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「パワーハラスメントと企業責任」に関する疑問を解決

(情報掲載日:2012年1月23日)

Q1パワーハラスメントに法的な定義はありますか?
A1

ありません。セクシャルハラスメントは、男女雇用機会均等法で定義や要件が定められていますが、パワーハラスメントには、まだそのような定義づけがなされていません。

何をもってパワーハラスメントとするか、明確には言い切れませんが、一般的に以下のようなケースはパワーハラスメントといわれることがあります。

  • ・一人では処理できないような仕事を押し付けるなど、無理な要求をする
  • ・大勢の前で、人格を否定するような表現を用いて叱責、罵倒する
  • ・故意に苦手な仕事を割り当てるなどしてミスを誘発、評価を下げる
  • ・まったく仕事を与えない、業務連絡を回さないなどして孤立させる
  • ・本人の希望しない部署に異動させ、辞職に追い込もうとする
Q2パワーハラスメントが労災認定されるのは、どのようなケースでしょうか?
A2

典型的なのは、職場のいじめが原因でうつ病などの精神障害を発症するケースです。労災保険は、業務上の病気や怪我(および障害や死亡)が補償の対象となるので、パワーハラスメントが労災認定されるには、精神障害を発症するなどして、その原因が上司によるいじめなど「パワーハラスメントに該当する業務上の出来事」にあると、労働基準監督署や裁判所で判断されることが必要となります。ポイントとなるのは「精神障害の発生」と「業務起因性」です。
しばしば「パワハラによる労災認定」といった報道がされますが、厳密にはこの表現は正しくありません。パワーハラスメントに法的な定義がないことと同様に、労災保険上「パワーハラスメント」という言葉を使用した基準や定義がないためです。業務が原因となって精神障害を発症して労災認定され、なおかつパワーハラスメントが影響しているケースを、便宜的に「パワハラによる労災認定」と表現しているようです。

Q3精神障害が労災認定される具体的な基準とはどのようなものですか?
A3

精神障害が業務に起因するかどうかは、厚生労働省の通達「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」(以下、判断指針)()が用いられます。この判断指針の中の「職場における心理的負荷評価表」および「職場以外の心理的負荷評価表」に基づき、「どのような心理的負荷を、どの程度の強さで受けてきたか」を調査するという方法です。これらの評価表には、職場もしくはプライベートで起こり得る「精神障害に結びつくような、ストレスを与える出来事」が列挙されていると同時に、「各々の出来事がどの程度のストレス(心理的負荷)を与えるか」が強度Tから強度Vの3段階で規定されています。

具体的には、
1.「職場における心理的負荷評価表」に基づき、業務によって強い心理的負荷が与えられたと判断される
2.「職場以外の心理的負荷評価表」に基づき、業務以外では特別に心理的負荷がかかっていないと判断される
3.精神障害の既往症など、個体側の要因も認められない
という3つの条件が満たされると、「業務に起因する」と認められる可能性が大きくなります。

「職場における心理的負荷評価表」記載の出来事例(一部抜粋)
具体的な出来事 心理的負荷
の強度
同僚とのトラブルがあった
達成困難なノルマが課された
顧客や取引先からクレームを受けた
配置転換があった
上司とのトラブルがあった
会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした
退職を強要された
ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた

「職場以外の心理的負荷評価表」記載の出来事例(一部抜粋)
具体的な出来事 心理的負荷
の強度
夫婦のトラブル、不和があった
自分が病気やケガをした
隣近所とのトラブルがあった
離婚又は夫婦が別居した
配偶者や子供、親又は兄弟が死亡した
天災や火災などにあった又は犯罪に巻き込まれた

「職場における心理的負荷評価表」「職場以外の心理的負荷評価表」に定める強度
強度Ⅰ 日常的に経験する一般的に問題とならない程度の心理的負荷
強度Ⅱ 強度Ⅰと強度Ⅲの中間に位置する心理的負荷
強度Ⅲ 人生の中でまれに経験することもある強い心理的負荷

「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」について、詳しくは厚生労働省「精神障害等の労災認定について」をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/040325-15.html

Q4社内のパワーハラスメントによって、企業に生じる責任やリスクには、どのようなものがありますか?
A4

まず対外的には、企業イメージの低下とそれに伴う顧客離れや人材採用難などがあります。また社内的には、社員の士気の低下などが挙げられます。
法的な責任としては、組織的なパワーハラスメントの場合、民法の「不法行為による損害賠償責任」が生じます。組織的ではない場合も、加害者となる従業員に対する使用者責任や、労働契約上の安全配慮義務違反を問われ、やはり損害賠償を請求されるリスクがあります。被害者が重篤な精神疾患を負うなどした場合は、損害賠償額も非常に高額になると考えてよいでしょう。

Q5企業として、どのようなパワーハラスメント対策ができるでしょうか?
A5

予防策としては、(1)パワーハラスメントへの罰則を盛り込んだ就業規則の整備(2)苦情申し立て制度の整備(3)社員教育の徹底などが挙げられます。企業として「パワーハラスメントには断固とした姿勢で臨む」ことを明確化することが必要です。
制度の整備には時間がかかるものですが、すぐに実践できることとしては「マネジメント層に注意を喚起する」「職場の人間関係で悩んでいる従業員の相談に乗る」といったことが考えられます。
パワーハラスメントの加害者は、本人は指導のつもりだったなど、自覚がないことが多いのが現状です。部下が意見を言いにくい雰囲気になっていたり、部下が休みがちだったりという兆候を見逃さないように、職場の様子に気を配ることも必要となってきます。パワーハラスメントが発覚したら、速やかに加害者・被害者双方から意見を聞き、公平な立場で対処するように心がけましょう。
また2009年には、(財)21世紀職業財団が所管する「セクシュアルハラスメント・パワーハラスメント防止コンサルタント」という資格が誕生しました。職場のハラスメントに対し、多くの企業が対策の必要性を感じていることの表れといえるかもしれません。

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