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(情報掲載日:2013年8月20日)

人材マネジメントライブラリ

「本当に強いリーダー」として求められるサーバント・リーダーシップ

VOL.20


リーダーというと、部下に強く指示・命令して動かすような支配型リーダーを思い浮かべがちですが、価値観が多様化する現代では、従来とは違ったリーダー像が求められるようになってきました。そのひとつが、グローバル企業を中心に多くの企業が取り入れているサーバント・リーダーです。先行事例に学び、この新しいリーダーシップを活かす方法をまとめてみました。

支配型リーダーとサーバント・リーダーのちがい

●サーバント・リーダーとは

サーバント・リーダーシップとは、アメリカのロバート・グリーンリーフ(1904〜1990)が1970年に提唱した「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後、相手を導くものである」というリーダーシップ哲学です。単に方法やメリットを示すリーダー術というよりも、人間性への深い洞察に基づく哲学であるとして、多くの人々から支持されてきました。
「サーバント」という言葉は本来、「従者」あるいは「奉仕者」を意味します。一見、指導者を意味するリーダーとは相容れないように思われますが、サーバント・リーダーシップは、サーバントこそがリーダーのあり方としてふさわしいとする考え方です。
サーバント・リーダーと支配型リーダーの違いを下表にまとめてみました。

支配型のリーダーシップとサーバント・リーダーシップの違い
支配型のリーダーシップとサーバント・リーダーシップの違い

グリーンリーフセンタージャパンの資料(※1)について一部表現を改編

●サーバント・リーダーは支援型リーダーである

サーバントといっても、上司があたかも召し使いのように、部下の言うことを何でも聞き入れて従うという意味ではありません。
この点を明確化するために、最近では「支援型リーダー」という日本語がよく使われるようになってきました。何を支援するかというと、部下の目標達成のための行動です。
サーバント・リーダーは、組織における自分たちのミッション(使命)をしっかりと把握し、その方向に部下たちが向かっている限りは支えて、励まし、援助します。
もしも部下の行動がミッションに合致していなければ、その行動を改めるように部下を強く指導する場合もあります。そうでなければ、部下の言いなりになって振り回されるだけで、リーダーとしての役割を果たすことはできないでしょう。サーバント・リーダーシップは、このように「人間力」で人を動かすリーダー術といえます。

サーバント・リーダーシップを実践するには

●サーバント・リーダーに求められる資質

では、サーバント・リーダーシップに求められる資質としては、どのようなものがあるのでしょうか。グリーンリーフ・センター・アメリカ本部の所長を務めるラリー・スピアーズは、以下のような10の特性を掲げています。

サーバント・リーダーに求められる10の特性
インストラクショナルデザインのADDIEモデル

NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会「サーバント・リーダーシップの10の特性」(※2)より作成

サーバント・リーダーを目指すならば、この10の特性について内容をよく理解し、日々、実践していくことが必要でしょう。
サーバント・リーダーシップは、企業の中だけではなく、学校や家庭、地域社会などのあらゆる組織の中でも実践が可能です。たとえば、子どもとのかかわり方について、自発性、創造性、課題解決能力などの豊かな人間力を育むには、サーバント・リーダーシップを実践してみるとよいでしょう。

※1 グリーンリーフセンタージャパン「従来のリーダーシップとのちがい」
http://www.gc-j.com/sl02.html

※2  NPO法人日本サーバント・リーダーシップ協会「サーバント・リーダーシップの10の特性」
http://www.servantleader.jp/10s.html

●上位者からサーバント・リーダーにふさわしい行動に変えていく

「サーバント・リーダーシップ」あるいは「支援型リーダーシップ」を掲げて組織改革を行う企業が増えています。企業の中でサーバント・リーダーシップを導入するには、まず、トップ自らがサーバントの精神をもち、顧客満足と従業員満足の向上を第一の目標として掲げることが前提条件になります。
次に、社長から役員へ、役員から部課長へ、部課長からスタッフへというように、上位者から順次意識改革を行い、サーバント・リーダーにふさわしい行動に変えていくことがポイントになります。
具体的には、前述の「10の特性」を体得することを目標にするわけですが、そのための教育研修の方法としてしばしばビジネス・コーチングが用いられます。
実際に、サーバント・リーダーシップを掲げるある企業ではまず経営層からコーチングを学び、次に中間管理層、そして現場へと順次コーチングの研修を実施することで、サーバント・リーダーシップを機能させることに成功しています。

●顧客第一主義はサーバント・リーダーシップに通じる

サーバント・リーダーシップを取り入れている企業の共通点としては、何よりも現場を尊重する姿勢を打ち出し、逆ピラミッド型の組織をつくり、顧客のことを最もよく理解している現場の従業員を組織の一番上に位置づけています。
そして、チームを率いる中間管理層は、最前線で働く従業員が動きやすいように支援し、そのことで目標達成を容易にするように尽力します。
経営層は、中間管理層の話をよく聴いて日々刻々と動いている現場の実態を把握し、どのような舵取りをすれば現場がよりよく機能するかについて考え、判断を下します。

逆ピラミッド型組織構造で顧客第一主義を実践する
逆ピラミッド型組織構造で顧客第一主義を実践する

●サーバント・リーダーシップの事例から学ぶ

サーバント・リーダーシップの効果について、いくつかの企業の事例を表にまとめてみました。これらの企業の共通点として、ビジョンとミッションの共有、権限委譲、自主性の尊重等が挙げられます。したがって、支配型リーダーシップに比べると、上司と部下との間の一方通行ではない双方向型のコミュニケーションが密接になっています。その結果、顧客満足の向上といった目に見える成果がもたらされています。

サーバント・リーダーシップの例と効果
サーバント・リーダーシップの例と効果

小杉俊哉著『リーダーシップ30−−カリスマから支援者へ』(祥伝社新書)より作成

また、社長自らサーバント・リーダーに徹することを社内外に宣言したあるメーカーでは、現場基点の経営改革を実践しました。
就任に際し、ビジョンや理念、方針はトップダウンであっても、実践においては現場の仕事が円滑にできるように、サーバントとして社員たちを支える存在でありたいと考えたのです。
あるとき、従来の組織図を逆にすることで、その理念が実現されることに気づいたそうです。すなわち、顧客をいちばん上に位置づけ、次に店頭で接客にあたる販売員や営業担当などの販売第一線を持ってくる。そして、支社の部長や支社長、続いて研究開発、生産、物流、マーケティング、販売促進などの本社部門、次に役員、そして一番下が社長である自分自身。
この組織図を用いて、自分よりも「上」に位置している人々に対して「仕える」「支える」という精神を語りかければ、より分かりやすく、具体的に理解されるはずだと確信しました。
そのような想いを社内のイントラネットで発信し続けたところ、現場の販売員や支社の社員たちからメールや手紙、口頭など、さまざまなルートを通じて、多くのレスポンスを得ることができました。
これは、改革の進捗状況を判断したり、新たな課題を発見したりするうえで非常に有益でした。そのような社員の意見を聞いてみて初めて、すべてのことを現場中心に据えていくと言いながら、ものづくりにしても、宣伝や販促にしても、つくる側や管理する側の論理が強く、現場の意見を十分に反映できていないことに気づいたそうです。
たとえば、在庫管理については、商品が足りない支社があるかと思えば、別の支社では余っているということがしばしば起こります。品切れになるよりは残ったほうが面倒がないので、つい多めに発注したり、売上予測を見誤ったりといったことが原因でしょう。
これに対してサーバント・リーダーシップを実践し、本社は現場で起きていることを聴く姿勢に徹し、きめ細かくキャッチボールを行うことで、精度の高い数を導き出すように努力し、過剰在庫のムダを省き、現場の売上状況に即応したサプライチェーン・マネジメントを実現することにつながりました。

●一方通行にならない、対話型のリーダーシップを

サーバント・リーダーシップのあり方は、トップダウンの一方通行ではなく、対話型のリーダーシップであると言うこともできるでしょう。
たとえば、ある企業では、地球環境にやさしい企業イメージを伝えるために、ペットボトルのリサイクル素材を使って現場の販売員の制服をつくりました。「地球環境にやさしい経営をしよう」というビジョンを象徴するものでしたが、実はこの素材は伸縮性が悪く、動きにくいことが後になってわかりました。また、スカートが短くて、腰をかがめる動きができにくいといった不評が続出したのです。
このような社員の不評を中間管理職がすぐにトップに伝えた結果、トップの指示ですぐに新しい制服に作り替えられることになりました。前回の失敗を踏まえ、どのように改良すればよいかについて現場からヒヤリングを行って調整した結果、動きやすさと企業イメージの向上を両立させる制服を作ることができたのです。
たとえビジョンにかなう方策であったとしても、現場の声に耳を傾け、共感し、解決すべき課題を吸い上げ、成果を予感できるような方策を立てるというサーバント・リーダーとしての実践が伴わなければ、本来の目的である顧客満足の向上や企業ブランドイメージの向上につながらないことをこの事例は教えてくれます。

サーバント・リーダーシップは、うまく活用すれば、従業員満足と顧客満足の両方を向上させ、企業の信頼性を向上させることにつながります。経営環境の変化にフレキシブルに対応できる組織をつくるための、ひとつの方法であると言えるでしょう。

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