」調査
http://activity.jpc-net.jp/detail/lrw/activity001381/attached.pdf

モチベーションを上げる方法とは

●達成に対する承認がモチベーションを上げる

自分の可能性を追求する志向をもって入社してきた若者の仕事に対するモチベーションを高めていくには、どのような方法が有効でしょうか。何が働く人のモチベーションを上げるかについては、今日までさまざまな研究が行われてきました。近年の研究でよく知られているのは、ハーツバーグが提唱したモチベーションの二要因理論です。ハーツバーグは1960年代に米国ピッツバーグ市で多数の働く人にインタビュー調査を行った結果、モチベーションを上げる「動機づけ要因」とモチベーションを下げる「衛生要因」の二要因があることを見出しました。

モチベーションの二要因理論
モチベーションの二要因理論

モチベーションを上げるには、本人に達成感があることや、上司や周囲の人が達成について承認すること、あるいは与えられる仕事そのものの内容が重要な要因となるとハーツバーグは主張しており、これに異論を唱える人は少ないでしょう。会社あるいは自分にとって意味のある仕事を与えられ、責任を持たされれば、「期待に応えるためにがんばろう」と思えるでしょう。また、仕事の成果が出て、そのことについて褒められれば、「もっとがんばろう」という気持ちになるはずです。
ただ、一般的に新入社員がいきなり重要な仕事を任されることはなく、仕事で何らかの成果を出すまでには時間がかかります。この時期は動機づけ要因よりも衛生要因が大きく影響するようです。上司や先輩の役割でいえば、監督の仕方、作業条件へ配慮することによって、新入社員のモチベーションを下げないようにすることがポイントです。対人関係については、上司や先輩のほうから新入社員に声をかけ、孤立させたり、不安にさせたりしないようにする必要があります。とくに入社1〜2ヶ月の間は「五月病」と言われるように精神状態が不安定になりがちな時期です。
この時期を乗り越えて新入社員が職場の雰囲気になじみ、仕事の流れがひととおり分かってきたら、「動機づけ要因」を活用するタイミングが訪れます。上司や先輩から見て「こんなことはできて当たり前」と思えるような小さな達成であっても、「よくできた」、「これができれば大丈夫だ」といった承認を与えるようなかかわり方が、新入社員のモチベーションに影響します。ほめておだてるということではなく、「自分はこの職場の一員として認められた」という気持ちにさせることに意味があります。

●現代に合うモチベーション施策とは

自分の内面から湧き出てくる「やる気そのもの」がモチベーションを高めるという「モチベーション3.0理論」を唱えたのがダニエル・ピンクです。この理論は、仕事の成果責任や達成能力を持ちきれていない新入社員のモチベーションを高める直接的なヒントになりそうです。「3.0」とは人間のモチベーションを1.0〜3.0の3段階に分ける考え方です。「3.0」は第3世代を意味し、人をコンピュータの基本ソフト(OS)に例えて、時代とともに進化してきたとピンクは説明しています。
最も原初的な「モチベーション1.0」は人類が誕生したころのもので、富や名誉といった価値観が生まれてくる前の、ただ単に空腹を満たすために狩をするといった、生存に直結した動機づけです。
「モチベーション2.0」は金銭や名誉の獲得等、外発的な欲求を満たす動機付けです。
「モチベーション3.0」は人間のモチベーションの最新の進化形で、内面から湧き出るような「やる気」のことで、仕事の成果ではなく、仕事をすること自体がおもしろいという内的な欲求を満たす動機づけです。「自分の個性、能力が生かせるから」とか「仕事がおもしろいから」といった理由で会社を選ぶ最近の新入社員には、内面から湧き出てくる「やる気」を活かすような仕組みが重要でしょう。

モチベーション3.0への進化過程
モチベーション3.0への進化過程
『モチベーション3.0 持続する「やる気」をいかに引き出すか』をもとに作成(※3)

●自律性、熟達性、目的意識の3つが鍵になる

ピンクは著書の中で自分の内面から湧き出る「やる気」を活かす仕組みをつくるには、自律性、熟達性、目的意識 の3つが鍵になると説明しています。

「やる気」を活かす仕組みをつくるときの3つのキーポイント
「やる気」を活かす仕組みをつくるときの3つのキーポイント
『モチベーション3.0 持続する「やる気」をいかに引き出すか』をもとに作成(※3)

1つめの「自律性」の事例にある「20%ルール」を導入している企業は米国には多数あり、たとえばよく使われている事務用品の「ポスト・イット」は20%ルールで認められた時間に発明されたそうです。
2つめの人を熟達へと導く「フロー状態」については、ナレッジマガジンVol.21の「いまを勝ちぬく人間力」(※4)で詳しく紹介していますが、楽しさのあまり、その対象に没入して時間や空間の感覚を失ってしまう状態のことです。それは極度に集中力を高めたときに起きる現象で、非常に生産性が高く、しかも充実感を味わえる至福の体験と言われています。ほうびで人を駆り立てるよりも、フロー状態に入りやすいように支援することのほうが、「やる気」は持続すると言えそうです。
3つめの「社会的利益を目的とする」という点では、最近の新入社員の就労意識と重なる部分があります。前述の調査(※2)では新入社員に就労意識をたずねる質問があり、選択式の13項目の中で最も回答率が高かったのが「社会や人から感謝される仕事がしたい」で95.7%にのぼりました。
熟達性については経験の浅いうちは感得することが難しく、また、1人前の働きができるようになるまでは自律性でモチベーションを刺激することもできないかもしれません。企業は新入社員に対し、働く目的意識を明確化させるためのサポートをすることが最も有効でしょう。

※3 ダニエル・ピンク著『モチベーション3.0 持続する「やる気」をいかに引き出すか』(講談社)

※4 テンプ ナレッジマガジンVol.21「フロー状態」を活用してビジネスで成果を上げる
http://www.tempstaff.co.jp/magazine/ningenryoku/vol21.html

企業事例に見るモチベーションを上げる工夫

●新入社員のリアリティ・ショックを防止する

新入社員の教育上のリスクという観点からすると、入社前にイメージしていたことと現実の違いにショックを受けて(リアリティ・ショック)、モチベーションが落ちる場合があります。このような危機を乗り越えさせるには、年の近い先輩が身近にいて相談相手になり、よくできたことは承認して励まし、改善すべき点について考えさせて改善法を引き出すような役割を果たす「ブラザー・シスター制度」が有効のようです。企業によっては「メンター制度」と呼ぶところもあります。
この制度で効果を上げるには、ブラザー、シスター役をする3年目程度の若手社員に対する教育が重要な意味を持ちます。教え込むというより、共に考え、引き出す手法であるコーチング、新人の悩みにじっくり耳を傾ける傾聴技法と、良いことは良いと認めて自信をつけさせるような応答と承認の技法などを学ぶと良いようです。ブラザー、シスター役にとっては、教え、励まし、促すことで自らも教えられ、気づき、成長する機会につながっていくと言われています。

●お互いにほめ、認め合う風土をつくる

マン・ツー・マンで新入社員を育てる「ブラザー・シスター制度」に加え、組織全体でお互いにほめ、認め合う風土があれば、新入社員はその多くが望んでいるように「自分の能力・個性を生かせる」とか「仕事がおもしろい」と感じることができるでしょう。お互いにほめ、認め合う風土をつくる制度として、「サンクス法」を取り入れる企業があります。社員の何らかの行動に対して感謝の言葉や賞賛する言葉をカードに記入して投票するもので、半期または1年に1回、投票数や内容を集計し、表彰などを行うものです。カードはB5サイズの半分くらいの専用の用紙をつくり、「サンクスカード」などと名付けられています。社員ばかりでなく顧客からも「サンクスカード」を募り、社内に掲示している企業もあります。この制度は、内面から湧き出る「やる気」や仕事へのやりがいやプライドの獲得という側面に価値が置かれています。早く一人前の社員として通用するようになりたいと考えている新入社員にとっては、「サンクスカードが10枚に達したら一人前だ」といった具体的な目標ができることでしょう。

会社頼みというよりも、自分の可能性の追求に対する意欲が高い最近の新入社員のモチベーションを高めていくには、内面から湧き出る「やる気」を醸成するようなモチベーション施策が適していると言えそうです。ただ、多くの新入社員が期待しているように「仕事がおもしろい」と感じられるまでには時間がかかるはずです。挫折も経験するでしょう。そのときに心が折れないようにするには、メンタル的なサポートが必要になってきます。上司、先輩、人事部、社内講師、社内キャリアコンサルタントなど、社内のさまざまな人たちがサポートを行うことにより、新入社員の就労意識が明確になり、高いモチベーションをもって仕事に取り組むことができるようになるかもしれません。

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