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改正高齢者雇用安定法

(情報掲載日:2012年1月23日)

Q2006年4月に改正された高年齢者雇用安定法で、定年制度(65歳未満)がある企業に対し、2006年4月1日から、その雇用する高年齢者(55歳以上)の65歳までの安定した雇用を確保するために講ずることが義務付けられた措置にはどのようなものがありますか?
A

以下の3つのうちいずれかの雇用確保措置が義務付けられています。
(ア) 定年年齢の引き上げ
(イ) 継続雇用制度の導入
(ウ) 定年の定めの廃止

<3つの雇用確保措置>

(ア)と(イ)について、法が定める引き上げスケジュールは下記のとおりです。

経過措置期間 義務化年齢
2006年4月1日〜2007年3月31日 62歳
2007年4月1日〜2010年3月31日 63歳
2010年4月1日〜2013年3月31日 64歳
2013年4月1日〜 65歳

(イ)には、大きく分けて下記2つの制度があります。

●勤務延長制度 定年年齢を迎えても退職せず引き続き勤務する。「定年の定めの廃止」と異なり、定年があり、定年後について処遇を変えたり、最高雇用年齢を定めたりすることができる。
●再雇用制度 定年で一度退職する。新たに雇用契約を結び雇用条件を刷新する。
Q3つの雇用確保措置には、どのようなメリット・デメリットがありますか?
A

それぞれ以下のようなメリット・デメリットがあげられます。

  メリット デメリット
(ア) 定年年齢の引き上げ
  • ・新規雇用が難しい企業の場合、定年で辞めてしまう人材を少なくとも数年は引きとめることができるので、人材の確保につながる
  • ・勤務期間が長くなるため退職金・賃金のほか法定福利費等の人件費負担が増える
  • ・人件費増を抑制するためには退職金規定・賃金規定の見直しが必要となる。
  • ・加齢による生産性の低下等には個人差があるが、それを理由に対象者を選別することはできない
  • ・別途役職定年制等を設けないと若い人材に役職を与えられなくなるなど、ポスト不足で人事が停滞する可能性がある
  • ・60歳定年でライフプランを立ててきた従業員から不満が出る可能性が大きい
(イ)継続雇用制度の導入
  • ・労使協定で定年後の継続雇用の基準を設定することにより、対象者を絞ることができる
  • ・定年で一度退職し、新しい雇用契約になるため、改めて個人の状況に応じた仕事を与えることができる
  • ・賃金、労働時間など雇用条件を見直すことができる
  • ・定年で契約を結びなおすので、新たなルールや選定基準を定める必要がある
  • ・仕事の内容や賃金などの変更により、モチベーションや生産性が下がるリスクがある
(ウ)定年の定めの廃止
  • ・いつまでも働きたい労働者にとっては安心感を与えることができる
  • ・新規雇用が難しい企業の場合、定年で辞めてしまう人材を少なくとも数年は引きとめることができるので、人材の確保につながる
  • ・勤務期間が長くなるため退職金と賃金のほか法定福利費等の人件費負担が増える
  • ・人件費増を抑制するためには退職金規定・賃金規定の見直しが必要となる
  • ・加齢による生産性の低下等には個人差があるが、それを理由に対象者を選別することはできない
  • ・本人の申し出がない限り、会社側の都合(解雇)で退職させなければならない
  • ・別途役職定年制等を設けないと若い人材に役職を与えられなくなるなど、ポスト不足で人事が停滞する可能性がある
  • ・60歳定年でライフプランを立ててきた従業員から不満が出る可能性が大きい

「定年年齢の引き上げ」や「定年の定めの廃止」は人事制度や給与制度等の規定を根本から見直す必要があり、制度設計や合意形成には時間がかかります。また、従来の定年年齢を基準にライフプランを描いていた従業員の理解が得られなければ制度の改定が進まないのも難点です。
初めて雇用確保措置を導入する場合には、「継続雇用制度の導入」から始め、運用しながら定年の引き上げや廃止が可能かを検討していくのも1つの方法です。

Q継続雇用制度を導入する場合、どのような検討・対応が必要でしょうか?
A

まず、適切に基準を設けて対象者を絞り込むことが必要です。また、処遇の検討が必要です。

1. 継続雇用の対象者

(1)対象者の絞り込み
改正高年法では、原則「希望者全員」を対象とすることを求めています。ただし、各企業の実情に応じ、労使協定により基準を定めることによって「基準に適合する社員」のみを対象とすることが認められています。(労使協定は企業単位ではなく事業所ごとに締結する。労働基準監督署への提出は不要。)

(2)基準の設け方
では、基準の中身はどのように決めればよいのでしょうか?
厚生労働省の通達(※1)によると、下記2つの点に留意して定めるのが望ましいとされています。

[1]意欲・能力などをできる限り具体的に測るものであること
[2]必要とされる能力などが客観的に示されており、該当可能性を予見することができるものであること

近年、「基準」が不適切であるとする労働者からの訴訟が相次いでいます。こうしたリスクを避けるためにも、合理的・客観的な基準を定めて対象者を選別しましょう。

以下の5点は、上記の通達を「基準」に落とし込むためのポイントです。60歳以降は個人差の出る健康面についても、労働能力の一つとして具体的・客観的に測れるよう、適切な基準を定めましょう。なお、能力や技術に対する評価は、日頃から本人にフィードバックしておくことが重要です。

  • ・働く意思・意欲
  • ・勤務態度
  • ・健康
  • ・能力・経験
  • ・技術伝承等

2.高年齢者の継続雇用後の処遇

(1)仕事内容
これまで継続雇用制度を導入してこなかった企業にとっては、その分労働力が増加するわけですから、定年後にどのような仕事を担当してもらうのかは重要なポイントといえます。仕事の担当を決めるにあたり、定型的な業務、経験と知識を必要とする業務、人手不足の部署での業務など、どのような分野で高年齢者の能力を発揮してもらえば最も大きな価値を生み出すのかを、各企業が検討しなければなりません。

(2)勤務形態
継続雇用制度を導入した場合、定年後にどのような形で雇用するかは各企業の自由です。 再雇用の場合、定年前は正社員だった者であっても、下記の労働条件を見直して新しい雇用契約を結ぶことになります。勤務延長の場合も再雇用と同様に労働条件を見直すことがあります。

  • ・労働時間と日数
  • ・賃金と賃金形態(時給・日給・月給等)
  • ・契約期間の定めの有無
  • ・就業規則など各種規程の適用の有無

高年齢者に担ってもらいたい役割を明確にした上で、どのような勤務形態が自社に合っているのか、仕事内容の洗い出しと自社の高年齢者の状況とを併せて検討する必要があります。

(3)賃金
企業にとって再雇用の一つのメリットが人件費負担の軽減である一方、賃金決定に当たっては、再雇用者・定年前従業員のモチベーションダウンにつながらないように配慮することが重要です。

Q人事担当者が知っておくべき諸手続きなどありますか?
A

以下の手続きを知っておくとよいでしょう。

(1)労働条件通知書の交付
定年退職後の継続雇用の場合、定年前とは異なる新しい雇用契約になります。そのため、通常雇用契約を締結する際に必要な、法に定められている対応をする必要があります。

  • ・仕事内容、労働時間、賃金などの一定の労働条件については契約締結時に明示、特に重要な事項は書面で交付
  • ・パートタイム労働者の場合は「昇給」「退職金」「賞与」に関して書面による労働条件の明示など

(2)60歳到達時賃金の登録と高年齢雇用継続給付の支給申請
高年齢雇用継続給付とは、雇用保険の被保険者の60歳以降の賃金月額が60歳到達時の75%未満に下がった場合、該当者がハローワークから受けられる給付金です。給付を受けるためには次の手続きが必要です(※4)。

  • 1.高年齢雇用継続給付受給資格確認
    →60歳に達した被保険者を雇用している事業主が必要書類を提出します(75%未満に低下していない場合は初回の支給申請の時に同時に提出してもよい)。
  • 2.高年齢雇用継続給付支給申請
    →賃金が登録された金額の75%未満に低下した場合に必要書類を提出します。本人・会社いずれも申請できるが、会社が支給申請する場合は労使協定が必要です。

(3)健康保険・厚生年金の喪失と取得」
退職後1日の空白もなく継続雇用された場合、健康保険・厚生年金の被保険者の資格は継続されます。賃金が大幅に低下した時は、通常の手続きである「月額変更届」を行う他にも特例である「同日得喪」(喪失届けを出し同時に新しい賃金額で取得届を出すこと。これにより保険料がすぐに変更される ※3)の手続きがあります。

また、一般社員の勤務日数または勤務時間の4分の3以上働く場合は、健康保険・厚生年金の被保険者にならなければなりません(雇用保険は週20時間以上勤務する場合、加入しなければならない)。

Q雇用確保措置に対して利用できる、政府の助成金制度などはありますか?
A

65歳以上への定年の引き上げや定年の定めの廃止、希望者全員が65歳以上まで働けるよう職域の拡大や雇用管理制度の構築に取り組み等を行う企業を支援するための制度があります。65歳を超えて雇用する制度を取り入れる場合は下記のような助成制度もぜひ活用してみましょう。

中小企業定年引き上げ等奨励金 高年齢者職域拡大等助成金
雇用保険の常用被保険者300人以下の事業主が、就業規則等により定年の引き上げ、希望者全員を対象とする継続雇用制度の導入(いずれも65歳以上が対象)または定年廃止を実施した場合に、導入した制度に応じ奨励金を支給するもの 高年齢者の意欲と能力を活かすため、希望者全員が65歳以上まで働くことができる制度の導入又は70歳以上まで働くことができる制度の導入にあわせて、高年齢者の職域の拡大や高年齢者の雇用管理制度の構築に取り組み、高年齢者がいきいきと働ける職場の整備を行う事業主に対し、当該取組に係る経費の3分の1に相当する額を、500万円を限度として支給するもの

詳細は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(※6)へお問い合わせください。

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