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(情報掲載日:2013年7月22日)

人材マネジメントライブラリ

効果的な教育研修をデザインし成果を検証する

〜インストラクショナルデザインとエバリュエーション

VOL.19


グローバル化や同業他社との競争の激化に対応するには、多様な高度専門人材の育成が必要で、そのためにはそれなりの時間とコストがかかります。そこで問われるのは、費用対効果です。効果的な企業研修のデザインのあり方=インストラクショナルデザインと、効果測定法=エバリュエーションの考え方をご紹介します。

効果的な企業研修をデザインする手法――インストラクショナルデザインとは

●インストラクショナルデザインの5つのプロセス

経営環境が激変する中では、前例踏襲の決まり切った教育研修を実施するだけでは、十分な効果が得られないかもしれません。教育研修は、単なる年間行事ではなく、費用対効果をきびしく問われるプロジェクトであるともいえるでしょう。経費削減の要請が強まる中で、経営陣に対して新機軸の教育研修を提案するには、「この教育研修を実施すれば効果が上がる」という説得力のある裏付けが必要です。

米国の先進的な企業では、効果的な企業研修をデザインする手法である、インストラクショナルデザインが幅広く用いられています。インストラクショナルデザインとは、「効果的な研修設計」のための科学的な理論です。一般的には、次のようなプロセスを踏んで行います。それぞれの頭文字をとって「ADDIEモデル」と呼ばれます。

インストラクショナルデザインのADDIEモデル
インストラクショナルデザインのADDIEモデル

(1) 分析

例えば、「女性管理職の比率を今後10年間のうちに10%にする」といった課題について、研修で解決できるものか、別の方法のほうが有効であるのかについて見定めます。
もしも研修で解決できそうだとしたら、どのような知識、態度、スキルを身につけさせればいいのかを明確にします。
分析のステップで明らかにしたいこととしては、次のような事項があります。

1)研修ニーズの明確化
1)研修のニーズは、戦略ニーズと方策的ニーズのどちらか?
1)戦略ニーズ(長期的)=リーダー育成などの長期的経営の視点を必要とするもの
1)方策的ニーズ(短期的)=いますぐ必要な知識やスキルを必要とするもの

2)研修の必要性と最終ゴールの確認
2)いま、このタイミングで研修が必要になっている原因は何か?
2)研修を実施することによる最終ゴールは何か?

3)現場との連携
3)組織の学習体制、トレーニング環境、現場との連携はどのようになっているか?

4)事前の情報収集
4)研修を実施するためには、事前にどのような情報が必要か?
4)その情報は、どこから、どのようにして収集するか?


(2) 設計

分析結果に基づき、研修の目的を明確にした後、最適な研修内容を設計します。例えば、研修の目標設定にあたっては「◯◯が◯◯のようにできるようになること」といった、受講者に具体的な行動変容を迫るものであることが望まれます。
具体的には、マネージャー研修を実施する場合のゴールとして、「部下の育成を考慮し、仕事の権限委譲ができるようになる」と設定するとします。その場合の習得目標としては、「マネージャーは部下の能力を見極め、その部下の将来のキャリアパスへの意向なども考慮しながら、実際の権限委譲のプランを作成できること」になります。
とすると、この目標の中に含まれる(1)部下の能力を見極める方法、(2)部下が望んでいるキャリアパスを把握する方法(インタビューのしかたなど)、(3)部下の実績や業績評価からどのような将来設計が有効であるかについての上司としての判断を下す方法といった「スキル」の習得が研修の中で必要になってくることが明らかになります。

(3)開発

研修の目標を確認し、目標達成のためにどのような研修および研修の事前・事後における業務現場でのサポートが必要なのかを見極め、講義形式のOFF-JTばかりでなく、eラーニングやOJTを含め、適切な手段を選びます。
外部の専門家や社内の熟達者と連携しながら、受講者の立場に立った設計をすることも配慮します。研修の効果測定のしくみや、どのような指標を用いて評価を実施するかについても、この段階で明確にします。
研修方式としては、従来からある講義形式を含めて、以下の4つのタイプがあります。選択する際の注意点などは下表のとおりです。

おもな研修方式4タイプとその留意点  Ruth Clark (1998)のモデルより作成
インストラクショナルデザインのADDIEモデル

また、研修で用いる教材やツールを開発します。講師が研修を実施するときのタイムスケジュール、グループワークの導入等、詳細な研修計画についても明確化します。また、現場に研修内容を持ち帰ったときのOJT 指導書や実施評価表なども作成し、現場での指導を確実にするためのツールも開発するとよいでしょう。
研修手段や方法を検討する際には、学習者にとって納得感のあるような研修指導構成にすることも重要です。学習者の心理にも配慮し、テキストのみに頼ることなく、ビジュアルに訴えるような資料を使ったり、身体を動かしたりして学習活動を行うことができるような要素を加えるなど、長期記憶に残るような工夫が必要になります。

(4)実施

「本番」の前にリハーサルを行い、研修計画どおりに進行できるかどうかの検証を行ったほうがいいでしょう。複数の講師で同一内容の研修を数回実施する場合は、講師間での打ち合わせが必要になります。
研修を実施する際には、併せて後に研修効果を測定するためのデータ収集、たとえば研修直後の感想を問う受講者アンケート、現場に帰ってからの効果を測定するための上司評価または本人評価等を収集します。

(5)評価

分析段階で明確にしておいた評価指標に沿って、研修前及び実施後の評価をします。評価の実施方法については次に詳述します。

研修効果を評価する方法――エバリュエーション

●研修効果が問われる理由――教育はコストでなく投資である

研修の効果測定が重視されるようになった理由は、次の5点に整理できるでしょう。

<継続性>いままでの研修プログラムを継続するのか、やめるのかを判定するため
<合目的性>これから行う研修プログラムが企業の目的に合っているかを判定するため
<改善点の明確化>いままでの研修プログラムの内容をどのように改善できるかを知るため
<予算の適正化>新しい研修プログラムの予算が適正であることを確認するため
<必要性の証明>新しく企画した研修プログラムが必要であることを証明するため

研修は前例踏襲型の年中行事として行うものではなく、その企業の人材育成課題を達成するためのものでなければ投資する価値がないと判断されるようになってきました。

●カークパトリックの4段階の評価モデル

研修プログラムの効果を評価する考え方の枠組としては、米国で広く用いられている「カークパトリックの4段階評価モデル」があります。

カークパトリックの4段階評価モデル

従来から行われているアンケート形式の評価が、第1段階の「反応(リアクション)」に相当します。「大変役に立った、役に立った、あまり役に立たなかった、まったく役に立たなかった」等の択一式の評価だけでなく、自由記入欄を設けて受講者の自由な感想を記入してもらえるようにすると、今後の改善点が具体的に見えてくるでしょう。
このような第1段階のアンケート形式の評価のほかに、第2〜第4のような評価も行うように提案しているところが、この「4段階の評価モデル」の新しさであり、特徴になっています。
第2段階の学習結果の評価は、習得度を問うテストの実施、受講内容についての理解度を問うレポートの提出を求める等の方法が考えられます。
第3段階の行動変容の評価は、プログラム終了後、1カ月あるいは3カ月といった期間を置き、現場の上司からの報告を得ます。記述式のほか、面接方式で回答を得る方法も考えられます。個人の売上成績がこれだけ伸びた等々の数値に置き換えられる評価を得ることが望ましいでしょう。
第4段階のビジネスインパクトの評価は、研修で得られた知識・スキルが、実際のビジネスで活かされたかについて分析します。
上記の4段階の評価の実作業は、能力開発を担当するスタッフ部門が、研修受講者が所属している現場から詳細なヒヤリングを行ったうえで、評価項目等の詳細設計から実施、結果の分析に至るまでを担当するとよいでしょう。

●効果測定をする際の着眼点

「カークパトリックの4段階評価モデル」に基づいて研修の効果測定を企画・実施するときには、以下のような着眼点が必要となります。

1)ギャップの明確化と解消
1)測定すべきギャップ(現状と期待値のギャップ)は、明らかになっているか
1)研修は、そのギャップを解消できるように設計されているか

2)研修課題の再確認
2)研修によって解決できる課題であることが明確になっているか

3)OJT環境の確認
3)研修終了後、研修で習得したスキルや能力を実践に移すための条件は整っているか。
3)また、部署によってその条件に大きなバラつきがないか
3)バラつきがあるとすれば、その不均衡を解消するための施策が設計されているか

4)研修内容の標準化と質の改善
4)研修が、講師やファシリテーターの違いによって差が出ないように設計されているか
4)研修の質を測定するための共通した尺度をもって研修の質の改善を行っているか

教育研修は、手間と時間のかかる仕事です。近視眼的に教育内容そのものを検討するだけでなく、業績結果を出すための組織の仕組みや、働く人と組織との関係性も明らかにしなければ、多くの労力を用いて研修を企画・実施しても結果に結びつかないことになってしまいます。
また、研修内容と現場のOJTとの関連づけが必要です。研修で学んだことが、OJTを通じて実際の仕事の成果に結実するような支援が求められます。継続して現場の管理職と連携をとりながら、長期的な視点で個々のキャリア形成ができるような支援を心がけていくとよいでしょう。
こうした実践に役立つ研修企画のために、インストラクショナルデザインおよびエバリュエーションの知識とスキルは大いに役立つでしょう。

参考文献:
『研修効果測定の基本 エバリュエーションの詳細マニュアル』(ドナルド・マケイン著、霜山 元訳)

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