栄養士・管理栄養士の
活躍できる場は?
栄養士・管理栄養士は、“食”と“栄養”をキーワードに、さまざまな場所で活躍の場があり、人々の健康に貢献できる魅力的な仕事です。職場(分野)ごとにどのような仕事があるか、ご紹介していきましょう。
病院
入院患者へバランスよく回復に役立つ食事を提供することは病院勤務の栄養士・管理栄養士の大きな仕事です。体調に合わせた献立の作成、栄養素を最大限引き出す調理、そして美味しい食事は患者さんを元気づけます。さらに管理栄養士は、患者に対する栄養指導を行います。外科手術や低栄養の入院患者だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病で通院している患者に対する指導も行います。
また最近は、管理栄養士を中心に、医師・看護師・薬剤師・理学療法士など異なる専門を持つメンバーで構成された栄養サポートチーム(NST:Nutriton Support Team)を組み、患者の状態を総合的にとらえた高度な栄養管理を提供する病院が増えています。栄養学だけでなく人体や疾患に関する医学的知識も日々学びながら、高度な医療スタッフの一員として活躍することができます。
高齢者施設
高齢者施設と一言にいっても、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人福祉センターなど入居者の状況によりさまざまな種類があります。最近では、デイサービスや高齢者に食事を宅配するサービスなどもあります。
病院同様、食事全般の業務が主体となりますが、噛まなくても食べられる、きざみ食、ゼリー状など、献立は一人ひとりに配慮するだけでなく、季節に合わせて工夫を凝らす(お正月、雛祭り、クリスマスなど)など、食べる喜びを感じてもらえるような創造性も求められます。
学校
学校給食は、成長期にある子どもへの食事の提供という重要な役割を担うとともに、“食育”の観点からもとても大切なものです。そのため、学校に勤務する栄養士は、給食をつくるだけでなく食育の実践という視点が欠かせません。
そのため、学校ではたらく栄養士・管理栄養士には、給食の運営を主に行う“学校栄養職員”に加えて、食育を推進する教育者としての役割を重視した“栄養教諭”という職種が創設されました(2005年)。学校栄養職員の業務に加え教員として、生徒に食育に関する授業を通して栄養指導を行います。学校栄養職員は管理栄養士の資格のみで勤務できますが、栄養教諭として勤務するには、栄養士又は管理栄養士資格に加え栄養教諭免許を取る必要があります。
行政(自治体)
都道府県庁・市町村、特に保健所や保健センターなどで地域住民の健康づくりのための活動を行います。母子・乳幼児・成人・高齢者の栄養相談や栄養指導を行うほか、地域住民向けに健康な食生活に関する講座を開催したり、資料を作成、地域全体の食事と健康に対する意識の向上や技術の支援を行います。自治体での勤務には基本的に地方公務員試験を受験します。
スポーツ関連施設
アスリートやスポーツ愛好家を専門にサポートしたいと考えている栄養士・管理栄養士もいます。スポーツドクター、運動生理学、バイオメカニクス、スポーツ心理学など運動にかかわるさまざまな専門家と連携し、栄養面から専門的なサポートを行うプロフェッショナルとして“公認スポーツ栄養士”という資格も創設されました。(公益社団法人 日本栄養士会および公益財団法人 日本体育協会の共同認定による資格)。
各種競技団体におけるトップアスリートの支援だけでなく、一般のスポーツ愛好家に対する支援として、自治体の運動施設のほか民間のフィットネスクラブやスポーツジムに所属している人も増えています。体力強化や健康・体力づくり、ダイエットの目的で通う人たちに、栄養指導や食生活のアドバイスを行うことが中心です。
研究機関
大学や公的研究機関で、食に関するさまざまな調査研究結果をエビデンス(科学的根拠)として、論文にまとめたり世の中に発信したりしています。医学や薬学など医療分野にかかわりの深い研究から、スポーツ栄養、食生活に関する疫学調査など、研究テーマは研究者によってさまざまです。
企業
企業でも食品業界を中心に、いろいろな職種で栄養士・管理栄養士の知識が生かせます。
食品メーカー・加工食品会社 研究開発職
メニュー開発、新商品開発(レシピ作成・試作・試食)のほかに、市場調査、原材料の機能分析、生産方法の確立、栄養や味を保つ流通のしくみの検討なども行います。法律に基づいた商品規格書の作成、製品パッケージに貼るラベルや栄養成分表示の作成など事務的な業務もあります。
最近では、トクホや機能性食品の開発など、より科学的なデータをもとにした商品開発も盛んに行われており、有効成分にかかわる文献の収集や特許取得手続きなど知財関連の業務も増えています。
食品メーカー・加工食品会社 品質管理・品質保証
メーカーであればどの業界どの製品についても、自社製品の品質について責任を持っていますが、体内に入れる食品も同様です。安全安心の食品を消費者に届けるため、厳しい基準でさまざまな試験を行い確認をしています。
原材料の受け入れ時には残留農薬やアレルギー物質などの検査を行いますし、出荷前は成分分析を行います。(糖度やpH、ビタミンなどが既定の範囲かどうか確認する)また菌を培養して大腸菌やサルモレラ菌、カビなどの有無を調べる微生物検査などは学生時に授業で経験のある人も多いかと思います。
食品メーカー・加工食品会社 対外業務
営業、技術営業(営業部員の学術的なサポート)やカスタマーセンターでの栄養相談など、顧客と直接接する業務にも活躍の場があります。病院やドラッグストアに出向いて、医師や薬剤師といった専門家に科学的観点から自社製品の説明を行ったり、一般消費者の疑問にも科学的根拠をもって答えることで、顧客からの信頼を得られることがやりがいにつながります。
食品関連以外の業界
食品や栄養・調理の知識は科学的要素がベースとなっており、文系理系でいうと、理系の素養ということができます。
そのため、栄養士・管理栄養士を取得するまでに培った理系の基礎的素養を活かして、食以外の業界で活躍する方も少なくありません。
例えば化学メーカーでの製品規格書や品質検査、医薬品メーカーでの臨床開発部門(特に生活習慣病や栄養剤の開発やプロモーション)など、学生時には想定していなかったような業界でも活躍のチャンスがあります。
Chall-edgeでは、栄養士・管理栄養士資格が活かせる仕事を豊富にご用意しています。
この記事を書いた人:
パーソルテンプスタッフ株式会社 研究開発事業本部所属 国家資格キャリアコンサルタント
更新日:2019.12.20 / 公開日:2018.03.01