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(情報掲載日:2014年2月20日)

人材マネジメントライブラリ

いま見直されている退職金の仕組み

VOL.26


経営環境の変化で、企業は退職金の積み立てが不足するリスクを抱えているため、退職金の制度設計や運営方法の見直しが行われています。給付額は5年前に比べて平均約340万円の大幅減となりました。いま見直されている退職金の仕組みについてご紹介します。

退職金が減っている

●大卒会社員の退職金が15%の大幅減

厚生労働省の平成25年就労条件総合調査(※1)によると、2012年に定年を迎えた大卒会社員の退職金(退職給付額)は平均1,941万円、月収換算で37.6ヶ月分であり、5年前の2,280万円より約340万円(15%)の大幅減になりました。退職金の減少は、定年が近い中高年ばかりでなく、若年層にも将来への不安を残します。なぜ、退職金が減少したのでしょうか。

学歴別退職者1人平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)
学歴別退職者1人平均退職給付額(勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者)
厚生労働省 平成25年「就労条件総合調査」
1)「退職金給付額」は、退職一時金制度のみの場合は退職一時金額、退職金年金制度のみの場合は年金現価額、退職一時金制度と退職年金制度併用の場合は、退職一時金額と年金現価額の計である。
2)「月収換算」は、退職時の所定内賃金に対する退職給付額割合である。

●中高年の賃金上昇抑制が退職金の減額をもたらした

退職金が5年前に比べて減少した主な理由は、中高年の賃金上昇が抑制され、退職金の算定基準となる退職時の賃金が減ったためと考えられます。なぜ、抑制されたかというと、団塊ジュニア世代以降の40代、50代の層は企業の年齢構成の中でボリュームゾーンとなっており、また、年功に応じて給与が上がる仕組みを採用している企業では人件費コストの総額に占める割合が高くなり、経営を圧迫しているからです。経営へのダメージを小さくするため、管理職を主な対象として成果主義を導入し、年功ではなく実績に応じて賃金を決定する仕組みを採用したり、50歳あるいは55歳で役職定年制を導入するなどして、中高年の賃金を抑制しています。
もう1つの理由としては、退職時の賃金に応じる基本給連動型の退職金の仕組みを変えて個人の貢献度に応じて調整できるようにする企業が増え、その結果として退職金が下がったとも考えられます。

※1 厚生労働省 平成25年就労条件総合調査結果の概況(5退職給付(一時金・年金)の支給実態)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou05.html

退職金の仕組みを変える企業が増えてきた

●退職時の賃金以外で退職金を算定する企業は44.6%

厚生労働省の平成25年就労条件総合調査(※2)によると、全体では「退職時の賃金」をベースに退職金を算定する企業の割合が55.6%、 それ以外の「別に定める金額」に基づく決め方をしている企業は44.6%となっていますが、大企業ほど「別に定める金額」に基づく決め方をしている企業が多く、従業員1,000以上の大企業では74.9%、300人〜999人では63.6%となっています(複数回答)。

●ポイント制で退職金を算定する企業が多い

「別に定める金額」に基づく決め方には、ポイント制方式、別テーブル方式、定額方式などがあります。この3つの方式の中ではポイント制方式をとる企業が最も多く、19.0%となっています。また、大企業ほどポイント制方式で退職金を算定する例が多く、従業員1,000人以上の企業では51.3%、従業員300〜999人の企業で39.6%となっています。
これら3つの方式はすべて基本給と退職金を切り離して行う算定方法です。このように、退職金の算定方式を従来の退職時の賃金に応じる基本給連動型から変更する企業が増えてきています。

退職一時金算定基礎額の種類別企業割合(退職時の賃金以外を算定基礎額とする場合) (%)
退職一時金算定基礎額の種類別企業割合(退職時の賃金以外を算定基礎額とする場合)
厚生労働省 平成25年「就労条件総合調査」

●ポイント制方式は従業員の貢献度を退職金に反映できる

ポイント制方式は、職能、評価、社内資格等をポイント化して個々の従業員の退職金を算定するものです。年功的要素は比較的小さく、退職時の年齢ではなく、それまでの貢献度の累計で退職金が決まる仕組みです。また、金利の変動等に応じて1ポイントあたりの単価を上げ下げすることにより、全体の給付総額をコントロールできます。
ポイント付与のルールにより、ポイント制方式の退職金は下表のような3つのタイプに分けられます。 ポイント制方式を導入するには、職能資格制度、職務グレード制度など、従業員を等級に格付けする制度が既にあることが前提になります。

ポイント制方式の退職金のタイプとポイント付与のルール
ポイント制方式の退職金のタイプとポイント付与のルール

●別テーブル方式、定額方式は退職金の管理がしやすい

別テーブル方式、定額方式は、基本給とは別に退職金の額を定めるという点で共通しています。基本給連動型に比べると、景気の変動による影響や年功的要素が比較的小さくなるように設計できます。
このうち別テーブル方式は、「勤続10年であれば会社都合100万円、自己都合60万円」というように、一般的には勤続年数と退職理由に応じた基準額を設定し、さらに役職など等級別に応じた係数を乗じて退職金額を算出する制度です。たとえば「1〜3等級であれば基準額に0.6を乗じ、4・5等級は基準額に1.0を乗ずる」とするものです。この制度は基本給連動型と似ていますが、将来いくらとなっているか分からない基本給を基準としていないという違いがあります。このため、将来にわたって退職金の総額の管理がしやすいという特徴があります。
定額方式は、「勤続20年なら400万円」というように、勤続年数に応じて金額を決めるものです。役職などを加味しないため、さらに退職金の総額管理がしやすくなります。

※2 厚生労働省 平成25年就労条件総合調査結果の概況(4退職給付(一時金・年金)制度)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou04.html

退職金制度を見直すときの注意点と選択肢

●新会計基準の導入で積立金不足のリスク回避が課題に

退職金の算定方式を変更するといった部分的な改変を行っても、退職金が確定給付型であることには変わりなく、従業員に示した金額を確実に払えるようにするために、会社側には退職金原資の運用リスクと責任が伴います。退職金の積み立て不足は、企業にとって由々しき問題です。2014年3月期から日本の会計基準に新たなルールが適用され、退職金や企業年金のための積立て不足を負債として貸借対照表に計上することになりました。負債が増えて自己資本が目減りすれば、格付けの低下や資金調達コストの上昇につながってしまいます。そこで、退職金の算定方式を見直し、積立不足になりにくい方式を導入する必要が生じています。

●退職金をどうするかについての選択肢

民間の企業については、法律上必ずしも退職金の支払い義務はなく、制度設計に関して自由度が大きくなっています。したがって退職金の廃止もあり得るわけです。とはいえ、厚生労働省の平成25年就労条件総合調査によると73.5%の企業が退職金制度を持っています。
廃止も含め、退職金制度をどうするかについての選択肢としては、下表のような方法が考えられます。1つの方法だけでなく、複数を組み合わせて運用することも可能です。

退職金制度を見直すときの選択肢
退職金制度を見直すときの選択肢

人材流動化で変わる退職金の意味合い

●退職金の前払い方式のメリットとは

高度成長下の人材不足時代には従業員の早期離職を防ぎ、定着を促すという意味で退職金制度には大きな効果がありましたが、昨今では人材の流動化を妨げるとの意見もあります。その点、退職金の前払い方式は、「将来会社がどうなるか分からないので、もらえるうちにもらっておこう」と考える若年層の意識にマッチし、人材流動化を妨げない制度であると言うことができるかもしれません。また、企業にとっては積立不足問題が発生しない、企業への貢献度をすぐに賃金に反映できる、損金として計上できるというメリットがありそうです。

●確定拠出型年金のメリットとは

確定拠出年金の場合、会社が変わってもそれまでの資産は持ち越せるので、仮に転職をしても、転職先に確定拠出年金の制度があればそのまま運用を続けることができ、制度がなければ個人型年金へ資産を移換して運用できます(※3)。また、企業にとっても確定拠出型を導入していることが、求職者へのアピールになるかもしれません。確定拠出年金を導入する企業が増えれば、年金のポータビリティーが広く通用するようになり、さらに人材の流動化を促進することになりそうです。

終身雇用が崩れてきているいま、退職金について、従業員が企業に全面的に依存している状況は企業、従業員の双方にとってリスクがあります。もともと退職金は、従業員の年功への報奨として企業が支給するという意味合いがありましたが、成果主義の考え方が入ってきたことにより、現状にそぐわないものになってきているのかもしれません。
年功という1つの観点だけでなく、企業への貢献度のほか、金利や景気といった経営環境の変動に対してフレキシブルに応じることのできる退職金制度が必要でしょう。
企業は単に制度を変更するだけでなく、従業員が若いうちから老後の備えについて積極的な関心をもち、自立的な資産形成ができるようになるための機会や場を設けることが必要といえそうです。

※3 厚生労働省 確定拠出年金のポータビリティー
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kyoshutsu/portability.html

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