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(情報掲載日:2013年10月21日)

人材マネジメントライブラリ

「職業能力評価基準」を使った育成と評価

VOL.22


従来の年功序列型ではなく、能力や仕事の成果で個人を評価する制度につくり替える企業が増えています。公平性、透明性のある業界標準的な能力評価基準として厚生労働省が提供している「職業能力評価基準」の活用法についてご紹介します。

職業能力を可視化する仕組みとは

●50業種248職種を網羅する「職業能力のデータベース」

職業能力という目には見えないものを、能力評価表やキャリアマップなどによって可視化したものが、「職業能力評価基準」です。「職業能力評価基準」は、厚生労働省の委託で中央職業能力開発協会が作成し、サイト上で公開しています(※1)。職務定義書、能力評価表、職種別のキャリアマップなどの文書や図表を無料でダウンロードでき、自由に使うことができます。
2002年にスタートして以来、毎年新たな業種・職種が追加され、2013年5月現在で50業種248職種を網羅しています。業務横断的な経理、広報、人事といった事務系の職種から、製造業、建設業、サービス業などの業種ごとの専門職や技能職に至るまで、詳細な職務分析を行い、求められる能力要件別、さらに経験年数や習熟度による4段階のレベル別に評価表などのツールを提供しています。言わばわが国における「職業能力のデータベース」として、人材育成の達成目標、昇進・昇格時の評価基準、あるいは中途採用時の選考基準に活用することができます。

●採用・教育・評価の人材マネジメントに役立つ

この基準が作られた背景には、従来の年功序列的な職能評価制度の仕組みが通用しづらくなり、個人の能力発揮や仕事の成果をもとに評価する新しい基準が必要になってきたという事情があります。多くの企業では、ポスト不足の中高年層のモチベーションの向上や、中途入社者に対する公平な処遇といった課題を解決するために、評価制度の見直しを迫られているようです。今後、さらに企業の中に多様な人材が集まるようになると、配置・教育・評価という一連の人材マネジメントに関して、公平性、透明性、納得性のある基準が必要になってきます。
「職業能力評価基準」は、各職種に関する経験年数のレベル別の評価の基準だけではなく、適材適所の配置の参考になる職務定義書や、各レベルに求められる知識やスキルの一覧といった情報も含まれています。キャリアパスが未整備な企業にとっても、わかりやすく使い勝手のよい人材マネジメントツールになっています。

※1 中央職業能力開発協会「職業能力評価基準とは」
https://www.hyouka.javada.or.jp/user/outline.html

採用・教育・評価への活用方法

●職種・レベル・能力細目別の職務遂行能力の評価ができる

「職業能力評価基準」のデータベースの中から、自社に関連のある業種・職種を検索して取り出すことにより、育成や評価のツールとして活用することができます。例えば「人事部門」の職務を例にとると、「人事」「人材開発」「労務管理」の3つに分けられています。各職務で要求される能力項目は「ユニット」として整理され、3職務共通の「共通能力ユニット」は6ユニットあり、また、それぞれの専門性に応じた「選択ユニット」がいくつか設定されています。
他方、経験年数や習熟度に応じた「レベル」が4段階設定されています。「人事」の分野では、レベル1は「スタッフ」、レベル2は「シニア・スタッフ」という名称で区分され、レベル3は「スペシャリスト」及び「マネジャー」、レベル4は「シニア・スペシャリスト」及び「シニア・マネジャー」の2段階に分けられています。

「人事」の職業能力評価基準の一覧 (一部抜粋)
「人事」の職業能力評価基準の一覧
(「○」は当該能力ユニットの評価基準があることを示す)

各ユニットのファイルには、各職務において必要とされる行動要件(職務遂行のための基準)が記載されています。例えば「人事」の選択能力ユニットの「人事企画・雇用管理基礎」に該当する部分のファイルを開いてみると、そこには3つの能力細目(@担当業務に関する作業方法・作業手順の検討、A人事企画・雇用管理実務の推進、B担当業務に関する創意工夫の推進)と合計12項目にわたる職務遂行のための基準がエクセルのシートに示されています。
これを様々な場面で活用することができます。例えば社員の評価に使うことができます。元の表をアレンジして、「自己評価」と「上司評価」の欄を加えたのが下表です。それぞれS (大変優れている)、A(優れている)、B(基準に達している)、C(基準に達していない)といった4段階評価をつけることによって、期中の仕事の成果および能力発揮についての評価の判定をすることができます。

「人事」職種の「人事企画・雇用管理基礎」(レベル1)の評価基準を応用した評価表の例(中略)
「人事」職種の「人事企画・雇用管理基礎」(レベル1)の評価基準を応用した評価表の例

評価の結果は、ボーナス等の処遇に反映させたり、ワンランク上のレベルに昇格するための人材育成目標として活用することもできます。厚生労働省は、高度専門職の育成のツールとして活用してほしいと考えているようです。

●中途採用時の面接シートとしての活用

上記のような職種別・能力ユニット別の能力評価基準のほかにも、役立つツールがさまざまに用意されています。製造業の「組立」、介護の「訪問介護」等の即戦力採用が多い専門性技能系職種については、評価基準をアレンジした「人材要件確認表」があり、これを面接時の評価シートとして活用することができます。
この「人材要件確認表」には、「判定の際のチェックポイント」が能力細目別にまとめられています。「訪問介護」を例にとると、「本人の実務経験に関する事項」には4項目があり、たとえば「経験業務」のチェックポイントとしては、「どのような業務経験があるか(仕事の内容、経験年数、自分の役割は何だったか、交替制勤務・夜勤の有無等を具体的に語らせる)」と表記されており、その右側に能力確認の判定と面談者の所見を記入する欄が設けられています。また、「本人の基礎能力に関する事項」には「仕事に対する基本姿勢」「コンプライアンス」「目標管理」「チームワーク」などの6項目があり、たとえば「チームワーク」のチェックポイントとしては「上司や先輩、同僚とうまくやっていくために、どのようなことに気をつけていたか(具体的に語らせる)」と表記されており、同様に判定欄と所見記入欄が設けられています。
細かい点まで表現されているので、どのような求職者であっても一定の項目について能力把握ができる仕組みとして活用できると考えられます。

●配置・異動の際の職務記述書としての活用

職種別の採用や配置・異動を行う際に、その職務や職責を明示し、理解させるのに役立つツールである「職務記述書」も含まれています。「職務記述書」は、「職業能力評価基準」の各職業分類別ページの能力ユニット一覧表で職務の名称の後についている「W」のマークをクリックすると表示されます。
すべての職種について「職務記述書」があり、そこには「概要」、「仕事の内容」、「求められる経験・能力」、「関連する資格・検定等」の4つの項目が記入されています。
「職務記述書」は欧米の企業で採用時に提示しているjob descriptionの日本版であり、日本の企業でも今後は採用説明会や、雇用契約を結ぶ際の参考資料として使用すれば労使双方にとって誤解がなく、納得性が高まると考えられます。ある職種について社内公募制で募集をかけるときの表現の仕方としても参考になるでしょう。

●キャリアパスの素案としての活用

「職業能力評価基準」には、レベル1からレベル4までの違いについて表記した「レベル区分」およびキャリア形成の例を示した「キャリア形成例」の図が記載されています。下表は「電気機械器具製造業」のレベル区分についてまとめたもので、社員に将来のキャリアパスの見通しをつけさせるための一助となるかもしれません。キャリアプランを策定させる研修のときなどに教材として活用できます。

「電気機械器具製造業」の「キャリア形成例」
「アパレル」の「キャリア形成例」

※中央職業能力開発協会「職業能力評価基準/電気機械器具製造業」

中小企業労働環境向上助成金が使える

●新規に評価・処遇制度を導入する際に40万円の助成が受けられる

評価・処遇制度をこれから導入しようとする中小企業にとっては、「職業能力評価基準」が評価シートの作成や、職種別の処遇の区分を定義する際の参考資料として役立つはずです。専門家の助けを借りず、短い期間で最低限のコストで導入したいという場合や、いままでの制度を見直して業界標準の公平性・透明性のある制度を作りたいという場合に適しています。
健康・環境・農林漁業分野等の「重点分野関連事業」を行っている中小企業の場合は、「中小企業労働環境向上助成金」(※2)を申請することができます。新規に評価・処遇制度を構築した場合は40万円、研修体系制度を構築した場合は30万円の助成が受けられます。
助成金が支給されるまでには、以下のプロセスを踏むことになっています。

@雇用管理制度整備計画を作成、労働局等への提出
A認定を受けた雇用管理制度整備計画に基づく雇用管理制度の導入(労働協約又は就業規則に明文化することが必要)
B雇用管理制度の実施(通常の労働者1名以上に実際に実施することが必要)

職業能力評価基準は、業界団体の基準や、人材開発に熱心に取り組む企業の好事例に基づいて策定されているので、業界標準のモデルとして信頼できそうです。ワードやエクセルで作成されている評価表などのツールを、自由自在に応用できるのも魅力のうちでしょう。

※2 中小企業労働環境向上助成金
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/dl/roudou_kobetsu_pamphlet01.pdf

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