研究者を目指す上での3つのポイント
研究の仕事に就く場合、大きく分けて三つの就職先があります。ひとつめは企業の研究部門への就職、二つ目は公的機関や非営利団体といった研究機関の研究職、三つめが大学に残る道です。いずれにしても、大学院への進学が一般的です。
企業の研究部門の採用は新卒修士が多い
企業研究職は、学部卒の採用を行っている企業もありますが、修士卒の方が圧倒的にチャンスは多いです。また、民間企業での博士号取得者の採用実績は少ないことから、企業での研究職を希望する場合は、修士号取得時点で応募するのが現実的な選択と言えます。
民間企業では、食品、化学、化粧品、医薬など、ほとんどの業界のメーカーが研究開発部門を持っています。企業やポストによっては、専攻や研究テーマが重視される場合もありますが、新卒採用の場合は特に、研究で培われた科学的思考、数字やデータの取り扱い、実験や分析のスキルなど、理系出身であることそのものを評価する企業も数多く存在します。基本的には無期雇用の正社員採用にです。企業研究員として社会に出てから、改めて博士課程に進むケースも増えています。
公的研究機関や大学の研究者は博士号取得者が大多数
公的研究機関や大学で研究者として活躍するためには、博士号取得がほぼ必須条件です。また、博士号を無事に取得したからといってすぐに正規職員のポストに就ける訳ではなく、“ポスドク”と呼ばれる任期制の短期研究員のポストを経て正規職員となるケースがほとんどです。(ポスドク=ポストドクターの略で博士号を持った短期の研究員のこと。任期は2〜3年)
公的研究機関は、理化学研究所や産業総合研究所(産総研)といった大規模な研究開発法人から、ある特定の領域に特化して研究を行っている少人数の組織までさまざまです。求人は公募されることも多いですが、研究が専門的であればあるほど、専攻や経験とのマッチングが非常に重要となってくるため、まずはポスドクとして入り、その後正規職員となる流れが一般的です。
大学の場合は、ポスドクの後、助教→准教授→教授という流れでステップアップしていきます。ただし、助教になれるのは100人に1人の狭き門と言われており、更に准教授となって教授から独立して自分の好きな研究を行えるようになるには、厳しい審査を通過しなければなりません。大学受験からストレートにステップを踏んだとしても、博士課程卒業が27歳として、ポスドク3年、助教が3年〜5年、准教授5年〜10年と、大学教授になるまでに10年から15年かかるのが一般的です。
博士を取り巻く現状
政府が博士号取得者数の増加に力を入れたものの、受け皿となる公的機関や大学の正規職員のポストは限られているため、ポスドクの就職難が近年社会問題化しています。公的研究機関は任期付きポストの方が多いですし、大学も制度改革により、特任助教や特任准教授といった任期付きのポストが増えています。科学技術の発展という観点からも、博士人口が増えることは歓迎すべきことですが、その方々が安心して研究に取り組める環境整備が必要となっています。
研究者を目指す方は、以上の現状を踏まえた進路選択とキャリア設計をすることが大切です。
この記事を書いた人:
パーソルテンプスタッフ株式会社 研究開発事業本部所属 国家資格キャリアコンサルタント
更新日:2019.12.20 / 公開日:2016.10.03