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(情報掲載日:2012年2月20日)

人材マネジメントライブラリ

社員の「モチベーションアップ」を実現するマネジメント法

「やる気」をうまく引き出すアプローチとは?

VOL.1

近年、就職の開始時期が早まる一方で、終了時期も実質的に延びてきました。「内定者管理」が長期間に渡ることとなり、その結果、「内定辞退」や「採用取り消し」などの問題が表面化しているケースを聞きます。この時期に起こりがちな新入社員の採用をめぐる疑問点に対して、トラブルに陥らないよう、「法的留意点」を中心にまとめてみました。

【疑問点1】内定者に対する入社前の健康診断で異常が発見され、通常の勤務が難しいことが判明しました。このような場合、内定を取り消すことができますか?

健康診断で異常が発見されて、通常の勤務ができないとなれば、内定を取り消すことができます。ただし、内定取り消しをするためには、客観的に見て合理的な理由が必要です。裁判所や行政当局では、「客観的に見て合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定取消しは無効とされる」という考え方が取られています。採用内定の取り消しが客観的に見て合理的な理由があると判断されるケースとしては、次のようなものが考えられます。

①雇用契約を締結するための条件が満たされなかった
・卒業できなかった(留年・落第)
・入社の際に必要と認められた免許・資格が取得できなかった

②内定取り消しの理由が規定されており、該当事項が発生した
・健康状態に異常が発見され、通常勤務の遂行が困難となった
・提出した書類に嘘があった

③その他の不適格事由が発生した
・犯罪を犯して逮捕され、起訴された

④その他
・企業の経営が予想外の不振に陥った

しかしながら、内定を取り消された学生が被る打撃は、大きなものがあるでしょう。ですから、Cのように自社都合で内定取り消しをしたような場合、取り消しとなった学生の就職先の確保については最大限の努力を払うとともに、補償の請求等には誠意をもって対応する必要があります。

【疑問点2】内定を出して、学生からは「入社誓約書」を受け取りましたが、その後、他社への入社を決めたと連絡が入りました。これは、許されることなのでしょうか?

「入社誓約書」には法的拘束力がないとされており、致し方ないと考えられます。

これに対し、企業は学生から「入社誓約書」を提出してもらい内定が確定した後では雇用関係が成立しますので、勝手に内定取り消しをすることができません。
このような企業側に求められる責任に対して、学生側にも相応のものがあるのではと考えられますが、それはあくまで社会常識上の問題となります。

一般的には、憲法第22条の「職業選択の自由」を理由に、「入社誓約書」には法的拘束力がないと解釈されています。また、労働基準法第16条でも、あらかじめ違約金を定めることや損害賠償の額を予定することを禁じています。
なお、理論上では学生の内定辞退という契約不履行によって、現実に生じた損害について賠償請求をすることは可能です。ただし、一人の内定辞退によって企業側に多大な損害が生じることは考えがたく、現実的に損害賠償請求をするケースは殆どないものと思われます。

【疑問点3】「内定」とは、どのような行為をもってなされるのですか?また、「内々定」とはどう違うのですか?

一般的に、「内定」とは、企業が「採用内定通知書」などを交付し、学生からは「入社誓約書」の提出があり、入社日の通知を行うなどの行為をもって、成立します。
また、そのような行為がなくても、入社前の教育訓練が開始されるなど、採用決定の意思表示がなされた場合なども内定と同様に扱われます。

法律的には、「始期付解約留保権付雇用契約」(*1)が結ばれた、と表現されます。というのも内定は、「採用決定」を意味するわけであって、企業と内定者の間に「労働契約」が成立するものであるからです。そして、学生は労働者と認められる以上、内定の取り消しは「解雇」と同じと見なされます。

一方、「内々定」とはあくまで「採用予定」のことを指します。ですから、口頭や文書で一方的に学生に「採用内定」を告知しただけでは「内定」とは言い難く、「採用予定」である「内々定」と解釈されます。この点で、「内定」とは区別されます。またこの段階では、企業と内々定者の間には労働契約は成立していません。つまり、労働者ではないのです。そのため、内々定を取り消しても労働法上、違反とはなりません。

*1【始期付解約留保権付雇用契約】

採用内定とは、一種の「労働契約」が結ばれたことを意味します。法律的には「始期付解約留保権付雇用契約」が成立した、という表現がされます。なお「始期」とは、「雇用が始まる時期」ということです。採用内定を取り消すというのは労働契約の解約、すなわち解雇したことと同様に取り扱われることになります。

【疑問点4】個人情報の取り扱いが厳しくなっている昨今ですが、内定者に「住民票」や「戸籍謄本」などの提出を求めても構わないのでしょうか?

入社者の社会保険や労働保険への加入手続き、労働者名簿の作成、家族手当等の支給要件の確認といった手続きを行う際、住民票の提出を求めることは、合理性があり問題はありません。

ただし、住民票には、本籍地など必要のない情報が記載されており、可能な限り「住民票記載事項の証明書」による処理で行うよう行政指導(*2)が行われています。

*2【「住民票記載事項の証明書」処理への行政指導】

「住民票」「戸籍謄本」については、「画一的に提出又は提示を求めないようにし、それが必要となった時点(冠婚葬祭時に際して慶弔金等が支給されるような場合、その事実の確認を要するとき等)で、その具体的必要性に応じ、本人に対して使用目的を十分に説明の上提示を求め、確認後速やかに本人に返却する」という行政解釈がされています。同時に、「これらに代えて住民基本台帳法第7条第1号(氏名)及び第2号(出生の年月日)の事項についての証明がなされている『住民票記載事項の証明書』を備えれば足りる」としています。これらの行政解釈や個人情報保護法の制定が相まって、「住民票記載事項の証明書」の提出へと切り換えるよう、行政指導が行われています。

なお、内定前の段階では、そもそも「住民票」や「戸籍謄本」を収集する必要性がなく、不当な就職差別につながるおそれもありますので、これらの収集は原則として認められません。

【疑問点5】不採用者から、なぜ採用しなかったかその理由を聞きたい、との問い合わせがありました。このような質問に、答える必要がありますか?

採用する企業に対して、不採用者に対する理由の開示を義務付ける法律はありません。また、過去の判例を見ても、不採用理由の開示を義務付ける旨を明言するものは見当たりません。そのため、不採用となった学生から問い合わせがあったとしても、それに応じる義務は会社側には特にないと言えましょう。通常は、「不採用通知」を送るだけで問題ありません。

ただし、実際に問い合わせがあったような場合には、詳細な説明は不要ですが、自社の採用基準に適合しなかった旨を説明するなど、誠実に対応をするのがよいでしょう。

【疑問点6】入社前の研修は、無給でも構わないのでしょうか?また、研修中に怪我をした場合、労災は適用されるのでしょうか?

賃金は、「労務の提供」に対して支払われるものです。研修が業務を遂行する上で関係した内容で開催されるのであれば、その研修の時間は労務の提供がなされているものと考えられます。また、ビジネスマナーなどの研修であっても、参加が強制される場合は同様と考えられます。結局のところ、内定者研修も社員として必要な基礎知識を得るために強制されているものであれば、労務を提供している時間と解釈されます。この場合には、当然、賃金を支払う必要があります。

なお、研修への参加が全く任意であるのならば、研修の参加に対して賃金を支払う必要はありません。ただし、参加が強制されていない場合でも、入社前研修に参加した者に配属先が優遇されたり、不参加の者に対して不利益が加えられるような場合には、実質的な強制が行われたものと解釈されるので、注意が必要です。

労災の適用については、参加が強制される入社前研修では、内定者は使用者の指揮監督下に置かれ、労務提供がなされていることになるため、その際に起きた事故に起因する傷病が発生した場合、原則労災事故として扱われます。また、このような研修の参加に際し、研修会場へ向かう途中や研修からの帰途に事故に遭った場合に関しても、その間に個人的な事情による寄り道などの「中断」がない限り、原則通勤災害と認められると考えられます。

【疑問点7】内定者から、「募集時と入社時で労働条件が異なるので違法だ」との抗議を受けました。確認したところ、確かに一部条件が異なっていたのですが、それだけで違法と言えるのでしょうか?

募集を行う際、会社には業務内容、賃金額など、求職者への一定の労働条件を明示する義務があります。しかし、募集時に示された条件が、そのまま入社時の雇用条件と必ずしもなるわけではありませんので、募集広告に記載された内容と実際の労働条件との間に差異があったとしても、直ちに違法、あるいは不当ということにはなりません。

ある判例(*3)では、求人票に記載された賃金額は「見込み額」であり、その金額の支払いを保証するものではなく、その金額と実際に支払われた金額との間に差異があっても、原則としてそれを請求することはできないとしています。一方で、求人票記載の額を著しく下回る額で賃金を確定することは、「信義誠実の原則」に反することになり得る、とも記しています。合理的な理由もないのに、労働条件が大きく食い違うことになれば、応募者の期待を裏切ることとなります。また、紛争の原因となる可能性もあるため、できる限り選考基準を明確にした上で、雇用条件を明示しておくなどの注意が必要です。

*3【判例】

「求人広告に記載された基本給額は見込み額であり、最低額の支給を保障したわけではなく、将来入社時までに確定されることが予定された目標としての金額である。」としており、求人広告記載の労働条件と、労使で合意した労働契約の内容が異なる場合に、労働契約の内容が優先されるとしています。

八洲事件 東京高裁判決 昭和58年12月19日

【疑問点8】入社後1カ月も経っていないのに、勤務態度が悪い社員がいます。解雇することはできるのでしょうか?

解雇を検討する余地はあります。ただし、平成20年に施行された労働契約法(*4)で、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とする」(労働契約法第16条)と規定しています。そのため、解雇に関するルールをあらかじめ就業規則で定めることにより、解雇に際して発生するトラブル極力防ぐ必要があります。

解雇については労働基準法第20条に「解雇の予告」として「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告しない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない」と記してあります。ですから、仮に解雇が認められるケースであっても、「当月分に働いた賃金」と「30日分の解雇予告手当て」を支払う必要があります。

勤務態度が悪い云々については、就業規則に規定があれば、制裁措置としての「減給」も適用可能なケースがありますが、就業規則に規定がなければ適用することはできません。また、減給する旨が記してある場合には、勤務態度にどのような違反する「行為」があったのか、それが就業規則等で定められたことにどの程度反するのかを客観的に判断し、減給していく方向で話を進めていくことが肝心です。

なお、労働基準法第21条に「予告制度の例外」が規定されています。以下の4つに当てはまる場合には、解雇予告手当の支払いは適用されません。

①日日雇い入れられる者
②2カ月以内の期間を定めて使用される者
③季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者
④試の使用期間中の者

勤務態度が悪いからといって、「給与は払わない」などとすると、現在の労働関係法規の下では、企業が法を犯すことになりますので十分な注意が必要です。勤務態度が悪いことにはもちろん注意や勧告は必要ですが、解雇・減給には法律で定められたルールがあるので、冷静に対処することが求められます。

*4【労働契約法】

就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定・変更されるようになり、個別労働紛争が増えています。しかし、このような紛争を解決するための労働契約についての民事的なルールをまとめた法律はありませんでした。このような中で、平成20年3月から労働契約法が施行され、労働契約についての基本的なルールが分かりやすい形で明らかにされました。

厚生労働省 「労働契約法がスタート 〜平成20年3月1日施行〜」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoukeiyaku01/

【疑問点9】3カ月の「試用期間」を設けていますが、勤務態度が悪く、出勤不良や能力不足も目に付いてきました。このような場合、試用期間中に解雇することができますか?

合理的理由があれば、試用期間中に解雇することは可能です。客観的にみて、今回のような勤務態度の不良に加えて、遅刻・欠勤などの出勤不良や業務成績不良が認められる場合には、試用期間中の解雇の合理的理由となり得ると考えられます。ただ、そのためには、就業規則でそうした点を「試用期間中の解雇事由」として定めておくことが必要です。

採用時には社員として適格かどうか全てを見抜けないため、一定期間を設けて、その期間中に働き振りを観察するなどして、最終的に社員として雇用するかどうかを判断するための試用期間を設けることができます。試用期間の長さについては特に規制がなく、基本的に使用者と社員の合意により自由に設定できます。試用期間については就業規則に定められているケースが多く、一番多いのは3カ月、次いで2カ月、6カ月など期間が設定されているようです。

試用期間における解雇に関しては、14日以内は即解雇できます。14日を超えた場合は、解雇予告や予告手当ての支払いなどが必要になってきますが、本採用後の解雇より広い範囲の解雇の自由が認められています。

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