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「感染症流行時の労務管理」に関する疑問を解決

(情報掲載日:2012年1月23日)

Q1感染症に感染した従業員から、「業務の繁忙期なので出勤したい」という申し出を受けた場合、どのように対応したら良いでしょうか?
A1

感染症にかかった場合の就業については、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)」の就業制限や、「労働安全衛生法」と「労働安全衛生規則」に定められる就業禁止に触れる場合があります。そのため、感染症の従業員の出勤については、これらの法令に則り、適切な対処をすることが求められます。

感染症法では、第6条に感染症の分類および用語が定義されており、同法第18条で1〜3類感染症と新型インフルエンザ等感染症の患者、または無症状病原体保有者(感染症の病原体を保有している者であって当該感染症の症状を呈していない者)について就業制限を課しています。

また、労働安全衛生法では「伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者」、労働安全衛生規則でも「毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者」に該当する場合に、就業を禁止しなければならないとしています。

なお、就業禁止の実施については、あらかじめ産業医およびその他の専門医の意見を聞くことが義務づけられています。就業制限および就業禁止に該当するかどうかの判断については、産業医や産業保健推進センターに相談すると良いでしょう。

※感染症の分類について、詳細は下記をご覧ください。
・感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H10/H10HO114.html
・感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01.html

Q2従業員が医師の診察を受けたところ、感染症に感染したことがわかり自宅で休養させているのですが、その間の給与の支払いは必要でしょうか?
A2

労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払わなければならないと定めています。
感染症法の就業制限に該当する場合や、労働安全衛生法第66条に定められた健康診断の結果に基づいて休業させた場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」にはあたらないため、休業手当の支払いは必要ありません。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」であるかの判断基準は、厚生労働省による通達や法令の解釈を参考にすると良いでしょう。
感染症については、一例としてSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時に愛知労働局が行った照会に対する厚生労働省の回答が参考になります。
それによると、以下のような場合は「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたらないため、休業手当の支払義務は生じないとされています。

  • ・健康診断の受診勧告や入院勧告を受けた労働者を休業させる場合(感染症法第45条、第46条)
  • ・国等の要請する措置として感染疑い例に該当する労働者を休業させる場合
  • ・国等の要請する措置として伝播確認地域から帰国した労働者に自宅待機・休業を命じる場合

なお、使用者の判断で根拠なく業務命令として自宅待機の措置を行う場合には、「使用者の責に帰すべき事由」となり、休業手当の支払義務が生じます。
トラブルを避けるためにも、あらかじめ就業禁止措置について就業規則に規定しておくなどの整備をしておくとよいでしょう。

Q3事業所内で感染症が蔓延したため、会社の判断で事業所を閉鎖した場合、従業員への休業手当の支払いが必要になるのでしょうか?
A3

ケースによって必要な場合とそうでない場合があります。
まず、使用者の判断で根拠なく事業所を閉鎖したことによる休業は、業務命令となるので労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたり、休業手当の支払が必要となります。

一方、Q2に記載したSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時の厚生労働省の回答にあるように、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたらないと判断される従業員には休業手当を支払う必要はありません。したがって、たとえば国などの措置により事業所を閉鎖する場合と、使用者が独自の判断で事業所を閉鎖する場合では、休業手当支払の必要性の有無についての判断が分かれるため注意が必要です。

Q4 出張中に従業員が感染症に感染した場合、労災保険の適用を受けることができるのでしょうか?
A4

「業務上疾病」として、業務が原因となって感染症に感染したと認められる場合は給付の対象となります。

業務上疾病とは、使用者の支配下にある状態において、有害因子にさらされたことで発症した病気を指します。従業員が就業中に感染症に感染した場合であっても、感染したことが業務と関連性があるかどうかを立証できなければ、労災保険は適用されません。
一般的に業務上疾病とされるのは、以下の3つの要件が満たされる場合です。

  • ・労働の場に有害因子が存在していること
  • ・健康障害を起こしうるほどの有害因子にさらされたこと
  • ・発症の経過及び病態において医学的に業務起因性があること

業務上疾病にあたるかどうかの判断については、産業医や都道府県労働局、労働基準監督署に相談すると良いでしょう。

Q5従業員が感染症に感染したため会社が命じた自宅待機期間は、健康保険の傷病手当金の給付対象になるのでしょうか?
A5

従業員が健康保険の被保険者で、感染症法第18条の規定により就業制限措置がとられた場合、または医師の健康診断により労務不能であると判断された場合の休業であれば、傷病手当金の給付対象となります。

傷病手当金は、被保険者が病気や怪我のため働くことができず、会社を連続して3日間休んだ場合に、4日目以降の休んだ日を対象として支給されます。その際に支給される金額は、1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額となっていますが、休業期間に使用者から傷病手当金より多い額の報酬を受けた場合は、傷病手当金は支給されません。また逆に、傷病手当金の額が報酬額よりも多い場合は、その差額が支給されます。

※健康保険法と感染症法との調整について、詳細は下記をご覧ください。
「健康保険法、国民健康保険法、船員保険及び老人保健法と感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律との調整について」(健発第0330034号)
http://www.pref.shimane.lg.jp/life/yakuji/kansensyo/kansen/reiki.data/070330-0330034-03330005.pdf

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