メールマガジンの定期配信をご希望のお客さまは以下のボタンからお申込みください。

配信申込⁄停止

(情報掲載日:2014年3月20日)

人材マネジメントライブラリ

70歳以上も働ける仕組みをつくる

VOL.27


2013年4月から、希望者に対する65歳までの雇用延長が企業に義務付けられました。今後さらに老齢年金の受給開始年齢が70歳に引き上げられる可能性が高いと言われる中で、70歳まで、あるいは70歳以上も働ける仕組みづくりが求められています。処遇など、企業がシニアの雇用について配慮すべき点と活躍の場づくりについてご紹介します。

65歳まで働ける企業が大幅に増加

●望めば65歳以上まで働ける企業は全体の約66%

高年齢者雇用安定法では、65歳までの安定した雇用を確保するため、企業に対して①継続雇用制度の導入、②定年の引き上げ、③定年の定めの廃止のいずれかの措置(高年齢者雇用確保措置)を講じるように義務づけており、さらに毎年6月1日現在の定年及び継続雇用制度の状況その他高年齢者の雇用に関する状況の報告を求めています。
厚生労働省が2013年10月30日に発表した集計結果(※1)によると、希望者全員が65歳以上まで働ける企業は大幅に増加し、法改正前の前年と比べて2万社以上多い9万5,081社となり、割合では約66%に達しました。企業の取り組みとしては、希望者全員に対し「65歳以上の継続雇用制度を導入」した企業が最も多く、全企業では49.1%、従業員301人以上の企業で42.0%、従業員31〜300人の企業で49.9%となっています。
65歳までの雇用確保措置が義務付けられているにも関わらず、希望者全員が65歳以上まで働ける状態になっていない理由は、老齢厚生年金の受給開始年齢に絡んだ経過措置があるためです。改正高年齢者雇用安定法が施行されるまで(2013年3月31日)に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として老齢厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。

希望者全員が65歳以上まで働ける企業
希望者全員が65歳以上まで働ける企業
厚生労働省「平成25年 高年齢者の雇用状況」(※1)をもとに作成

●70歳以上も働ける企業は約18%

今後は老齢厚生年金の受給開始年齢が65歳から70歳まで引き上げられる可能性が高いと言われており、そうなれば70歳まで働き続けることが可能な仕組みづくりが必要になってきます。前掲の厚生労働省の調査によると、70歳以上も働ける企業は全体で2万5,993社にのぼり、割合は全企業の約18%です。何らかの基準を設けて該当者に70歳以上の継続雇用制度を適用する企業の割合が最も多く、全体で6.8%となっています。また、従業員301人以上の企業と従業員31〜300人の企業を比べると、後者のほうが70歳以上も働ける仕組みの導入が進んでいることが分かります。その理由の1つとして、大企業に比べて中小企業のほうが新規学卒者の採用が難しい等の理由で人材の不足感があり、シニアの活用が不可欠になっていることが考えられます 。

70歳以上も働ける企業
70歳以上も働ける企業
厚生労働省「平成25年 高年齢者の雇用状況」(※1)をもとに作成

※1 厚生労働省「平成25年高年齢者の雇用状況」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11703000-Shokugyouanteikyokukoureishougaikoyoutaisakubu-Koureishakoyoutaisakuka/100.pdf

※2 厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/qa/

シニアの就労意識

●日本のシニアは欧米諸国に比べて生涯現役志向が強い

日本のシニアは欧米諸国に比べ、働き続ける意欲が高くなっています。日本では望ましい退職年齢を「70歳ぐらい」以上とする人が年々増加しており、平成12年 30.2%、平成17年33.5%、平成22年36.0%となっています(※3)。
また、平成22年の国際比較調査をみると、望ましい退職年齢を「70歳ぐらい」以上とする人の比率はアメリカ17.8%、ドイツ2.7%、スウェーデン2.0% となっており、日本の36.0%が最も高いことがわかります。欧米諸国にはハッピーリタイアメントという言葉がありますが、日本ではむしろ「生涯現役」という言葉に共感を覚えるシニアが多数派を占めるようです。

望ましい退職年齢(国際比較)
望ましい退職年齢(国際比較)
内閣府「第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(※3)をもとに作成

●生涯現役を目指す理由は経済的な事情

60歳以上の収入のある仕事をしている人が「生涯現役」を目指す理由は、「生きがい」といった精神的な価値以上に経済的事情が大きいようです。内閣府の調査(※4)によると、理由として挙げられていた項目の第1位は最近10年間を通じて「生活費をまかなうため」で、平成13年52.2%、平成18年53.9%、平成23年59.1%と、少しずつ増えてきています。他の項目でも、「将来に備えて蓄えをできるだけ増やすため」、「生活費の不足をおぎなうため」、「おこづかいがほしいから」といった経済的な事情に関する項目の回答率が上がってきています。

60歳以上の人が収入のある仕事をしている理由(3つまでの複数回答)  単位:%
60歳以上の人が収入のある仕事をしている理由(3つまでの複数回答)
内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」(※4)をもとに作成

※3 内閣府「第7回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h22/kiso/gaiyo/pdf/kekka.pdf

※4 内閣府「高齢者の経済生活に関する意識調査」
http://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h23/sougou/gaiyo/pdf/kekka.pdf

雇用継続したシニアの処遇をどうするか

●最低賃金などの雇用ルールの範囲内で処遇を変えられる

高年齢者雇用安定法の改正に従って従業員が65歳まで、あるいは70歳以上も働ける仕組みを企業が設けるとしたら、処遇の問題に取り組む必要があります。その場合、(1) 雇用形態の変更(正社員からパートタイマー、契約社員、嘱託社員等に変更する)、(2)勤務日数および1日あたりの勤務時間の削減、(3)一定年齢のシニアの賃金テーブルを別形態にするといった方策のいずれか、あるいは複数の組み合わせを用いて、仕組みを設けるのが一般的です。
厚生労働省の「高年齢者雇用安定法Q&A」(※2)によると、継続雇用後の労働条件については、高年齢者の安定した雇用を確保するという高年齢者雇用安定法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金などの雇用に関するルールの範囲内で、フルタイム、パートタイムなどの雇用形態 、労働時間、賃金、待遇などに関して、事業主と労働者の間で決めることができます。高年齢者雇用安定法が求めているのは継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではありません。事業主の合理的な範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等についての合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではないと説明されています。

●雇用形態は嘱託・契約での再雇用が多い

継続雇用後の雇用形態は、2008年の厚生労働省の調査(※5)によると、いったん退職した後の再雇用の場合は嘱託・契約社員60.0%、正社員・正職員32.9%、パート・アルバイト15.0%の順に多くなっています。一方、退職を伴わない勤務延長の場合は正社員・正職員55.4%、パート・アルバイト22.3%、嘱託・契約社員15.4%となっています。このほか、「週3日勤務で概ね2人で1人分の業務を担当する」といったワークシェアリングもみられます。
また、1年ごとに雇用契約を更新する場合は、年齢のみを理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当ではないとされます。したがって、(1)65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと、(2)65歳までは原則として契約が更新されることが必要であると考えられますが、個別の事例に応じて判断されることとなります。

●給与・評価はどうする?

シニアを継続雇用した場合の年俸については、定年前と同等という例は少なく、多いところで定年前の7割、少ないところでは4割とする例も見られます。賞与を支給する場合は査定によって変動しない固定部分のみとする例が従来は多く見られました。ただ、それでは継続して働いても「張り合いがない」という声を受けてシニアの月々の給与や賞与の額を評価に応じて変える企業が出てきています。その方法としては、次のようなパターンが見られます。

(1) 固定給プラス評価給
(例) 評価に応じて固定給に対して加算・減算を行って支給する。賞与も評価によって変動する。

(2) 2年目から個別に昇給率を決める
(例) 1年目は社内の計算式に従った固定給を一律支給する。2年目からは初年度の年俸(固定給プラス賞与)を基準に業務への貢献期待度や職務能力に応じ、数段階に分けて昇給率を決める。

(3) パート社員とフルタイム社員に分け、フルタイム社員には業績評価を行う
(例) 雇用継続の希望者であれば誰でも受け入れるパート社員と、評価によって採否を決めるフルタイム社員に分け、フルタイム社員には業績評価を行う。

上記のようにシニアの意欲を高めるために、個人の評価に応じて固定給への上乗せ額や昇給率を決める評価制度を導入する企業が増えています。場合によっては人件費総額が上昇しますが、自社が提供するサービスや商品の質を向上させるための「投資と考える」という企業もあります 。

※5 厚生労働省「平成20年高年齢者雇用実態調査」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/keitai/08/kekka.html#1

雇用継続後のシニアが活躍できる場づくり

●シニアの経験を活かせる場をつくる

シニアが活躍できる場づくりとしては、長い経験を通じて身につけた技術やノウハウを若手に指導する教育指導職のような役割を設ける例や、社員からの相談に幅広く応じるキャリア・コンサルタントのような役割を設ける例が見られます。また、現役の営業職として活躍を続ける場をつくる例も見られます。

(1)教育の担い手として
技術職出身のシニアには、「スキルインストラクター」として、若手に技術を伝える役割を任せる例があります。長年の経験で培った「カン」や「コツ」を伝えるために、マンツーマンで配置する例もあります。営業職出身のシニアはセールスのノウハウを若手に教える営業指導職として活躍の場を設ける企業も多く見られます。仕事の内容はもちろん、言葉遣いやマナーでも教育できることが多いでしょう。

(2)営業職として
営業拠点では、直行直帰型の営業職として活躍している例が見られます。企業にとっては、長年、取引先と信頼関係を築いてきたシニアに任せることで安心でき、シニアにとっては直行直帰型であればマイペースで動けるので、体力・気力の面で仕事を続けやすいというメリットがあるようです。

(3)社内キャリア・コンサルタントとして
現場だけでなく管理部門などを幅広く経験したり、管理職として部下の評価や育成も経験したシニアは社内キャリア・コンサルタントとして活躍している例が見られます。社内の各部門の業務について詳しく、現場に幅広いネットワークを持っているので、社員のキャリアについての相談役として適任であると同時に、職務によっては仕事のノウハウを伝えるビジネスコーチの役割も兼ねられます。

今後、少子化による若年労働力人口の減少に歯止めがかからない中で企業が成長力を保っていくには、シニアの活力を生かすことが不可欠と言えそうです。シニア人材の個別の能力や経験を把握したうえで、自社の実情に合わせた適材適所の配置、育成、処遇の仕組みを整える準備を進めていきたいものです。

配信申込⁄停止

“旬”なテーマで人材活用やビジネスに関するお役立ち情報をお届けします。メールマガジンの定期配信をお申込みのお客様は左のボタンからお気軽にどうぞ。

このページのトップへ

人材マネジメントライブラリ 一覧へ